第8回
メソ気象セミナー
目的
メソ気象セミナーでは,「メソ気象研究のこれまで・今・これから」をコンセプトとしてセミナー形式で議論することを目的としています.議論の内容としては,数多くの観測的・数値的・理論的な研究により明らかにされてきた『メソスケール気象学』について,これまでにどこまで理解されているのか・現在はどのような研究が行われているのか・さらには今後どのような研究を行っていくべきかについて取り上げます.
今年のテーマ
今年のメソ気象セミナーのテーマは,「メソ気象の環境場としての総観規模気象擾乱」です.
趣旨説明
総観規模の気象擾乱は,梅雨前線,温帯低気圧,台風など,それ自体が災害を引き起こすこともある一方で,その内部にメソスケールの気象擾乱,例えば,線状降水帯,JPCZ,竜巻などを伴い,降水・降雪・突風による被害を激甚化させることも少なくありません.総観規模の環境場が主導的な場合もある一方,総観規模とメソスケールの力学が複雑に相互作用する場合も少なくなく,両者の間には多くの未解明な課題が残されています.近年の温暖化や惑星規模のテレコネクションによる環境場の変化も気象災害を増幅しうるという報告もあることから,減災防災の観点からも多重スケール間を繋ぐ総観規模の大気力学の深い理解がより一層必要とされていると言えます.
今回のメソ気象セミナーでは,総観気象研究において第一線でご活躍されている気象大学校の北畠尚子博士をお招きし,気象力学に基づく総観規模現象の事例解析等に関するご講演をいただきます.総観規模の気象擾乱に重点をおき,メソ気象との関わり合いを議論します.
講師の紹介
北畠 尚子 氏
博士(理学)(東京大学)
略歴
・1984年 東京大学理学部地球物理学科 卒業
仙台管区気象台、気象庁予報部予報課、気象研究所台風研究部主任研究官・室長 などを経て
・2016年4月~2022年3月 気象大学校教授
・2022年4月~現在 気象大学校講師
受賞歴
・2021年 気象庁気象大学校 気象大学校長表彰
日時
2022 年 9 月 23 日 (金・祝) 〜 24 日 (土)
場所
三重大学 環境・情報科学館 (https://www.gecer.mie-u.ac.jp/topics/42meipl.html)
三重大学 キャンパスマップ(Jの建物) (https://www.mie-u.ac.jp/files/9a3932db166a2b0dc5cb3706ace053ed.pdf)
(状況次第で,Zoom と Gather によるオンライン)
※オンライン参加について
講義と総合討論は Zoom 配信を行い,オンラインのみの参加も可能とします(ポスターセッションは現地のみの開催となります.)
質疑の多い場合は現地参加者を優先する場合があります.
希望者は,参加フォームの「ご要望・ご質問があればお書き下さい」の欄へ「オンライン参加希望」とご記入ください.
参加費用
無料
定員
40 名
※現地参加者の定員
※ポスター発表は10件まで募集
申込締切
2022 年 9 月 2 日 (金)
※ポスター発表を希望される方は 8 月 14 日 (日)
※ポスター発表は定員になり次第締め切り
※申込みを締め切りました
セミナーの日程・タイムスケジュール
*スケジュールは変更になる場合があります.
1日目 9月23日 (金・祝)
13:30〜13:40:概要説明
13:40〜15:10:第1部「準地衡風近似の力学の基礎」
15:30〜17:00:第2部「準地衡風近似の枠組みでの総観規模擾乱の表現」
17:10〜18:40:参加者ポスターセッション
2日目 9月24日 (土)
09:30〜11:00:第3部「準地衡風近似の枠組みでの解析事例」
11:20〜12:00:総合討論
特別講演 要旨
※気象庁Webサイト『気象の専門家向け資料集』ページから『総観気象学 基礎編・応用編・理論編』のダウンロードをお勧めします.
第1部「準地衡風近似の力学の基礎」
大気の運動は運動方程式などの方程式系により記述できるはずなので,天気図に描かれる総観規模(数千km)の高気圧・低気圧の移動や変化はそれで予測できるはずだが,同じ方程式系で異なるスケールの現象も表現されてしまう.総観規模の低気圧・高気圧等に関する運動を特に抽出する方法として,準地衡風方程式系が導かれた.本セミナーでははじめにこの導出を,総観気象学理論編(以下,理論編)第5章などに沿って簡単に説明したうえで,準地衡風オメガ方程式・ジオポテンシャル傾向方程式を導く(総観気象学基礎編第4章,理論編第5章).
第2部「準地衡風近似の枠組みでの総観規模擾乱の表現」
ここではまず準地衡風近似の枠組みにおける渦度方程式やオメガ方程式・傾向方程式を用いて,温帯低気圧の構造と発達過程を説明する(基礎編第4章,第5章).
次にQベクトルとそれを用いた準地衡風オメガ方程式を導出し(理論編第5章,基礎編第6章・第9章),総観規模の前線に伴う運動を準地衡風近似の枠組みで説明する(基礎編第6章).ただし,総観規模の前線は,幅方向は総観規模より小さく,本来は準地衡風近似での説明は適切ではないため,地衡風運動量近似(応用編第7章)にも触れておく.それとの比較で,先に述べた準地衡風近似の枠組みでの説明も定性的には有用であることが示される.
第3部「準地衡風近似の枠組みでの解析事例」
大雨などの災害を引き起こす気象現象としては,近年では総観規模よりも小さ いメソスケール現象が着目されることが多い.しかしそれは上昇流が励起されやすい領域で生じやすいと考えられるため,環境場としての総観場の解析を行うことに意義がある.ここではメソスケールの大雨などが発生した事例のいくつかについて,準地衡風近似の枠組みにおける総観場の解析例を説明する.
なお,第3部の事例解析は,現時点では以下を準備しています.
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2012年4月2~4日の急速に発達した低気圧
基礎編第5.5節・第8.4節(参考:応用編第2章~第4章)
2004年台風第18号の温帯低気圧化
基礎編第7.8節,応用編第6.3節
2016年4月17日の低気圧と1995年11月7日の低気圧に伴った前線
基礎編第6.4節,応用編第4.5節
2020年7月3~4日の熊本県の大雨に対する総観場の影響
「天気」2022年2月号掲載
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tenki/69/2/69_87/_article/-char/ja/
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申込み方法・問合せ先
参加フォームはこちら
お問い合わせは,メソ気象セミナー事務局 meso.discuss [at] gmail.com まで.
(お手数ですが,[at] を @ に変えて送ってください.)
世話人 (あいうえお順)
鵜沼昂 (気象研),春日悟 (三重大),加藤亮平 (防災科研),下瀬健一 (防災科研),末木健太 (気象研),津口裕茂 (気象大),栃本英伍 (気象研),横田祥 (気象庁) ,吉住蓉子 (日本気象協会),渡邉俊一 (気象研)
謝辞
第8回メソ気象セミナーは科研費新学術領域Hotspot2との共同開催です。
更新履歴
2022-07-25 ホームページを公開しました.
2022-08-13 特別講演要旨を追記しました.
2022-08-22 特別講演要旨を更新しました.