本拠地でのとある出来事 R18
本拠地でのとある出来事 R18
「な、なに……。何か用?」
顔が近付いてくる。吐息の温かさを感じる距離に、ルックは胸が逸るのを心の奥底に押し込めつつ、いつも通りの言葉を絞り出した。
「……なんだろうね?」
余裕のある表情で彼は笑みを浮かべ、こちらの問いに対して同じく問いで返してきた。
彼から石板に押し付けて自分との距離を縮めてきたくせに、涼しい顔をして(いるようにルックには見える)、わざと理由をはぐらかす星主にルックは軽い怒りを覚える。ルックは彼に初めて会った時から、彼の放つ赤い光に眩しさと憧れの想いを抱いており、こうして今意識しているのは自分だけなのかと思うと腹が立ってきた。
「用がないんだったら…どい…て……!」
押しのけようと、彼の胸に手を当て力をこめようとした瞬間、キスされた。
それはただ触れるだけのキスで、やや間を置いたあと、ゆっくりと口が離れる。
驚きと感動と羞恥と。ルックの頭は色々な感情でぐちゃぐちゃになる。
「……なんで?」
「……なんでだろうね?」
震えながら搾り出した声に、優しく諭すように答えたあと、彼からもう一度口付けされる。今度は先ほどよりも深く。
それはとても甘く、じんじんとした痺れを伴っていて。ルックの中にじんわりとした熱が広がっていき、先ほど覚えていた怒りが解けていく。
舌を侵入させ、ルックの舌に吸い付く。
「んっ、んんっ! んっ…!」
だんだんと反応が色を帯び、力が抜けていく。ルックが座り込んでしまわないよう、腰と膝を石板の方へ押し当てて、ルックの体を固定する。
「ふっ…っん! …はぁっ……!」
押し当てた先が熱い。固く質量を増しつつある先端を、同じように熱を集めつつあるルックのそれにグリグリと押し当てる。
「…!! あっ、やめっ……!」
顔を横にずらし、ようやく自身を貪る侵略者から解放された、普段からよく回る口が非難の声を上げる。
「なんで…! こんな、こと…!」
顔を赤くして息を整えながら、涙を浮かべ瞳をきらきらさせながらの抗議は逆効果なんだよなぁ、とティルは思う。
「わかんないかな?」
今度は耳から首筋にキスを落とす。
吸い付くたびにびくびくと反応するこの少年がとても愛おしく感じる。何もかもが「はじめて」の反応を見せる、ルックの挙動ひとつひとつがたまらなく嬉しい。
「んっ……あっ……やぁ…」
色っぽい反応に気を良くして、さらに自身の中心を擦り付けるとさらに高い声が漏れる。
「ああっ、これ、やだっ!」
「やめない」
「やめっ、んっ…あっ…あっ!」
早くなる振動にだんだんとルックが大人しくなる。
抵抗するのを諦め、今度は波打つように迫る快感をどうにか紛らそうとしているのだろうか、目を閉じ、口に手を当てている。どう見ても感じ入ってるようにみえる反応に、庇護欲と征服欲と色々な欲望が混じり合った己をさらに早く強く擦り付ける。鼓動が早くなり、吐息が漏れ、服が擦り合う音の中に微かに濡れた音も混じっていく。
「ルック」
名前を呼ばれたその少年は、伏せられたまつ毛を振るわせ、その下に隠されていた孔雀色の宝石がこちらを見上げる。
「手、どかして。肩に回して」
はっと目を丸くしたあと、すぐに理解したのか、口を覆っていた彼の手はそろそろと自分の肩に回される。顔を傾けて近づかせると、そのまま唇を開け、ティルの舌を受け入れる。再び口内で暴れ出した舌に応えるように、ルックが自分の舌もなんとか動かしている事実に、ティルは胸が熱くなる。
かわいい。かわいい。そう思いながら中心の挙動をさらに加速させると、ルックがびくびくと腰を震わせた。
ついに達したのだろうか。キスと布越しの振動だけで。
なんて可愛いのだろう。つい先日まで本拠地に来てたくさんの人間に驚いていたこの美しい雛はなんて愛おしいのだろう。自分以外のほかの誰にも汚されないように、どこかに隠しておきたい。それは許されることではないけれども。
小さく漏れ出る艶のある声も、崩れ落ちないように必死で首に巻きつく細い腕も、おそらく初めてであろう快感に震える細い腰も、全てが欲しい。
ティルもややあって達したのち、ずるずると石板を背にして二人ともへたり込む。何度も何度も啄むようなキスをしながら、お互いに息を整えた。
ルックが肩で息をするのが少し落ち着いたところで、意を決して呼びかける。
「俺の部屋に行かない?」
「は?」
「続き。したい」
大きな目を再び丸くさせたのち、目線が逸らされる。
「なんで」
「なんで?」
「こういうの、恋人とすること、だろう…」
顔を赤くしながら絞り出した言葉に、心をギュッと掴まれた気がした。
「じゃあルック、俺の恋人になってくれる?」
ティルは目の前の美しい宝石が大きく揺らめくのを見た。
終わり