necrophilia

ある日屍の美少年を拾った。

 一見すると、年齢は12~14歳程度だと推測される。森林浴を目的として散歩していたA森林にて発見した。死後硬直や腐敗臭があまりしていないところを見ると、死んでからあまり時間は経っていないのだろう。

 彼を観察していると段々、触れたいという欲求が溢れ出す。少年に触れてみた。冷たく、少し硬い。まるで眠っているようなのに、触れても少年はぴくりともしなかった。脈拍の無い心臓。やはり、彼は死んでいるのだ。そう実感する。しかしそう分かっても、何故だか少年に触れてみたいという欲求はますます高まった。どうしてこんなにも触れたくなるのか。こんな感情は初めてで、自分自身でも戸惑いを感じる。

 傷も穢れも無い綺麗な身体だった。彼は白いワイシャツと白いジーンズを身に付けていて、裸足である。肌も白い。屍なのだから肌が白いのは当然なのかもしれないが、これ程の白さは、生前から色白であったのだろうと予想させる。まるで日光を避けて暮らしていたかのようだ。

 少しウェービーがかったブロンドの髪は美しく、サラサラとしている。手に取ると、指と指の隙間から零れ落ちた。

 閉じた瞼をそっと開けば、瞳孔の拡大した、ブルーの澄んだ瞳がある。そして、きゅっと閉じられた、生気の無い真っ白な唇。

 何処を見ても、ルネサンス頃の絵画や彫刻のように、少年は美しかった。火葬し灰と化するのは勿体ない。とはいえこのまま空気に晒し続けていれば、彼の腐敗は進行する。肌はくすみ、蛆虫(うじむし)が湧く。想像するだけでも、耐えられない。

 自分は決めた。保たなければ……彼のこの、尊い身体を。

(完)(2016年11月25日)

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