あの日以来、2人きりになる時間を作ってはティルと口付けを交わすようになった。 ルックはあの声に呼ばれる度に、その手に触れられる度に胸が高鳴った。彼とくちびるを重ねると、頭がふわふわとなり、そのままとろけてしまいそうになった。くちびるとくちびるが触れているこの瞬間、世界は時が止まってしまって、自分の心臓の音と彼のくちびるの柔らかさだけを感じることができた。 2人で過ごす時間を心待ちにするようになった。 ただただ2人で他愛のない話から軍備や解放軍の運営の話までとさまざまな話をして、体を寄せ合って口付けを交わす。ルックはそれで満足していた。
いつもは触れるだけのキスだった。 くちびるを重ねて、胸がいっぱいになりしあわせを噛み締めてはいたが、その一方で、ルックとキスする度に、ティルはどんどん体が熱くなっていった。もっとルックに触れたいという欲が強くなっていく。 ただ、想いを伝え合っていない曖昧な関係であるので、ティルはこれ以上2人の関係を進めないように自身の欲望をなんとか押さえ込んでいた。 だが今日は、キスをしながらふとルックの背中をさすったところ、ピクッと小さく反応したのがたまらなく可愛くなり、彼へ抱く感情がどっと込み上げた。その勢いで抑制されて燻っていた欲がとうとう勝利し、ルックの咥内にそろりと舌を侵入させてしまったのだ。 突然の異物感にびくりとする反応も、口を離そうとする反応も可愛くて、余計体が昂るのがわかる。のけ反ろうとしたルックの頭を押さえ、空気を求める口にかぶりつき、その舌に絡みつく。 ルックも拙いものではあるが、本能なのかティルの舌の動きに導かれるように舌を動かす。そのまま舌を絡ませ合ううちに、ルックの甘い吐息が漏れ出す。 ティルはその熱に充てられ、より一層深く激しく舌を絡ませて合った。「…っは、はぁ……はぁ……」「ルック……ごめん……」 キスが終わる頃にはルックはもう息も絶え絶えになっており、胸を上下して呼吸を整える。体が熱くて燃えるようだ。なんとか冷めた空気を求めて息を吸った。その様子を見たティルがバツの悪そうに言う。「大人のキス……いやだった…か……?」 大人の…? 嫌じゃない。嫌なわけあるか。そう思ってしまってルックが顔が熱くなる。「べ、別に……びっくりしただけ……」「じゃあもう一回していい?」「は?」 嫌じゃないと意思表示した途端おかわりを求める英雄に、ルックは怪訝な目を向ける。ティルの目はまだ熱を持っていて、また口を開けて近づいてくる。ルックはなんだか体中が締め付けられるような感覚に陥り、思わず座っていたベッドのシーツをくしゃりと握りしめた。(さっきの激しいのをもう一度? そんなの心臓が持たない。)「きょ、今日はもう終わり。用が済んだならぼくは戻るよ」「……ん。わかった。おやすみ」「……おやすみ。じゃあね」 やけに聞き分けのいいティルを少し訝しみながらも、この空気感から逃げたい一心でルックは早々に転移し、彼の部屋を後にした。
「……さっきの…なに……」 ルックは自室のベッド上に転移先を定め、部屋に戻る。「腰が…」 自分の腰がふにゃふにゃになってしまったことをティルは気づいただろうか。口付けくらいで腰を抜かすなんて醜態を見せたくなくって急いで彼から逃げた。 ベッドに座り込んだまま、というか立ち上がれないので、その状態のまま、ブーツや上に着ている服を脱ぎ捨てていく。体が熱くて、服のままじゃ寝れないという判断からだったが、服を脱いでいく途中でルックの視線が一点に集中し手が止まる。 ズボンがやけに張っているのだ。(これって…まさか…!) 書物で人間の性徴について読んだことがある。だけど、まさか本当に自分も「そう」なるなんてルックは想像もしていなかった。恐る恐るズボンを下ろすと下着の下で明らかに主張している「もの」があった。(信じられない…!) でも現実としてそれは存在を主張していて。意を決して下着も下ろしてみる。弱々しくはあるが立ち上がっているそれは紛れもない生理反応の「それ」で、ルックは頭を悩ませる。 刺激を与えれば射精することは知識として知ってはいるが、どのように刺激を与えれば良いのか。というか体が熱いのはこれのせいだったのか! ティルは気づいたかな? などと色々な考えが頭を巡るが、「これ」をどうにかしなければいけないということに帰結する。(たしかシーナがなんか言ってたよね…?) 記憶の中で悪友のそういう話をしていた時の手振りを思い出す。握って上下に振ればいいのか? でも自分で触ったことのないルックにとって、いつもと違う様相の自分のソレを握るなんてとんでもないことである。 よくよく観察すると、少し立ち上がったソレの皮の先にぷくっと透明な液体があったので恐る恐る触ってみる。「んっ………!」 液体に触れた時に中の皮膚に触れたのであろうか、その瞬間ビリっとした感覚が体を走る。「いまの…?!」 幸い液体は少し粘性があって、自分が粗相したわけではなく安心したが、じゃあこれはなんなのだ? と、先ほどの感覚と相まって疑問が増えただけだった。(もう一回触ってみる…?)「んっ…っ!」 ちょんちょんと指先で触れる度にビリッビリッと体が震える。ここを触るだけでこんなに強い刺激なのだ、今度は指でこすってみる。「んんっ……!」 ビリビリと強い感覚を感じる。そして先ほどよりも今触っているモノの硬さが増してきた気がする。謎の液体も皮の壁から漏れてきている。 ルックは自身の変化に困惑しながらも、先ほどの感覚を確認するためにもう一度同じ動きを長めに試みる。「んんっ、あぁっ……!」 強い刺激を感じ、一段と体が熱くなる。今度は悪友の手の動きを思い出しながら手のひらでそれを包んで上下に振ってみると、先ほどまでの接触とは比べ物にならない感覚が身体中を走る。「はあぁ、んっ、ん…んっ…んん!」 感じる強い刺激を求めて上下する手を止められず、ベッドの上でしばらく自慰行為にふける。先端から液体が溢れて滑りが良くなる。そのおかげで手の動きがスムーズになりより一層快感が増す。「あ、あっ、ぅ、んっ…!」 ただ、いくらしごいても射精には至らず、身体中がふわふわした感覚に包まれるだけだった。「はぁ、はっ、ぁ……なん、で…っ……?」 いい加減手も疲れてきたので、ルックは手拭いで汚れた手と陰部を軽く拭いてそのままベッドに倒れ込み、ため息をつきながらゆっくりと目を閉じた。
翌朝、ズボンと下着を半脱ぎのままの自分がなんとも間抜けで嫌な目覚めではあったが、立ち上がったそれは元通りに垂れ下がっていた。 ひとまず問題は解決したが、また同じ状態になった時の対処をどうしようかと、ユーゴの書庫を物色したものの、満足のいく成果は得られなかった。(こんな恥ずかしいこと、誰にも聞けない) そんな感じで一日中ずっとそのことが頭から離れなかったが、ティルに部屋に呼ばれた時に閃いてしまった。 そうだ、ティルも男性なのだから同じような反応があるんじゃないか?と。
早速部屋に入って今日あったことやとりとめのないことを話した後、ティルがルックの頬に触れる。それが口付けの合図だった。 目を閉じてティルのくちびるが触れるのを待つ。 ちゅ、ちゅ、と音を立てたあと、ちゅう、と長めにくちびるを合わせた。「じゃあ、もう今日は遅いから、寝ようか」 くちびるが離れたあと、すぐにティルにそそくさと退室を促される。 てっきりルックは昨日の「大人のキス」をされるものと思っていたのに。
部屋に戻って寝る準備をすると、今日も少しそれは立ち上がっていて、どくんどくんとそれが意思を持っているかのように熱かった。 昨日と同じように手でくにくにと先を刺激してやると少し大きくなるのと硬さが増した。生理反応はあるのに射精はしないのは自分のやり方が悪いのか? と自分の未熟さにイライラする。(ティルはちゃんとできるのかな?) 彼の自慰を想像するとなぜか自分のそれが大きくなる。 濡れた液体を全体に伸ばして昨日と同じようにしごいてみると気持ちがいい。 ただ、気持ちはいいけれど、やはり射精する前に腕が疲れてしまう。今日も至る前にルックは疲れて寝てしまった。
あれから毎日キスはするものの、「大人のキス」をしてこないティルにルックは怒りを覚えていた。 毎晩触れるだけの口付けをして部屋に戻されるので、自室でひとり自慰をして疲れて寝るというのがすっかり日課になってしまった。 おかげで立ち上がるスピードは早くはなったが、未だ射精することは叶わなかった。また、トランの古城にある書庫ではやはり有益な情報は得られず、かといってこんなプライベートな内容は悪友に聞くのも憚られ、実りのない日々が過ぎていく。
「ねぇ。大人のキスはもうしないの?」 突然の爆弾発言にこの城の主は度肝を抜かれる。「なに鳩が豆鉄砲食らった顔してるの?」「は?! いや、え?!」「こないだぼくにしたでしょ」 べーっと突き出した舌を指差す、目の前のこの美しい少年の言動が予想外すぎて。あまりのことに状況が理解できない。いや、言っていることは理解できるが現実なのか受け入れられない。 いつもの日課になってる軽いキスをしてじゃあおやすみ、と送り出そうとしたら。こっちはなんとか自分が自身を律して接しているのに。ルックは一体何を言っているのだ?「……あれはもうしない?」 困るんだけど、という言葉を飲み込んでルックは上目遣いでティルを見つめた。 その光景にティルは思わずゴクリ、と生唾を飲む。(そんなの、したいに決まっている) 先日した深いキスが善ぎて、あのときのルックやその熱を思い出しては毎夜1人慰めていると言うのに。 戦争中にリーダーが色恋に耽るなんてありえない、『特別』を作ることなんて許されない、だから、今はまだルックに自分の気持ちを伝えないからこそ、これ以上は関係を進めないとそう心に決めていたのだ。キスは一度してしまったら止められなかったので、(この場合キスは許されるとして(?))、同じ轍は踏まないと決意していたのに。だけど、本人が求めているのなら…。「てぃ…」 ルックが何か言いかけたが、理性が切れるのが先だった。 ルックの口に噛み付くようにその口を塞ぐ。「んっ…んん」 ルックも急な猛攻に一瞬怯んだものの、前回で学んだのかすぐにティルの絡める舌の動きを追ってそれに応える。深く深く触れ合い、何度もその熱を交わし合った。
やがて糸を引きながら口が離れる。ルックはしばらくほう、と恍惚の表情でぼんやりとしていたが、自身の下半身に集まる熱を感じて本題を思い出す。 座っていたベッドにどん、とティルを押し倒し、その上に乗り出す。「ルック?!」 驚く英雄の腰紐を解き、赤い道着を左右に開くとお目当てのものはそこに確かに聳え立っていた。「立ってる!!」「やめて?!」 生娘のように顔を手で覆うティルの反応も意に介さず、ルックは自分と同じ、いやそれ以上の反応を見せる彼のそれに歓喜する。そしてその好奇心のまま、ソレの先端を服の上から恐る恐る押す。「うっ! くっ!」 押す度にうめくような声を上げて苦しそうにしているが、今度は手でさすってやると、ティルの吐息に熱が籠る。「る、ック…わかって…やってん、のか……?」 気持ちよさを我慢しながら自身をさする白い手を止める。「なんで…こんな……」「なんでって…」 少し躊躇う様子を見せながらも、熱のこもった目線をティルに送る。
「…ねぇ、見て…」
ぴらりと前掛けを持ち上げ、ルックも勃ち上がった分身を見せる。「ぼくも、きみと同じようになってるの……」
頬を紅くしばがら、自らの、普段は隠しているその場所を服を捲って披露するルックの姿は、なんとも艶かしく扇情的で、ティルの理性を吹き飛ばすには十分すぎた。「この間、きみと大人のキスしてからずっと変なんだ…。でも、自分じゃどうにもできなくって…き、きみならいい方法知ってるんじゃ…!」 視界が回転して、気づいたら下にいたティルが上から覆い被さっていた。口で手袋を脱ぎ捨て、そのままの流れでルックのズボンをずるっと脱がす。「ティル…?」「ルック…お前さぁ……これ以上煽んないでくれるか?」「煽って…んんっ…!」 自分よりも大きな手で、自分の意思とは別の動きで自身を扱かれるのは、自分でやる時の刺激よりも何倍も強く感じる。ぬるぬるした粘液も合間って上下するティルの手がとても気持ちいい。「んっ……や、全然ちがう…っん!」 どんどん下半身が熱くなって、身体中の血がそこに集まっているように敏感になっていく。ティルの手が擦れる度に高まっていく。親指で先端をぐりぐりされる度に身体中が燃えるように熱くなる。「あっ、ああっ、まって、てぃるっ…へん……!」 ついに高みへと昇り詰め、ルックはびくびくびくと体を震わせた。ジンジンと鈍く麻痺した感覚が全身を覆う。体がそのまま溶けてしまうような気がした。「あっ、あぁ……はぁ、はぁ……」「ルック……?」 明らかに達した。なのに。涙で滲んだ視界でなんとか下半身を見るも、また射精には至れなかったようだった。「やっぱり…出ない…?」「ん? 出ないって…?」「……普通は。ここを刺激したら出るんでしょ…?」「……ああ!」 ようやくルックの言わんとすることに思い至り、同意する。「出るな…」「……ねえ。ティルので出し方教えてくれる?」「えっ?!」
なぜこんなことになったんだろうか。 なぜ好きな子の前で下半身を脱ぎ、自慰を披露することになったんだろうか。「ふぅむ……大きいね?」 そりゃあルックの発達途上のモノに比べたら立派でしょうよ、と顔を赤くしながら自身の手で扱いていく。「皮も剥けてて…中身ってこうなってたんだ…?」 そんなにまじまじと見ないでほしい。ティルは羞恥心でいっぱいになる。でも可愛い可愛いルックの頼みで。あわよくばガン見しているその顔をもっと近づけて、そのままその口で舐めてほしい…。──いやいやいや何を自分は考えているのか、と慌てて自身を律する。 ルックは射精するところが見たい。いやその方法が知りたいのだ。自分はいつだって彼の期待に応えたい。かっこいい男でいたい。下半身を露出している姿は決してかっこいいとは言えないが、ルックの望みを叶える方が羞恥心を上回る。(ええい、もうどうにでもなれ!) 強く自身を扱き上げていく。ルックの可愛い顔が真剣に見ている。なんとも間抜けな風景ではあるが、ティルはルックを喜ばせたかった。ルックが、自分のモノを見て、自分が自慰をする姿を見て目を輝かせている。息がかかりそうな至近距離で。正直めちゃくちゃ興奮する。
「……っく!!」 勢いよく白い液体が宙を舞う。当然顔を寄せて見ていたルックの顔や体に、ティルの欲望が飛び散った。「本当に出た…!」 初めて目にする待望の瞬間に感動しながら、頬についた精液をゆっくりと手で取って見てみる。ねちゃっとして白く濁っている液体だった。 すんすんと匂いを嗅いでみたが少し生臭い感じはするものの特に嫌な香りではなく、思わずペロッと舌で味を確かめてみたくなる。
「ルック?!」 一連の動きがあまりにも官能的で、その光景にティルは釘付けになってはいたが、自分の精液をルックが口に含んだらもう限界だった。「うーん、ちょっとしょっぱいかな…」「もうちょっと舐めてみる?!」 なんだか言ったらやってくれそうで、食い気味に言ってみる。「舐める?」 きょとんとするだけで存外悪くない反応だったので、ついつい調子に乗ってしまう。「うん。俺のこれ、ちょっと舐めてみてよ。もっと味がわかるかもしれない」 別に味が知りたいわけじゃないんだけど、とこぼしつつ、屈んで口を近づけてくれる。ゴクリ、と喉を鳴らし、ティルはその瞬間を迎える。
小さなルックの舌がぺろり、とティルの分身を這っていく。 あのルックが、赤い舌をてらてらと光らせながらそこを舐めまわしていく。それは視覚的にも感覚的にもなんとも情欲をそそるもので、射精を迎えたばかりの分身も一気に元気を取り戻す。「ん…っ。ねぇ、また大きくなってる」「うん…。じつはこれさ、手でするだけじゃなくって口でしても気持ちいいんだってさ」「へえ」「ルックやってみてよ。な?」「口で?」「そう、手で擦るみたいに口で覆ってやるんだって…」 さっきまでキスの一つで逡巡していた自分はどこに行ってしまったのだろう。 いやでもこれはかなりの割合でルックが悪い。好きな子に自慰を見せろと言われて、精液を観察されて、性器を舐められて。正気を保てる男の方が少ないと思う。自分は割と自制ができるタイプだと思っていたが、そういうのが旺盛な年頃であるし、毎晩ルックとキス止まりではい解散! だったので、それはもう物凄く溜まっていた 口いっぱいにティルを頬張る。歯が当たらないようにくちびるをすぼめて上下に動いてみる。「うっ……るっ……あ……」 良かった。気持ちがいいみたいだ、とティルの上々な反応に安心した。彼の反応に気を良くして、もっと喜ぶだろうかと、舌を伸ばして裏筋の方に這わせ、口を素早く上下させた。「うぁ…っ! それ…っ!」「んっ、はぁっ……」 ティルのものを舐めているだけなのに、自分の下半身もじんじんして熱くなる。痛いほどに張り詰めて先端からとろとろとした液体が溢れてくるのがわかった。(なんで…触ってないのに……) 自分のものを触りたくなる衝動をもじもじと抑えながら、舌を這わせていく。「ルック…次、先のココ、舐めてみて…」「んんっ…ここ…?」 すべすべとした感触の部分を舌の腹でれろりと舐めると、ティルがぞくぞくと感じ入るのがわかる。 何度もそこを舐め上げるうちに、そのさらに先端に小さな窪みを見つける。ちろりと舌先を細めてその場所をぐりぐりと舌で刺激すると、透明な液体がじわじわと溢れてくるので余計に滑りが良くなった。「ぁあ……そう、そこもいい……上手だね…。じゃあつぎはここの溝舐めて」 頭を抱えて誘導され、窪んだ部分を舐めさせられる。「んん……はぁ、はぁ……ぅん……いいね…」 指定された場所を左右に舐めていくと、その動きを早めるごとにティルの息が激しくなっていく。彼から漏れる吐息が熱を帯びていて、それがまたルック自身を熱くさせる。 自分のものを触っているわけではないのに下がむずむずして、頭がぼんやりとしてくる。腹の底がきゅうきゅうに締め付けられるようだった。「ルック…もう出したいから、また口でやってくれるか…?」 熱を持った視線と吐息混じりのティルの声に抗えない。言われたままに大きく口を開き、どくどくと脈打つそれをもう一度頬張る。「っ……ん、そう、そのまま…動かして…」 色を孕んだティルの声色が、熱を持ってぼんやりとしたルックの頭に柔らかく広がっていく。擦り上げる度にいやらしく響く水音と、彼の吐息混じりの声がルックをさらに熱くさせた。 そのまま深く咥え込み、無我夢中で口を動かし、中で舌を這わせていく。「あぁ…! ルック…! もう出る…!」 どく、どくと小さく震えたあと、咥内に生暖かい熱が広がっていく。 ティルは本能のままルックの頭を押さえつけていたので、ルックは受け止めたもののそれを逃がす場所がなく、そのままその熱を喉に流し込むしかなかった。 射精後しばらく放心していたティルが事態に気付き、慌てて手を離す。だがもう全てを飲み込んだ後だったので、咳払いして喉のとりつきを落とすルックの背中をさするしかできなかった。
「……ごめん」「別に謝らないでいいよ…」 申し訳なさそうにするティルに何故かルックの方が気を遣う。でもそう声をかけると、ティルが目を輝かせてほっとするのが見て取れたので、ルックも満更でもない。「じゃあ次はルックの番だな」 ごろんと仰向きに寝かせられて、膝を立てそのまま足を開かせられる。立ち上がったルック自身にティルが迷いなく顔を沈めて口に含む。「んんっ! ティル! なんで……!」 突然の衝動に、ルックは思わず目の前の頭を掴む。「あっ、やぁ…! やっ…!」 嬌声を漏らしながら足をジタバタさせるルックを手で制しながら、小さいながらも立ち上がったそれにティルは舌を絡めていく。「あぁ…それっ…! だ、だめぇ…っ!」 ビクビクと小刻みに震える。とろとろと溢れ出す愛液が、ティルの唾液と混ざり、口を上下に擦る度に大きな音を立てた。「あっ、あぁ…! あっ、はぁ、もう…!」 強い刺激にたまらず根を上げる。同じように口に出せということなのだろうか。ただ、頭が熱くなってふわふわして、目がチカチカするのに肝心のものが放出されない。ただただ、気持ちよさがルックを包んで全身を麻痺させた。 体の力が抜けて、上がっていた膝もベッドに放り出され、荒い息を整えるために肩をゆっくりと上下させる。
今度こそイったのに、と思った。
ルックの艶めかしく達した姿に見惚れつつ、力の抜けた性器から口を離す。精子こそ出はしなかったが、口に残るルックから出た愛液をゴクリと飲み込む。
なんで出ないんだろう。やはり自分は普通の人間とは違うからなんだろうか。 ざわざわとした気持ちがルックの心を覆っていく。
「ルック……精通まだなんじゃないか?」「えっ…?」 考えもしなかった。 心を翳らす黒い影が一気に晴れていく。 そうだ、そもそもまだ出る前段階なのかもしれない。「そうかも…」「俺もそのくらいだったから、ルックももう少しだと思う」 なんの根拠もない話だが、天魁星を宿す彼が言うとなんだか信じられる。ルックはティルにだけは素直だった。「そっか、だから出ないんだ…」「うん、だから別の刺激を加えたら一気に精通するかもしれない」「へ?」 一度吹っ切れた英雄はどこまでも攻める。 以前街中で見かけて思わず手に取ってしまった、とろりとした液体が入った小瓶をベッドサイドの棚から取り出し、指の腹に垂らす。「ごめん、ちょっと苦しいかもだけど」 ぐい、と太ももを上げられ、その恥部を露わにさせられる。ひくひくと反応するその蕾に、ぬるりと指で円を描くように液体を塗りつけられた。 ビリビリと全身が粟立つ。初めての感覚にルックは思わず固まってしまう。 その隙にティルは液体を追加し、指をその中へ押し入れた。中でくにくにと指を動かし肉壁を刺激する。「ひゃ! んんっ、あっ、やっ、あ!」 初めて得る内壁の快感に、声を抑えるのを忘れてしまう。「ま、なに、やぁ…っ、そこ、汚い…!」「汚くないよ。男同士はここを使うんだし」「んっ、なにいって…んんっ、だめ…っん」 どんどん指を深く進められ、中を責められる。「知らないか? 男同士のときは、俺のをルックのここに入れるんだよ」 そんなの知らない。でも指で中を掻き回されるのは、前を刺激するのと同じくらい、変な浮遊感があった。「それでこの中にはさ、強い性感帯があるらしくてさ、そこ刺激したらルックも精通するんじゃないか?」 イタズラな笑みを浮かべて指を動かす。 少し余裕が出てきたので中に入れる指をもう一本増やしてみるが、なかなかにきつく、中に収めるのに苦労する。「むり、むり…!」 その様子にルックは怯えるが、前に立ち上がるルックの分身は元気を取り戻している。ティルがもう片方の手でそれを包んで少し絞めながら動かすと、ルックの蕾は途端にひくつき、2本目の指をすっぽりと飲み込んでいく。そのまま中に入った指をバラバラと動かして擦ってやると、ルックが一層悦んだ声を上げた。「やぁ…っ! あぁっ! んん…っ!」 前と後ろを同時に攻められて、頭が真っ白になる。強い刺激に何も考えられなくなる。下半身どころか身体中が熱くなってこのまま溶けてしまいそうな感覚に包まれた。「んんっ!!」「ここか?」 とうとうティルはお目当ての部分を探り当てる。ルックの反応からしておそらくここで間違いないと、強めに押したりぐりぐりと刺激を加え、さらに快感を与えていく。「あ、あっ、ああっ、あんっ、そこ、や、あっ!」 ルックが体を反らせ、腰をガクガクと揺らし、中に入れた指を締め付ける。その妖艶な姿に見惚れながらも、そろそろか、ともう片方の手で包んでいたルックのものを擦る早さを加速させ、快感の頂きへと誘った。「あぁっ、それっ! やっ、あ、へん…!」 前と内側からの強い衝動に、目がちかちかして、身体中の血が沸騰するかのように熱い。「ああっ…!!」 勢いよくびゅるりと白い液体が飛び散る。「あっ、はぁっ、あっ、はっ…! で、でた…」 念願が叶ったのを見届けたら、安心したのか気が遠くなる。 ふわふわとした気持ちに包まれ、そのままルックは意識を手放した。
傍らで気持ちよさそうに眠るルックの体を拭き上げてから、ティルも横に寝転がる。 伏せられた長いまつ毛を見つめながら、先ほどの行為を反芻する。(……やってしまった……) 今までは関係をこれ以上進めないように抑制していたが、一度タガが外れると、なし崩しになり、どんどん欲が溢れた。もっとルックが快がっている姿が見たい。興奮して彼に触れる手が止まらなかった。 これは近いうちに最後までしてしまうかもしれない。 ティルはそう危機感を覚える。甘くとろけるような、淡い期待と共に。
おしまい