質問 問題3.9(1)[p.73]および問題3.14(1)[p.76]
ラグランジュ関数を設定し連立方程式を作るまではいけるのですが,その後連立方程式をうまく解くことができず,問題の答えになりません.
応答
問題3.9(1)
①まず,最初の2つの式から辺々割る形で最適消費におけるMRSと価格比の一致条件(教科書p.41またはp.155)を作り,ラグランジュ乗数を全部消去します.両辺を二乗すると,
(p_1/p_2)^2=x_2^h/x_1^h
という式になります.
②あとは,①の式と残りの予算制約式(一番下の式)を用いて,x_1^h,x_2^hについて解きます.具体的には,(やり方は他にもあると思いますが)比較的整理された手順としては,
a. ①の式より,x_2^h = x_1^h(p_1/p_2)^2なので, 予算制約式(一番下の式)を代入して,x_2^Aを消去.整理するとx_1^hについて所望の解を得られます.
b. 対称的に,x_1^h = x_2^h(p_2/p_1)^2なので,同様にx_2^hについても所望の解を得られます.
見た目の煩雑さを避けて,途中過程での計算ミスを防ぐために,
価格比:p=p_1/p_2
所得:M=p_1 x_1^h+p_2 x_2^h
のように置き換えて計算を進めてもよいです(pp.88-89のコメントも参照してください).
問題3.14(1)
上記と同様.ただし,所得部分はM=p_1 x_1^h+p_2 x_2^h+π/2に置き換わります.
質問 問題3.9の解答(2)[pp.90-91]
連立方程式(パレート効率性の一階条件)までは作れたのですが,上手く数値を導出できません.
応答
①まず,最初の4つの式から辺々割る形で消費者間のMRSの均等式(分からなければ教科書p162を参照)を作り,ラグランジュ乗数を全部消去します.両辺を二乗すると,
x_2^A/x_1^A=x_2^B/x_1^B
という式になります.
②あとは,①の式と残りの式,合わせて4つの式を,x_1^A,x_2^A,x_1^B, x_2^Bについて解きます.具体的には,(やり方は他にもあると思いますが)比較的整理された手順としては,
a. ①の式に資源制約式(下から2つの式)を代入して,x_1^A,x_2^Aを消去.整理すると
x_2^B=4x_1^B
となります.
b. この関係を最後に残った消費者Bの効用水準制約式に使うと,
x_1^B=u^2/9
が得られます.
c. あとは芋づる式にx_2^B→x_1^A,x_2^Aを導出します.
質問 問題4.5[p.113]
ゲーム2がよくわかりません.特に自然対数を含んだ式(e^{-n(x_A+x_B-1)^2})をx_iで微分した結果が解答のようになる過程がわかりません.
応答
丁寧に式展開を書くと,以下のようになります.
h^n x_iの微分
= (e^{-n(x_A+x_B-1)^2})' x_i + (e^{-n(x_A+x_B-1)^2}) (x_i)'
= e^{-n(x_A+x_B-1)^2} (-n(x_A+x_B-1)^2)' x_i + e^{-n(x_A+x_B-1)^2}
= e^{-n(x_A+x_B-1)^2}(-2n(x_A+x_B-1) x_i + 1 )
1行目は,積の微分公式でh^n x_iを分解し,
2行目の第1項は,合成関数の微分(e^f(x_i))'=(e^f)' f'(x_i)の前半(f(x_i)=-n(x_A+x_B-1)^2を一つの変数とみなして微分)に自然対数の微分公式(e^f)'=e^fを適用し,
3行目は,合成関数の微分で(-n(x_A+x_B-1)^2)'=-2n(x_A+x_B-1)を計算し,共通項e^{-n(x_A+x_B-1)^2}でくくっています.
コメント
実は,問題4.5は協力ゲームを非協力ゲームで裏付けようとするナッシュ・プログラムという研究分野の話が元ネタになっています.ゲーム1では多くの均衡があるのに対して,ゲーム2では問題集のコメントにあるように,1万円越えの実現確率が全体に小さくなるほど,2分の1ずつ分けるという「協力を前提としたらもっともらしい結果」(ナッシュ交渉解)になります.本書では非協力ゲームのみを扱っていますが,「協力ゲーム」を学ぶ機会があったら本問を思い出していただけると橋渡しの一つとなるでしょう.