第7回

メソ気象セミナー

目的

メソ気象セミナーでは,「メソ気象研究のこれまで・今・これから」をコンセプトとしてセミナー形式で議論することを目的としています.議論の内容としては,数多くの観測的・数値的・理論的な研究により明らかにされてきた『メソスケール気象学』について,これまでにどこまで理解されているのか・現在はどのような研究が行われているのか・さらには今後どのような研究を行っていくべきかについて取り上げます.

今年のテーマ

今年のメソ気象セミナーのテーマは,「雲物理に関する観測・実験・数値モデリング研究」です.

趣旨説明

近年,孤立積乱雲や組織化した積乱雲群がもたらす大雨や突風,雷等の激しい大気現象による災害が増加・激甚化し,社会的な関心が高まっています.これらの激しい大気現象による被害を最小限にとどめるためには,積乱雲の発達を的確に観測しかつそれらによる降水の正確な予測が必要不可欠です.そのため,積乱雲の発生初期を捉える観測や,それらの発達段階についての予測精度の向上は現在の気象学分野において重要な研究テーマです.数値モデルにおける雲物理過程は,降水形成・対流活動・放射過程などの物理過程に幅広く関与し,雲の発生・発達に影響を及ぼすため,領域モデルのみならず全球モデルにおいても重要な因子となります.しかし,雲物理モデリングには不確定な部分が依然として存在するため,多くの仮定が用いられているのが現状です.その不確定要素を減らすためには,観測による実態把握や室内実験による素過程解明のモデル化・検証を併せて行うことによって,雲内の微物理構造・過程の解明につなげることが必要です.以上のように,雲微物理過程の研究では観測・実験・数値モデリングのそれぞれの手法がお互いに連携しながら重要な役割を担っています.

今回のメソ気象セミナーでは,雲物理研究において第一線でご活躍されている気象庁気象研究所の橋本明弘氏・折笠成宏氏,防災科学技術研究所の本吉弘岐氏をお招きし,観測・実験・数値モデリングの観点からご講演をいただきます.また,メソスケールや大規模な現象の理解にもつながる雲物理研究の重要性や今後の課題について,参加者全員で議論を行う機会を設けます.

講師の紹介

橋本 明弘 氏 博士(理学)(北海道大学)

気象庁 気象研究所 気象予報研究部

略歴

・2002年     北海道大学大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻 博士後期課程 修了

・2002年~2006年 財団法人地球科学技術総合推進機構 研究員

・2006年~2007年 科学技術振興調整費 ポスドク研究員

・2007年~2011年 気象庁気象研究所 予報研究部 研究官

・2009年~2009年 米国大気科学研究センター(NCAR) 客員研究員

・2011年~2019年 気象庁気象研究所 予報研究部 主任研究官

・2019年~現在   気象庁気象研究所 気象予報研究部 主任研究官

主な受賞歴

・2018年 日本雪氷学会2018年度技術賞

折笠 成宏 氏 博士(理学)(名古屋大学)

気象庁 気象研究所 気象予報研究部

略歴

・1991年   気象大学校 卒業

・1994年~2005年   気象庁気象研究所 物理気象研究部 研究官

・1999年~2000年   米国大気科学研究センター(NCAR)客員研究員

・2005年~2012年   気象庁気象研究所 物理気象研究部 主任研究官

・2015年~2019年   気象庁気象研究所 予報研究部 主任研究官

・2019年~2021年3月 気象庁気象研究所 気象予報研究部 主任研究官

・2021年4月~現在 気象庁気象研究所 気象予報研究部 第五研究室長

主な受賞歴・委員等

・2016年7月~現在 国際気象学・大気科学協会(IAMAS) 国際雲・降水委員会(ICCP), 委員

・2021年3月~現在 世界気象機関(WMO) 世界気象研究計画(WWRP) 気象改変に関する専門家チーム(ET WxMOD), 委員

本吉 弘岐 氏 博士(理学)(総合研究大学院大学)

国立研究開発法人 防災科学技術研究所 雪氷防災研究部門

略歴

2008年     総合研究大学院大学 複合科学研究科 極域科学専攻 博士課程 修了

2008年~2009 テンプスタッフフォーラム株式会社派遣スタッフ(派遣先:防災科学技術研究所)

2009年~2011 独立行政法人 防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター 契約研究員

2011年~2013 独立行政法人 防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター 任期付き研究員

・2013年~2015年 独立行政法人 防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター 主任研究員

・2015年~2016年 国立研究開発法人 防災科学技術研究所 雪氷防災研究センター 主任研究員

・2016年4月~現在 国立研究開発法人 防災科学技術研究所 雪氷防災研究部門 主任研究員

主な受賞歴

・2018年 日本雪氷学会北信越支部 大沼賞

日時

2021 年 7 月 10 日 (土) 〜 11 日 (日)

場所

Zoom と Google Meet によるオンライン

参加費用

無料

定員

100名

申込締切

2021 年 6 月 25 日 (金)

80名の方に登録いただきました。どうもありがとうございます。

セミナーの日程・タイムスケジュール

*スケジュールは変更になる場合があります.

1日目 7月10日 (土)

  13:30〜13:40:概要説明ー粒子から見る雲・降水ー(橋本氏)

  13:40〜15:10:第1部 観測・実験に基づく雲物理学的知見(折笠氏)

  15:30〜16:50:第2部 地上降雪粒子観測とメソ降水系への洞察(本吉氏 + 橋本氏)

  17:10〜18:40:参加者ポスターセッション

  18:40〜 :懇親会(自由参加)

2日目 7月11日 (日)

  09:30〜11:00:第3部 雲微物理モデリングと数値シミュレーション(橋本氏)

  11:20〜12:00:総合討論

特別講演 要旨

第1部 観測・実験に基づく雲物理学的知見折笠氏

雲が発生するプロセスには、大気中の微粒子(エアロゾル)が大きく作用している。また、発生した雲粒子が降水粒子になるまで、様々な雲微物理過程が働いている。本講演の前半では、雲物理学分野でこれまで観測・実験に基づく研究から進展してきた主要な例を幾つか紹介し、雲物理学の応用である人工降雨の原理・方法についても説明する。後半は、筆者らがこれまで行ってきたエアロゾル・雲・降水および人工降雨に関する観測・実験的な研究成果の概要を紹介すると共に、今後取り組むべき課題を述べる。

第2部 地上降雪粒子観測とメソ対流系への洞察本吉氏+橋本氏

地上降雪粒子観測は、手軽に実施可能な雲微物理過程の観測方法と捉えることができる。ただし、地上で観測される降雪粒子は、生成されてから長い時間をかけて様々な雲微物理過程を経た最終生成物であるという点に注意が必要である。地上付近の様々な雪氷現象に影響を与えることから、地上で観測される降水粒子とそれをもたらす降水系との間の関係は雪氷防災の観点からも重要な課題となっている。本講演では、新潟県長岡市で実施した降水系の通過に伴う降雪結晶や降水粒子特性の連続観測の結果について紹介するとともに、地上で観察される降雪結晶の特徴について考察したい。

第3部 雲物理モデリングと数値シミュレーション橋本氏

数値気象モデルにおいて、雲微物理過程は、大気に対する水・熱の生成項として組み込まれており、モデルが予測・再現する大気循環や雲・降水の振る舞いを左右する。水を主成分とする粒子は大気中で様々な形状を取り得るが、モデル化に当たっては、目的に応じて粗視化され、このことはモデルに組み込まれた微物理過程の精度にも影響する。このような不完全さを抱えながらも数値モデルは、そこに実装された変数や、それをもとに診断された観測不可能なパラメータも含めて、雲・降水に関するあらゆる情報を、必要なだけ稠密に出力できる。本セミナーでは、雲物理モデルの限界と可能性の他、近年ますます充実しつつある観測・実験を念頭に、将来の雲物理研究を参加者とともに展望したい。

申込み方法・問合せ先


参加フォームはこちら


お問い合わせは,メソ気象セミナー事務局 meso.discuss [at] gmail.com まで.

(お手数ですが,[at] を @ に変えて送ってください.)

世話人

鵜沼昂 (気象庁),春日悟 (新潟大),加藤亮平 (防災科研),下瀬健一 (防災科研),末木健太 (理研),津口裕茂 (気象庁),栃本英伍 (防災科研),横田祥 (気象庁) ,吉住蓉子 (日本気象協会),渡邉俊一 (気象研)

謝辞

TBD

更新履歴

  • 2021-06-03 ホームページを公開しました.

  • 2021-06-15 特別講演要旨を追記しました.

  • 2021-06-30 参加申し込みを締め切りました.