The 4th workshop on "Mathematics and Physics in General Relativity"

March 20-21, 2021 @ Zoom & Osaka City University

日時: 2021年 3月20日(土)~ 21日(日)

場所: オンライン(Zoom、会場:大阪市立大学)
※ブレイクアウトルームを自由に移動できるためには、バージョン5.3.0以上が必要です。

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プログラム: クリックして表示PDF版


趣旨

2021年3月20日(土)~21日(日)の2日間にわたり、オンライン(開催本部:大阪市立大学)に於きまして、一般相対性理論に関する研究会「Mathematics and Physics in General Relativity」を開催いたします。この研究会は、2015年3月に大阪市立大学数学研究所で開催しました研究会「Mathematics and Physics in General Relativity」、2019年3月に摂南大学で開催しました研究会「The 2nd Workshop on "Mathematics and Physics in General Relativity"」につづく研究会という位置付けにあります。昨年、第3回目にあたる研究会を計画しておりましたが、新型コロナウィルス感染拡大への対応からやむなく中止といたしました。今年度は、オンライン(Zoom)による開催といたします。

この研究会では、一般相対性理論に関連する数学や物理に対する興味を幅広く持ち、この分野の裾野を広げることによって新しい発想やアイデアに至ることを目指しています。このたび改めて研究会を開催することにより、問題解決の糸口、新しい研究課題、共同研究などを見出す機会が生まれることを期待します。


招待講演者・講演タイトル(五十音順、敬称略)

  • 石井貴昭 (京都大学) 講演資料
    Superradiant instability and black resonators

  • 小笠原康太 (京都大学) 講演資料
    Kerrブラックホール近傍からの光の放射:完全分類と脱出確率

  • 小野 肇 (筑波大学) 講演資料
    共形ケーラー, アインシュタイン・マックスウェル計量の基礎

  • 木村匡志 (立教大学) 講演資料
    Parametrized Black Hole Quasinormal Ringdown

  • 佐合紀親 (京都大学) 講演資料
    ブラックホールからの重力波とその反響現象

  • 孝森洋介 (和歌山高専) 講演資料
    銀河系中心領域の星の運動から探る暗黒質量分布

  • 富沢真也 (豊田工業大学) 講演資料
    5次元ブラックホールの安定束縛軌道

  • 中野寛之 (龍谷大学) 講演資料
    突発的重力波カタログ2(GWTC-2)と重力波物理学

  • 野澤真人 (基礎物理学研究所) 講演資料
    Static black holes: uniqueness and beyond

  • 野田知宣 (明治薬科大学) 講演資料
    情報幾何と力学

  • 松野皐 (大阪市立大学) 講演資料
    大域的磁場を持つ宇宙モデルと佐々木多様体

  • 道下洋二 (鹿児島大学) 講演資料
    On first order symmetry operators for metric perturbations, differential forms, and Rarita-Schwinger fields

  • 森山翔文 (大阪市立大学)
    高次元超重力理論の古典解への示唆

  • 吉野裕高 (大阪市立大学) 講演資料
    重力場の強さを特徴付ける新しい概念の提案

  • 柳哲文 (名古屋大学) 講演資料
    5次元等角運動量Myers-Perry時空上の重力摂動方程式に対するKilling-Yano 3形式に伴う1階symmetry operatorの作用について

講演概要(クリックして表示)

  • 石井貴昭 (京都大学)
    Superradiant instability and black resonators
    回転ブラックホールが超放射不安定性を起こすと、定常回転の対称性が破れた対称性の低いブラックホールが現れる。例えばスカラー場や計量場の超放射不安定性からは、hairy black holeやblack resonatorと呼ばれる解が派生する。本講演では、とくに漸近AdS時空において5次元等角運動量Myers-Perryブラックホールに着目し、具体的にその超放射不安定性からcohomogeneity-1計量を持つ解を構成することについて述べる。

  • 小笠原康太 (京都大学)
    Kerrブラックホール近傍からの光の放射:完全分類と脱出確率
    本講演では,Kerrブラックホール近傍の光源から放射された光が遠方まで到達するための必要十分条件の分類を行う.光子の運動は2つのパラメータで特徴つけられるため,必要十分条件をこの2次元パラメータ領域で可視化する手続きを紹介する.時間が許せば,いくつかの光源に対する光の脱出確率の比較も紹介する.

  • 小野 肇 (筑波大学)
    共形ケーラー, アインシュタイン・マックスウェル計量の基礎
    本講演では、スカラー曲率一定ケーラー計量の1つの一般化である、共形ケーラー,アインシュタイン・マックスウェル計量(cKEM計量)の入門として 1. LeBrun によるアインシュタイン・マックスウェル方程式の強エルミート解, 2. cKEM計量の存在問題について解説する。時間があればcKEM計量の一般化や、その標準佐々木計量との関係についても紹介したい。

  • 木村匡志 (立教大学)
    Parametrized Black Hole Quasinormal Ringdown
    ブラックホール連星が合体した直後に放出される重力波はquasinormal mode (QNM)でよく近似され,その波形が一般相対性理論の予言にどの程度近いか,ということから将来的に重力理論へ対して制限を付けられると期待できる.実際にこれを行うためには重力理論が一般相対性理論からズレた場合にどういうQNMになるのかを予め知っておく必要がある.本発表では,ある種の修正重力理論を意識して,重力波の基礎方程式に対して一般相対性理論からの補正項を加えた場合にQNM振動数のシステマティックな計算方法について議論する.

  • 佐合紀親 (京都大学)
    ブラックホールからの重力波とその反響現象
    Abediら(2017)の研究において、LIGO-Virgoが観測した連星ブラックホール合体の直後に重力波の反響(エコー)が起きている可能性が指摘されている。彼らの解析では、一定の減衰率で同じ波形が繰り返される簡単なテンプレートが用いられている。我々は、ブラックホール摂動法を用いて、より現実的な理論波形を構築する方法を提案した。また、その理論波形を用いて、LIGO-Virgoの観測データの再解析を行った。本発表では、これらの研究成果について紹介する。

  • 孝森洋介 (和歌山高専)
    銀河系中心領域の星の運動から探る暗黒質量分布
    銀河系中心領域を周回運動している星が観測で見つかっている。その運動から中心には400万太陽質量の巨大ブラックホールがあると考えられている。星の周回運動は2体問題でよく説明でき,そこから巨大ブラックホールをとりまく質量分布に制限を与えることが可能となる。本講演では,星の運動から,質量分布に対して現在どのような制限が与えられているのかを我々の最近の研究内容と共に紹介する。

  • 富沢真也 (豊田工業大学)
    5次元ブラックホールの安定束縛軌道
    4次元シュバルツシルドブラックホールの周りを運動する有質量粒子の束縛軌道は安定であるが、無質量粒子の束縛軌道は不安定であるが、高次元シュバルツシルドブラックホールの場合、有質量粒子と無質量粒子ともに安定束縛軌道が存在しないことが知られている。これとは対称的に、5次元ブラックレンズ、5次元多体ブラックホール、5次元カルツア・クラインブラックホールや5次元ケージドブラックホールに関しては、有質量粒子と無質量粒子のどちらも、安定束縛軌道が存在することを明らかにする。

  • 中野寛之 (龍谷大学)
    突発的重力波カタログ2(GWTC-2)と重力波物理学
    地上重力波望遠鏡LIGO/Virgoによる第3期観測の前半部分(O3a)における39個の重力波イベントのカタログが公表された.本発表では,このカタログと関連してコンパクト連星合体からの重力波を中心に,リングダウン段階における一般相対論の検証,宇宙重力波望遠鏡B-DECIGOを考慮した連星パラメータの決定精度,宇宙重力波望遠鏡LISAで用いられる現在構築中の理論重力波波形の紹介などを行う.

  • 野澤真人 (基礎物理学研究所)
    Static black holes: uniqueness and beyond
    静的ブラックホールの唯一性定理について再考する。特にRobinsonによって導かれた発散型恒等式を一般化し、その帰結として漸近平坦な静的ブラックホールの唯一性定理の簡単な証明法、およびその応用を紹介する。

  • 野田知宣 (明治薬科大学)
    情報幾何と力学
    情報幾何学は確率分布の(パラメータ)空間を幾何学的に研究する分野であり、統計学、情報理論、制御理論など幅広い分野で使用されている。通常の(古典)情報幾何で使用される言語はアフィン微分幾何であるが、シンプレクティック幾何を用いる事もできる。本講演ではラグランジュ・ハミルトン力学と情報幾何の関係について比較的新しい結果までを概説する。

  • 松野皐 (大阪市立大学)
    大域的磁場を持つ宇宙モデルと佐々木多様体
    重力と磁場と磁場を生成する物質の連立系の厳密解を作ることは一般には難しい問題であるが、ジェットや宇宙磁場などそのような系は存在すると考えられる。我々は佐々木多様体を利用してEinstein-Maxwell-Current系の静的な解を構成した。このとき電流を作る物質としてDust流体とScalar場の2通りで解を構成した。本講演では佐々木幾何がどのように有効に働いたのかを説明し、解の性質を紹介する。

  • 道下洋二 (鹿児島大学)
    On first order symmetry operators for metric perturbations, differential forms, and Rarita-Schwinger fields
    与えられた背景時空において様々な場の線形化した運動方程式を解く必要がしばしばあるが、そのための道具として対称性演算子がある。特に交換型の対称性演算子は解の分類に有効である。本講演では一般の背景時空において、超重力理論などで現れるRarita-Schwinger場、微分形式場、および計量の摂動に対する1階微分型対称性演算子の具体形と、それが存在するための条件について考察する。

  • 森山翔文 (大阪市立大学)
    高次元超重力理論の古典解への示唆
    高次元超重力理論の超対称性を保つ古典解が盛んに研究されてきた。特に超対称性を半分保つものに関するLin-Lunin-Maldacena(LLM)の解析は有名である。LLMによれば超群対称性で特徴付けられる超対称古典解は、運動方程式がラプラス方程式(10次元)か連続戸田方程式(11次元)に帰着し、液滴(droplet)表示により分類される。本講演では、対応するゲージ理論の研究からさらに示唆される構造について説明したい。

  • 吉野裕高 (大阪市立大学)
    重力場の強さを特徴付ける新しい概念の提案
    ブラックホールを特徴づける概念に「地平面」がある。それではブラックホールの外側の領域の重力場の強さをどのように特徴づけたらよいか、という問題を講演者と共同研究者(白水、泉、富川)は考えている。今回は我々が提案したそのような概念をいくつか紹介する。そしてこれらの面の面積が、地平面に対するペンローズ不等式と類似性を持つ不等式を満たすことを証明し、今後の展望を議論する。

  • 柳哲文 (名古屋大学)
    5次元等角運動量Myers-Perry時空上の重力摂動方程式に対するKilling-Yano 3形式に伴う1階symmetry operatorの作用について
    重力摂動方程式において背景時空上にKilling-Yano 3形式が存在する場合,それに伴う一見すると非自明な1階のsymmetry operatorの一般形が知られている.1階のsymmetry operatorとは運動方程式の解を解へと移す演算子で,高々1回微分までを含む物である.5次元等角運動量Myers-Perry時空に対してその作用を具体的に計算したので,結果を報告する.

世話人

石原秀樹(大阪市大)、安井幸則(摂南大)、宝利剛(舞鶴高専)、棚橋典大(中央大)

連絡先:t.houri_AT_maizuru-ct.ac.jp, tanahashi_AT_phys.chuo-u.ac.jp
(_AT_を@に変更してください。)