大学に在職中は,分子構造を描くため,ChemDrawを使っていた.ChemDrawに代わる分子描画ソフトとしてMarvin Sketchというフリーのソフトが存在することは知っていたが,使用する機会がなかった.実際使用してみると結構多機能であることが分かった.使用法について尋ねられたのを機に備忘録的に使用法を記してみた.
注)Mac OSの最上位バージョン 10.15.7 Catalinaでは32ビット版ソフトウェアであるChemDrawは起動しなくなった.Marvin Sketchは問題ない.
フリーソフトの入手法は,ネット上に開設記事があるので,参考にしてほしい.
初期設定
ダウンロード時の設定のまま,本ブログ用の分子図を描画してみたが原子記号のサイズが小さいので,すこし大きくした方が見やすいようである.設定は,File -> Document Style -> Settings で可能である.以下のようにフォントサイズを10から14に変更してみた.日本語メニューの設定はできない.
原子のサイズ 10
原子のサイズ 14
基本的な描画
基本的な環状化合物はメニューに準備されているので,編集画面に引っ張り出すだけでよい.ベンゼンにベンゼンを縮環させてナフタリンを描く場合は縮環部位が赤で表示されるのを目安にすればよい.
ベンゼン環に置換基を付けるには,まずメニューからベンゼンを選択する.ついでベンゼン環に単結合を付ける.単結合の末端はメチル基(CH3)が表示され,トルエンができる.メチル基をOHやNH2に変更するにはメニュー原子(H, C, N , O, S, Clなど)から目的の原子を選び.メチル基をクリックするだけでよい
置換基の付け方(その1 Label Editorを利用)
ニトロ基 (NO2)やカルボン酸 (CO2H)などの下付き文字を必要とする置換基を描くにはLabel Editorを利用する.手順は以下の通りである.
CH3をマウス右クリックする
ラベルエディターをクリック
NO2と記載し,リターンキーを押下する
下付きに変更される
置換基の付け方(その2 InsertのGroupを利用)
数多くの置換基が用意されているので,簡単に置換することができる.以下はトルエンのCH3をCONEt2に変更した例である.Insert --> Groupsと移行すると,type filter textと表示されるので,CONを入力すると該当する候補群が表示される.目的の置換基を選択後,Closeすれば記憶されるので編集画面のトルエンのメチルをクリックすればよい.
テキスト入力
左側メニューのTを選択するとテキスト入力が可能である.Chart 1, Ac2O, 上部メニューの説明(erase, undo, redo, cut, copy paste)はテキストである.以下の例では,View --> Grid & Guidelinesを選択して編集を補助するための縦横の線を表示させている.
末端原子が表示されない場合は,表示Offに設定されているので,表示するように設定する必要がある.
View --> Implicit Hydrogens --> On All に設定されていると,右端の図のように描画される.
今回は,線画にするために,On Hetero and Terminalに変更した.
On Allに設定した場合
テンプレートの利用
25種類の化合物群が登録されているので,大変便利である.アミノ酸を選択した場合の図を以下に示した.
作図上の警告と修正
実例で説明する.ビフェニル部位の2個のベンゼン環を繋ぐ結合が長いという警告が表示された例である.Fix Allを押すと修正してくれる.
ファイルの保存
保存の際は連携するソフトに合った方法が選択できるように各種準備されている.キュバンの画像を標準的に保存したファイルをAvogadroで読み込んでみたところ「3次元座標を含むファイルではない」と警告がでたが,問題なく3次元構造を得ることができた.PDFや画像としても書き出すことができる.
実際に反応式などを描き,エラーを修正しながら習得してほしい.次稿では2次元画像を3次元的に変換する方法を説明する.
ネット上に基礎的な利用法を解説した記事があるので,そちらも参考にしてほしい.
2021.5.24