メソ気象セミナーでは,「メソ気象研究のこれまで・今・これから」をコンセプトとしてセミナー形式で議論することを目的としています.議論の内容としては,数多くの観測的・数値的・理論的な研究により明らかにされてきた『メソスケール気象学』について,これまでにどこまで理解されているのか・現在はどのような研究が行われているのか・さらには今後どのような研究を行っていくべきかについて取り上げます.
今年のメソ気象セミナーでは,メソ気象モデルで用いられる代表的な境界層乱流モデル「Mellor–Yamada–Nakanishi–Niinoモデル(MYNNモデル)」を取り上げます.
メソ気象学がターゲットとする大気現象は,空間スケールが1キロメートルに満たない無数の渦を伴う乱流に満ち溢れています.一方,メソ気象を扱う数値シミュレーションは,計算機の性能による制限のため,大気中の乱流を直接解像することはせず,数キロメートル程度の水平格子間隔で行われることが一般的です.このため,格子間隔以下の乱流が担う運動量・熱・水物質の輸送はパラメタリゼーションによって表現する必要があります.
MYNNモデルは,格子間隔以下の乱流が等方的であることを仮定して格子間隔以上の乱流のみを陽に解くシミュレーション(Large Eddy Simulation)の計算結果に基づき,従来大気・海洋の境界層乱流のパラメタリゼーションとして幅広く利用されていたMellor–Yamadaモデル(MYモデル)を改良したものです.MYNNモデルは,MYモデルで指摘されていた,対流混合層の発達が不十分であるなどの課題を克服し,放射霧や下層雲の再現性向上に大きく貢献しました.現在,気象庁現業の数値予報モデルasucaやJMA-NHM,NCEPの同化予報サイクルRapid Refresh,全球雲解像モデルNICAMや気候モデルMIROC,米国のコミュニティモデルWRFなどに実装され,数値モデルにおける大気境界層過程の代表的なパラメタリゼーションの1つとなっています.
今回メソ気象セミナーでは,MYNNモデルの開発者である中西幹郎・新野宏両先生をお招きし,大気境界層の物理やMYNNモデルの理論・設計思想に関してご講演をいただきます.また,メソスケールモデルにおける乱流パラメタリゼーションの役割や今後の課題について,モデル開発者・ユーザー双方の視点から議論を行う機会を設けます.
略歴
主な受賞歴
略歴
主な受賞歴
2019 年 7 月 14 日 (日) 〜 15 日 (月・祝)
伊勢神宮会館 講堂第一会議室 (http://jingukaikan.jp/)
アクセスマップ:http://jingukaikan.jp/kaikan/access/index.html
一般:3500 円 程度 (会費は変更になる場合があります)
※公費等で支払えない方には補助を行いますので、6/14 (金) までにご連絡ください
学生:無料
40 名
日時:7 月 14 日 (日) 19:30〜21:30
会場:たか屋 (URL: http://wagokoroya.net/isesakabaten.html)
アクセスマップ:https://goo.gl/maps/EFxG4bk4KcYo84b4A
会費:一般 5000 円;学生 500 円
(宿泊等は,各自でお早めの手配をよろしくお願いします.)
2019年6月末日 定員に達し次第 申込は締切りました
*スケジュールは変更になる場合があります.
1日目
13:00〜13:30:受付
13:30〜15:00:第1部 境界層の基礎(新野先生講演)
15:30〜17:00:第2部 MYNNモデルの種々の工夫(中西先生講演)
17:30〜18:30:参加者ポスターセッション
19:30~21:30:懇親会
2日目
08:30〜09:00:受付
09:00~10:30:第3部 LESで見る大気境界層(中西先生講演)
11:00〜12:00:総合討論
地表面から1–2km以下を占める大気境界層では、地表面による摩擦や加熱・冷却の影響を受けて乱流が卓越する。大気境界層の乱流は地表面から自由大気に向けて運動量・熱・水蒸気・物質を輸送し、地表付近の環境の決定に支配的な役割を演ずると共に、自由大気中の擾乱の発達や平均的な大気構造の決定にも大きく寄与している。本講演では、流体力学における境界層の概念に始まり、層流から乱流への遷移、乱流を記述する方程式、日変化する大気境界層の特徴と構造、乱流のモデリングの基礎などについて概説する。
境界層(乱流輸送)モデルの代表格の1つであるMellor–Yamada(MY)モデルを改良したMellor–Yamada–Nakanishi–Niino(MYNN)モデルを説明する。MYモデルの原型は1970年代に発表されたが、今も利用され続けるのは、理路整然とした定式化、使いやすい簡略化、それでいて高い予測精度にあると考えられる。恐らく中立成層のデータしか参照できなかったために定式化が制限され、MYモデルに存在した対流混合層、安定境界層における弱点を、筆者らは6ケースの成層別のLarge Eddy Simulation(LES)データベースを使って改良した。その改良の工夫を説明するとともに、残る課題を取り上げる。
MYNNモデルにも課題がある。この解決は、観測値に基づいて進めたいが、観測で改良に必要なすべてのデータを得ることは難しい。MYNNモデルの未知数(クロージャー定数)や乱流長さスケールを求める際には、LESの計算結果を利用した。MYNNモデルが(少なくとも中西が)期待した以上の成果を出しているのは、LESの計算結果の確からしさを表している。LESを手軽に利用できる環境にない現在、より多くのLESデータベースを構築し、その結果を利用してMYNNモデルの改良を試みるのは妥当であると考える。境界層の興味深い現象を観察する意味も含めて、LESの計算事例を紹介する。
参加フォームはこちら
参加者 33 名
お問い合わせは,メソ気象セミナー事務局 meso.discuss [at] gmail.com まで.
(お手数ですが,[at] を @ に変えて送ってください.)
鵜沼昂 (気象庁),春日悟 (新潟大),加藤亮平 (防災科研),下瀬健一 (防災科研),末木健太 (理研),津口裕茂 (気象庁),栃本英伍 (東大),横田祥 (気象庁) ,吉住蓉子 (名大),渡邉俊一 (気象業務セ)
本セミナーはJSPS科研費JP18K04473(課題名:データ同化手法を用いた都市の風環境評価に資する標準上空風の計算)の助成を受けています。