2025.10.10
9歳になるまでに
2025.10.10
9歳になるまでに
(3歳、真冬の夜、ナイター)
昨日、ベイカレント・クラシックに行くか迷って息子に朝起きて聞いたら、「学校があるから行かないよ♩♩♩」、今朝も確認してみたら「今日は学校もあるしバレエもある。ルーティンが崩れる!!!」と返されて横浜に行かず。
日曜日はラウンドレッスンなので、土曜日行くしかないなぁと思っていたら息子がそれを察知してか、「明日も行かないよ。プールがあるし、会長のところで練習したい」と。じゃあ今年は行けないね、と冷たく確認したら、「横浜でしょ。日本アマで行ったじゃん。たいがくんも見たし…(注: 北谷津ゴルフガーデンの大先輩で日大ゴルフ部キャプテンの小林大河アマ)」と息子。会話にならず。明日、気が変わるかな。それにしても父の影響を受けすぎてアマに拘りすぎだな。来年、全米プロでも見に行くか。
平日毎日、東宝調布に行ってもいいけれど、それだとほぼ365日ラウンドとなるわけで、私の身体とお金がもちません。ラウンドでスイングが削られていくことは重々承知の上で、でもゴルフを始めて間もないこの時期こそ磨いておきたいものがある。そもそも今のレベルだと親子で削られるものそれ自体が少ない気がするし…
ただ、今日はバレエで疲れ果て、その後には流石にラウンドに行けなそう。薄暮じゃなくて完全なナイター&ほぼほぼ最終組になってしまう。平日2日&土日で、週4日ラウンドが限界か。まだまだラウンドを減らしたくない気持ちが大きい。会長のところにも行きたい。週5ぐらいが理想。スイングを整えてからラウンド、とは私的には思えない。今の時期は。それでもボールを打たない練習の方が多いわけで。
バレエと聞いて、ふと思い浮かんだのが、Ben Hoganプロ。著作『Power Golf』と『Five Lessons』*1、それに著名な指導者として知られるDavid Leadbetterプロによる『Five Lessons』の解説書*2、他にも関連書籍や新聞記事、雑誌などに目を通して、なかでも印象に残っているのが、Jim McLeanプロの『The Complete Hogan』*3。連続写真をもとに、『Five Lessons』で記されていたイラストを批判的に検討しています。ご本人の感覚(内)と実際(外)は違う。『Five Lessons』のイラストを鵜呑みにすると読み手をミスリードしてしまうと。そのあとがきに、以下のような説明があります。
「ダンスのステップを身につける場合と同じく、動作を感覚的につかむことがとても大切なのだ。ダンスの動作を科学的に記述して、生徒にその動作を機械的に真似させたとしても、生徒が踊れるようになる可能性はきわめて低い(翻訳書, p.214)」
ダンス、とあるのでバレエと結びついて本書を思い出したのもありますし、それと個人的な理由に加えて、ついこの前閉幕したライダーカップの米国キャプテンKeegan Bradleyプロを指導してきた著者なのでなおさら。Tom KiteプロやCristie Kerrプロ、Lexi Thompsonプロ、その他メジャーチャンピョンを含めて多くのトッププロたちが師事してきたJim McLeanプロ。
じゃあ、踊るためにどうするのか? Jim McLeanプロによると、「写真をじっくり観察して、そもそも見事なスイングとはどんなスイングなのかを理解する必要がある(翻訳書, p.214)」。そして「スイングにおけるこうした主観的な感覚を体に覚え込ませて再現できるようにするのは、あくまで各ゴルファー自身がしなければならないことである。ホーガンはその点を十分に理解していた(翻訳書, p.215)」。ここだけ読むと、当たり前じゃん、で、どうするのよ?、となりそうですが、最初から丁寧に読めばわかる。それが凝縮された以下の文章。
「ダグは、本書で取り上げている多くの名選手と同じく、このインパクト後の動作を身につけるために数百万発もボールを打って練習した(翻訳書, p.185)」
ダグとは、Ben Hoganプロを手本として独学でスイングをつくり、ツアー20勝をあげたDoug Sandersプロのこと。要するに、圧倒的な練習量で "主観的な感覚を体に覚え込ませ" る。こちらも当たり前か…
Ben Hoganプロには、プロ転向後、毎日6時間連続でボールを打ち続けたとか、バンカーで寝た、という逸話がある。息子は圧倒的にフルスイング量という意味での練習量は他のジュニアと比べると少ないと思われます。怪我の予防だけじゃない。今の時期やるべきことじゃない気がするので。より正確にいうと、それが優先事項ではないし失うものが大きいと考えてきたから*4。Jim McLeanプロ曰く、「ゴルフとは調整と改良のゲーム。...名選手には正しい原理に基づいた強力な基盤がある。...彼らは新しいスイングを模索したりはしない。つまり、それまでとまったく違う振り方に変えようとはしない。自分のなかにある基盤を信頼して頼りにしているのだ(翻訳書, p.49)」。
Ben HoganプロもDoug Sandersプロもゴルフを始めたのは10歳過ぎてから。日本で言うと、小学4、5年生から。Tiger Woodsプロのように、未就学児のころから1日数百発フルスイングする身体の力、生まれながらにして筋繊維に恵まれた名プレイヤーはいるのでしょうけど、身体が強い方だとはいえ明らかに今の息子ですら無理がある。1日200発ぐらいならフルスイングできそうですけど、負担が蓄積されるはず。
ここは息子自らが選んだバレエでその世界に触れながら身体を強くしていただきたい。「東宝調布で毎日ラウンドしてた方が身体が楽」と息子。明日は本当に横浜に行かないのか。この時期、定期的にてっぺんの世界に触れさせたいけれど… 父だけ行こうかな。
*1 Hogan, Ben (1948), Power Golf, AS Barnes & Co New York (前田俊一訳,『ベン・ホーガン パワー・ゴルフ:完璧なスウィングの秘訣はここにある』,筑摩書房, 2012)。その約10年後に出された、Hogan, Ben (1957), Five Lessons: The Modern Fundamentals of Golf, Simon & Schuster (塩谷紘訳,『モダン・ゴルフ ハンディ版』, ベースボール・マガジン社, 2006)。読み返すたびに発見がある。
*2 Leadbetter, David (2000), The Fundamentals of Hogan, Clock Tower Pr (塩谷紘訳,『モダン・ゴルフ 徹底検証 ハンディ版』, ベースボール・マガジン社, 2006)
*3 McLean,Jim and Tom McCarthy (2012), The Complete Hogan: A Shot-by-Shot Analysis of Golf's Greatest Swing, Trade Paper Press (吉田晋治訳,『すべてのスイングはベン・ホーガンに通じる』,青春出版社,2013)。日本人の多くにとって『モダン・ゴルフ』は役に立たない、とする専門家が複数いるが、その9割以上に対して疑問に思う。Jim McLeanプロの説明に触れるとなおさら。それにしても、レベルは違えど、スイング上、まさか息子が同じ悩みにぶち当たるとは…
*4 ちなみに、というかこちらが今回の本題かもしれないが、Ben Hoganプロが9歳の時、お父様が他界。自ら命を断つ。それも息子の目の前で、という話もある。我が息子とゴルフを始める前に時間をかけて読んでいたのが他のレジェンドと並んで、Ben Hoganプロの著作と、関連文献。全盛期の新聞記事もいくつかコピー。写真も動画も見まくった。あまりにも思入れが強かったせいか(今もそれは変わらない)、ゴルフに関しては息子が9歳になるまで親としてやるべきことは必ずやり切る、と決めて今日まで時間を過ごしてきた。9歳でも10歳でも11歳でも良かったが、Big Benに敬意を表して9歳。ジュニア低年齢時にやるべきことは何か。早熟も先取り学習も避ける。同じ形だけを意識して練習するような、"調整" 能力を封じ込めることはしてこなかった。スイング量を増やす前にやっておきたかったことがいくつかあった。それはコース、芝とバンカーでしかできないもの。技術でなく。息子が9歳になるまで、あと4ヶ月。3歳当時、考えて用意したこと、やるべきことというかその深さに到達した、と私は思う。Ben HoganプロとDoug Sandersプロが小学校高学年からゴルフを始めたかのごとく、形式上は9歳からゼロから始める感じで自ら考えて取り組めばいい。高みを目指して本人がゴルフをやり続けるならば。息子には "主観的な感覚を体に覚え込ませ" ておくデカい入れ物が身体のなかに既にある。それは"基盤"とは違う。今は形として数字として結果としてあらわれなくても、将来息子が分かる時が来ると確信して。今からも、そして特に高校生ぐらいで身体がある程度出来上がってから必ず活きる。ゴルフを始めた未就学児の3年間弱、ほぼ毎日現場に行き遊びながら考えて2人で時間を過ごしてきたのだから、入れ物は相当デカく、柔軟性があり、強固なはず。ゴルフに関して父に残された役割は送迎ぐらいか。