2026.8.5
U.S.Kids Golf World Championship 2026、振り返り4
2026.8.5
U.S.Kids Golf World Championship 2026、振り返り4
(インスタ映え, 2026.8.3)
ノースカロライナに別れを告げ、先ほど家に着いて即寝。宿を出る前にプールで息子と数十年ぶりにバタフライをしたせいなのか、5日間連続でキャディバックと保冷剤BOXを担いだせいなのか、荷物が重すぎたせいなのか、飛行機で身体が固まったせいなのか、全身が痛い。
その帰りの飛行機で3つの映画を堪能しました。『Moneyball』、『King Richard』、『Ocean's Eleven』。なんども鑑賞した映画ではありますが、前者二つは今回の大会とも繋がるものだと思い、明確な意図をもって選びました。
まず、『Moneyball』。主力選手がいなくなった弱小球団。そのGMをつとめるBilly Beane氏(主演のBrad Pittさん)が、データ解析に長ける青年の力を借りながら、20連勝という記録を打ち立てていく物語。息子が今さっき終えた試合でプレーしている姿を重ねながら、一番ビビっときたのは、少年時代からGMに至るまでのBilly Beane氏の物語。時折、記憶を振り返る形で、過去のシーンが挿入される。Billy青年は高校時代、複数のメジャー球団からオファーが来るほどの強打者だった。スタンフォード大学から全額支給の奨学金もすでに獲得していて、高校卒業後に、メジャーにいくか、大学にいくか、迷う。両親は子供意思を尊重する。選択したのはメジャー挑戦だった。スカウトが実家に来て、両親とBilly青年に伝える。チャンスを逃すな、と。若者をくどく言葉をたくさんスカウトは用意している。メジャーに挑戦したBilly青年は活躍ができず引退し、スカウトの道へとすすむことになる。
ゴルフの世界は他のオーナーが務めるチームに所属することはないので、引き抜きみたいなものはない。ただ、経済的な余裕がなくても、国内外問わず、特にアメリカはスポーツに秀でていれば全額支給の奨学金がついて大学に進学することができる。大学経由でメジャーの世界で活躍しているプロは数知れず。男子米国ゴルフの世界に目を転じてみると、メジャーリーグベースボールよりも、大学出身のプロの比率が高い。それは、ゴルフは基本チームを持たず、プロの世界に身を投じてしまうと育成のようなシステムがないので、準備という意味でもゴルフ部に行くメリットはある。それはScottie Schefflerプロが強調されていた点でもある。野球のように相手の動作に自分を合わせることも基本ないので、強い相手がいる環境に身を置くメリットは野球ほどではない、といったん思う。
我々親子の場合、息子がプロになりたいと今まで一言も言っていないし、他にやりたいことがあるみたいだし、今後さらに選択肢が広がってくるので、プロにさせるために日々のゴルフライフを過ごしているわけではありません。どちらかというと、私が大学でも仕事していることもあり、よりよい教育環境と仲間との出会いを得るために、Billy青年でいうところの全額支給奨学金を得られる高校や大学にすすむひとつの強みとして、息子には迷惑かもしれないけど、なにかひとつ秀でたものを息子なかにつくってあげたい、という気持ちが強い。USKidsの大会はまだ小学生対象だし、AJGAの試合だって大学進学を考えるなら12歳というより、Jackson Koivunプロのお母様がおっしゃっておられたように、高校最終年度の成績とその内容が大事なわけで、まだまだ先の話。でも、私的には、USKidsの試合に出ることは、そこまで繋がっていると強く信じている。今のカレッジゴルファーで上位に君臨する子たちや、Jackson Koivunプロ、Luke Clantonプロ、Nick Dunlapプロ、そして先日ツアー初優勝を飾ったMichael Thorbjornsenプロといった若手プロたち。ここに記した皆さん、全員がUSkidのローカル試合や地区大会、そしてWorld Championshipに参加されていた。そしてそのあとは、AJGAの試合。
高校出たてのカレッジゴルファーとしては、なんといっても今年USオープンの決勝ラウンドまで残ったフロリダ州立大学のMiles Russellさん。U.S.Kids Golf World Championshipを2度制覇(Boy11, 12の連覇)。一昨年、AJGAの年間最優秀選手賞を獲得している。ちなみにMiles Russellさんは、息子が今回参加したBoy9で2位(2018年)ということで、息子と同じ! 先ほどあげたLuke ClantonプロとNick Dunlapプロは同学年で、お二人ともBoy9は3T(2013年)。Michael Thorbjornsenプロを除いて(Boy9は9位で会場はNo.6)、みなさん、会場場所は息子と同じPinehurst No.1。いずれも息子のスコアの方が良い!、なんて何の意味もないかもですけど、そもそもスコアに反映されない部分での差はありそうですけど、息子の自信にはなっている。「RはL字だし、ジュニアドライバーでゴロ玉で飛ばないのに...(以下省略)」と。これはわたくし父に洗脳されている。
話を元に戻して、皆さん、カレッジゴルファーご出身。この傾向は、PGA Tour University制度がさらに強化されることで、切れることはないと思う。女の子と成長速度が違うしツアーの中身も違うので、さっとアメリカに行ってすぐに勝ってしまうというのは、松山英樹プロのお話を踏まえると、そして数々の名プレイヤーたちがスポットでアメリカツアーにでたりメジャーに挑戦したりしてご苦労されていたことに触れると、なかなか難しいと個人的には感じる*1。息子はプロを目指していないのでなおさらで、大学進学までを見据えると、そしてアマとして最上位を目指すなら、早くから下層でもいいからこの輪に加わっていないと、息子の中で目指すべき基準みたいなものが上がらないと思う。シンガポールのローカルツアーから始まったUSKidsの世界大会は、ジュニア初期ならこの輪の壁が低いと思ったこともあるし、今回もそうでしたけど、世界ジュニアとは違って現地アメリカ勢のジュニアさんたちが押し寄せてくる試合になりつつあるので、そのなかでとんでもなくポテンシャルの高いジュニアさんを息子が直接見て感じてもらえたと思う。予想はしていたけれど、2年前のBoy7よりはるかにレベルが上がっているし、人数も多いし、Boy9から18ホールの試合になる。現地の親御さんからも、USKidsのスタッフさんからも聞きましたけれど、昔とは違って途中参戦組はほぼいない。小中と試合に出ずに、高校生ぐらいから出て、カレッジゴルファーの上位、若い時点でのPGAツアーカードの取得、という男子ジュニアさんはほぼいない(著名人のご子息でというのはある)。
そんなことを『Moneyball』でBilly Beane氏の青年時代のシーンを見ながら思い、で次に観ようと思ったのが、『King Richard』。このサイトでも触れさせていただいた(注10)。テニス界の女王、Williams姉妹の父、Richard Williamsさん(主演はWill Smithさん)が娘さんたちを世界王者にするための物語。日本版タイトルが『ドリームプラン』とあるように、70ページ以上におよぶ計画書を父がつくり、それを実行していく。私がビビッときたのが、今回で3度目?の視聴となりましたが、同じところ。ご息女をジュニアの試合から遠ざける、という父Richard氏の並々ならぬ決断。ジュニアの試合に出ていた時期もあり、そこでものすごい数の勝ちを収めていたけれど、14歳でプロデビューするまで、突如、出なくなる。コーチからは出るように勧められても、頑としてRichard氏は譲らない。なぜか。子供を叱責する他の親たちの態度の存在、プレッシャーからの回避、燃え尽き症候群を生まないために、そして上を目指すという文脈での大きな理由が、プレーの質を下げないこと。試合でレベルの低いジュニアと対戦するのではなく、マッチ練習を基本とし、相手は男子の大人。私的には、対戦競技ならでは、だと思う。ゴルフで上手いプレーを見て、感じて、という間接的なものとは違う。相手の動作に合わせる面があるテニスは相手次第で自分の技量の発展に大きな違いがでる。
じゃあ、ゴルフは直接的な対戦競技じゃないから、強いゴルファーがいる環境を求めて渡米するというのはナンセンス? 私はそうは思わない。いろんな考えがあるとは思うけど、それは暴論だと思う。同じ世代のなかでポテンシャルのある子、目の前の成績を出せる子、そうした子から学ぶことが多いはず。息子の目の前にジャンボ尾崎さんがいてそのプレーから学べることはあるけれど、レベルが違いすぎるし、まず持ってお互い高めあう姿勢や闘争心みたいなものが生まれないと思う。この高いレベルの輪に居続けるのだ、その輪で上にいくんんだ、というような意識が。スッとアメリカ行って勝っちゃいました、という現実が男子ゴルフ世界の中で生まれたなら、検証不可能ですけど、もっと早く輪に入っていればもっと高いレベルでゴルフできていたのでは、と思う。高校生、大学生で何らかの経路でPGAツアーの試合に日本からアマで出て、勝ってしまうとか。感想です。
この『ドリームプラン』を取り上げたスポーツライターの山口奈緒美さんは、記事のななかで映画のエッセンスをこのような言葉で組み立てて項のタイトルとしている*2。『女子選手に若年化問題にある "毒親の存在"』。投げかけた問いは、「テニス未経験の父がどのように娘2人をチャンピオンに育てたのか」、「なぜ姉妹はこれほど息の長いキャリアを実現することができたのか」。これは興味深い。ひとつめの問いに関しては、記事の前段、中段で書かれていたように、"白人中心のテニス界で道なき道を拓いていくという夢は、ただ身体能力や競技技術にすぐれているだけでは実現しえないことにも気付いていたのだろうか"という点にその答えが凝縮されている。ドリームプランを作り、それを淡々と実行してきた父Richard氏。それに信頼をおいて日々の猛練習を重ねた姉妹。
では、「なぜ姉妹はこれほど息の長いキャリアを実現することができたのか」。山口さんは、若くして名声を得た女子プレーヤーが短命に終わったケースを複数上げながら、燃え尽き症候群、の存在を指摘しておられる。その背景の一つに、親の存在がある。ジュニア時代からの親の接し方。ここからは私の意見になりますが、プロになっても燃え尽き症候群はつきまとう。ジュニア時代初期に遭遇すればプロの世界にすら到達しないし、プロになったものの活躍できない選手も、そしてメジャーで活躍するほどのテニスプレーヤーであっても燃え尽き症候群が生じてしまう場合があり、キャリアが続かない。山口さんは、テニス、それも女子プレーヤーに限定されて説明されておられるけれど、これは男子プロゴルファーの世界でも何処となく共通する部分があるのではないかと思う。
息子は試合に出ると、「あのパパの感じがいい」とか「あれじゃ、あの子がかわいそうだよ」とか、接する親の態度に目が向いている。息子は地頭がいいし、わたくし父がキレそうになると事前にそれを察知して止めにかかったりするほどなので、それをもってジュニアの試合には出ない、とはならないですけど、燃え尽き症候群、は試合に出れば出るほど、仮に現時点では生じなくても、プロ少し前、そしてプロ後に発症する確率が高まると思う。親がキャディをしなくなり、親から少しずつ離れていく時期において。個人的には、プロになると女子よりも男子の方が親からの距離が離れるのかなと思っていて、燃え尽き症候群の発生率とその強度がさらに増すと思う。プロ後に伸び悩むのは親が引き摺り回して試合に出まくることにその萌芽があると思う。論理が飛躍しているので暴論だけど、私は直感的に正直そう思う。テニスの世界、ジュニアテニスの世界にも精通しておられる山口さんから話を聞いてみたい。
で、飛行機で最後に観たのが『Ocean's Eleven』。『Moneyball』で主演ブラビがカッコ良すぎて、選びました。ゴルフの世界とは距離がありますけど、最後のシーンが、今書いてきたことと重なりました。カジノ強奪に成功した11人の窃盗プロたちが噴水の前に集まり、そこから一人一人帰路についていく。その表情には、達成感と共に、やるせなさみないなものが同居している。何度も観た映画ではありますが、『Moneyball』、『King Richard』、の後にこのシーンに触れると、このプロたちは燃え尽き症候群に遭遇してしまうのではないか、と思ってしまう。もうこんな大きな山はないと。やりきったと。それに、自分たちが窃盗している意味は何処にあるのかと。でも、シリーズは12、13と続きますので、燃え尽きてはいないという...
この燃え尽き症候群。朝、息子が起きた後、「ラウンドしたい!」とか「レンジに連れて行って!」となれば、親としては嬉しいですけど、さすがに疲れ切っているので休養かな。前日から木曜日恒例の運動教室は行く気、満々です。
*1 "「早いと思わなかった」米1年目で初優勝 松山英樹に見えた光景," ゴルフダイジェスト・オンライン, 2014.12.27. 層が厚くなっただけ、と松山プロ。さすが。練習方法について。まずは量。「練習量と結果って必ずしも結びつかない。でもその練習量があるから、そのときはうまくいかなくても、あとあと考えた時に "あの練習は良かった" "あの練習は良くなかった" と判断できる。そうすればいいし、そのために練習するんです」。続いて、こちらのインタビュー記事("松山英樹に聞きたい72のコト 【DAY4】~PGAツアーの魅力~," ゴルフダイジェスト・オンライン, 2015.12.31)。松山プロ曰く、「ただまっすぐ飛ばすだけならば、僕は日本ツアーの選手も引けを取らないと思う。ただ、PGAツアーの選手はそういう広いコースでプレーしているから、振りっぷりがいい。飛距離も違ってきますよね。ただ、日本でしっかりとした成績を出して、環境を整えれば、海外でもある程度の成績は出せるのかなと感じます」。"環境" "ある程度の成績"、という言葉に私は深読みしてしまう。
*2 山口奈緒美, "「私たちの父は違った」なぜ未経験者がウィリアムズ姉妹を育てられたのか?…映画『ドリームプラン』が描く“テニス界の毒親問題,"Number Web, 2022.2.23. 山口さんはジュニアテニス界にも精通しておられる。たとえば、こちらの記事では、ジュニア時代に名を馳せてもプロで思ったような活躍ができないプレイヤーにインタビューを重ねながら描いておられる("「もうグランドスラムには戻れないなって」錦織圭と同学年の〈消えた天才〉森田あゆみの長い苦闘…それでもテニス愛を貫けた「真の才能」とは" Number Web, 2025.3.21)。森田あゆみさん。15歳で全日本選手権を制覇、17歳でウィンブルドンの予選を突破してグランドスラム・デビュー。片手打ち、両打ちの話の箇所は私だとなかなか理解が及ばないが、14歳の時点で技術的な変更を考えていたが変えられなかった。その時点で変更の必要性を気づけたのは、初めて経験した海外選手の高速サーブに接したから。くどいけど、14歳。はやいのかおそかったのか、私的にははっきりと読み取れる。対戦競技ならではだと思う。怪我の存在も大きかった。引退に追い込んだのも怪我。森田さん曰く、「繊細な感覚は私のテニスの大事な部分だったので、それを失ったのは致命的でした」。ゴルフの世界でも、道具との唯一の接点である、手、指。「繊細な感覚」についてはTiger Woodsプロもお父様も指摘済みで、繊細な感覚を養うためにはグリップは細い方が良いと。怪我しないためには細目でいいのだろうか。悩みは尽きない。