操作的な観点からは、オブザーバブルの射影測定よりも一般的な測定、つまり、正作用素値測度 (POVM) 測定を実行できます。 これまでのいくつかの以前の研究では、オブザーバブルの射影測定を最もシャープな測定とみなし、関心のある測定がそれからいかに離れているかという観点から測定のシャープさを定量化していました[3-8]。 しかし、シャープさを「リソース」とみなして定量的に扱う「シャープさのリソース理論の構築」は未解決でした。
私たちの論文:
Francesco Buscemi, Kodai Kobayashi, and Shintaro Minagawa, A complete and operational resource theory of measurement sharpness, Quantum 8, 1235 (2024)
では、測定のシャープさに関するリソース理論を初めて構築しました。
[1] G. M. D'Ariano, P. Perinotti, and M. F. Sacchi, J. Opt. B: Quantum and Semicl. Optics, vol. 6, S487 (2004).
[2] M. Kleinmann, H. Kampermann, and D. Bruss, Phys. Rev. A 81, 020304(R) (2010).
[3] C. Carmeli, T. Heinonen, and A. Toigo, J. Phys. A: Math. Theor. 40, 1303-1323 (2007).
[4] P. Busch, Found. Phys. 39, 712 (2009).
[5] S. Massar, Phys. Rev. A 76, 042114 (2007).
[6] K. Baek, W. Son, Sci Rep 6, 30228 (2016).
[7] Y. Liu and S. Luo, Phys. Rev. A 104, 052227 (2021).
[8] A. Mitra, Int. J. Theor. Phys 61, 236 (2022).
量子論では、例えば複数のオブザーバブルが同時に測定できないことがあります。こうした性質は「インコンパチビリティ」といい、量子論の最も重要な特徴の一つです(レビューは、例えば、[1]を参照してください)。
量子測定のインコンパチビリティはこれまでよく研究されてきましたが、最近、量子インストルメント(測定後の状態も扱う)のインコンパチビリティを検討しようとする研究が現れ、量子インストルメントのインコンパチビリティにはいくつかの本質的に異なる定義があるとわかっています[2, 3]。
我々の論文
Francesco Buscemi, Kodai Kobayashi, Shintaro Minagawa, Paolo Perinotti, Alessandro Tosini, Unifying different notions of quantum incompatibility into a strict hierarchy of resource theories of communication, Quantum 7, 1035 (2023).
では、異なる量子インストルメントのインコンパチビリティを、「量子通信路のリソース理論」の枠組みで統一的に議論可能にし、さらに、異なるインコンパチビリティの概念どうしの関係も明らかにしました。
[1] O. Gühne, E. Haapasalo, T. Kraft, J. Pellonpää, and R. Uola, Rev. Mod. Phys. 95, 011003 (2023).
[2] A. Mitra and M. Farkas, Phys. Rev. A 105, 052202, (2022).
[3] G. M. D’Ariano, P. Perinotti, and A. Tosini, J. Phys. A: Math. Theor. 55(39), 394006 (2022).