スマホで分子軌道計算

WebMOを利用してMOPAC実行

今朝のNHKニュースで,『「第6回核兵器廃絶―地球市民集会ナガサキ」のプレ企画となるトークイベントが16日、長崎市内で開かれ、ノーベル化学賞受賞者で詩人のロアルド・ホフマンさん(81)と、広島市在住の米国人詩人アーサー・ビナードさん(51)が、市民ら約150人を前に平和について語り合った』と報じていた.

聞いていて,一瞬「おや」と思った.Roald Hoffmannといえば,1981年度のノーベル化学賞を福井謙一氏とともに受賞した人のはずである.さっそく,ウィキペディアで調べると次のように書かれていて,詩人でもあることがわかった.

有機化合物・無機化合物の両方を研究対象とし、拡張ヒュッケル法(彼が1963年に提唱した)などの計算機化学的方法を発展させた。またこれを用いて、ロバート・バーンズ・ウッドワードとともに、有機化学反応の立体選択性を予測する法則であるウッドワード・ホフマン則を明らかにした。量子化学で化学反応におけるウッドワード・ホフマン則を明らかにし、それらの功績で1981年度のノーベル化学賞を福井謙一とともに受賞した。最近は,科学に関する啓蒙書を書いているほか、詩人としても2巻の詩集を出している。また科学的発見をテーマとする劇 "O2 Oxygen" を書いている。

量子化学を勉強し始めた頃,パーソナルコンピュータでBASIC言語で書かれた単純Hueckel法のプログラムを打ち込んで,分子の電子状態を予測したことを思い出した.現在の分子軌道計算は肥大化し,精密な予測が可能になったが,考え方は単純&拡張Hueckel法と何ら変わらない.

注)拡張ヒュッケル法( extended Hückel method)は、1963年からロアルド・ホフマンによって開発されている半経験的量子化学手法の一種である.ヒュッケル法に基づいているが、元々のヒュッケル法がπ軌道のみを考慮するのに対して、拡張ヒュッケル法はσ軌道も含める。

さすがホフマン先生と思いながら,Web検索を続けていたら,「スマホで計算化学」という記事を見つけた.アプリストアを覗いてみると,Hueckel法とMOPACフロントエンドのWebMOが置かれていた.

さっそく,アプリをダウンロードしてWebMOを試してみた.以下に実行結果の画像を示した.パソコン 版と何ら変わらない.MOPACの出力リストに書かれている実行時刻をみると11時間程度遅れているので,地球の裏側に置かれた計算サーバで実行され結果がインターネット経由で送られてきていることが分かる.

小さい分子の計算は無料とのことである.画面が小さいので高齢者向きではない.しかし,大学の講義で机上にパソコンを持ち込む必要がないというメリットはあるかもしれない.

MOPACの実行画面

オープニング画面

メチャクチャなエチレンの入力構造

PM3法の計算を指定

構造最適化後のエチレンの構造

各原子の電荷

サマリー

出力リスト

HOMO軌道の表示

アプリの内容(コンピュータ翻訳)


WebMOを使用すると、3次元で分子を構築して表示したり、軌道と対称要素を視覚化したり、外部データベースから化学情報や特性を検索したり、最先端の計算化学プログラムにアクセスしたりすることができます。

AWebMOは、分子構造、情報、計算へのモバイルアクセスを望む高校、大学、大学院の学生や教職員におすすめです。

WebMOの機能は次のとおりです。

3-D分子エディタで原子や結合を描くことによって分子を構築するか、名前(例えば、「アスピリン」)を話すことによって分子を構築する

VSEPR理論または分子力学を使用して構造を最適化する

Huckel分子軌道、電子密度、静電ポテンシャルを見る

分子の点群と対称要素を見る

IUPACと一般名、化学量論、モル質量を含む基本的な分子情報を調べる

PubChemとChemSpiderの化学物質データを検索する

外部データベース(NIST、Sigma-Aldrich)からの実験的および予測された分子特性の検索

外部データベース(NIST、NMRShiftDB)からのIR、UV-VIS、NMR、および質量スペクトルの検索

高解像度の分子イメージをキャプチャ

局所的に分子構造を保存し呼び出す

電子メールによる構造のエクスポートとインポート

WebMOは、WebMOサーバー(バージョン16以降)のフロントエンドでもあります。

Gausess、Gamess、Molpro、MOPAC、NWChem、ORCA、PQS、PSI、Quantum Espresso、VASP、Q-Chem、およびTinker計算化学プログラムをサポート

計算の送信、監視、表示

出力ファイルから抽出されたフォーマットされた表形式のデータと、生の出力

ジオメトリ、部分電荷、双極子モーメント、通常の振動モード、分子軌道、NMR / IR / UV-VISスペクトルの可視化


WebMO allows users to build and view molecules in 3-D, visualize orbitals and symmetry elements, lookup chemical information and properties from external databases, and access state-of-the-art computational chemistry programs.

AWebMO is recommended for students and faculty in high school, college, and graduate school who desire mobile access to molecular structures, information, and calculations.

WebMO capabilities include:

Build molecules by drawing atoms and bonds in a 3-D molecular editor, or by speaking the name (e.g., "aspirin")

Optimize structures using VSEPR theory or molecular mechanics

View Huckel molecular orbitals, electron density, and electrostatic potential

View point group and symmetry elements of molecules

Lookup basic molecular information, including IUPAC and common names, stoichiometry, molar mass

Lookup chemical data from PubChem and ChemSpider

Lookup experimental and predicted molecular properties from external databases (NIST, Sigma-Aldrich)

Lookup IR, UV-VIS, NMR, and mass spectra from external databases (NIST, NMRShiftDB)

Capture high-resolution molecular images

Save and recall molecular structures locally

Export and import structures via email

WebMO is also a front-end to WebMO servers (version 16 and higher):

Supports Gaussian, GAMESS, Molpro, MOPAC, NWChem, ORCA, PQS, PSI, Quantum Espresso, VASP, Q-Chem, and Tinker computational chemistry programs

Submit, monitor, and view calculations

View formatted tabular data extracted from output files, as well as raw output

Visualize geometry, partial charges, dipole moment, normal vibrational modes, molecular orbitals, and NMR/IR/UV-VIS spectra