舞鶴町青年会は SDGs の目指す持続可能な社会の実現に舞鶴町から取り組んでいきます
舞鶴町青年会発足10周年を記念し、令和7年12月7日(日)、舞鶴町公民館にて記念基調講演会が開催されました。講師には東洋大学学長 矢口悦子氏をお迎えし「子育て支援と地域コミュニティ ~郷土が育てる子どもと地域の絆~」をテーマにご講演いただきました。矢口学長は、社会教育学・生涯学習論の専門家であり、地域に根ざした教育支援を長年にわたり実践・研究されてきました。秋田県出身。お茶の水女子大学で博士号(人文科学)を取得後、2003年より東洋大学文学部教授、2020年から現職を務めておられます。
東洋大学 学長 矢口 悦子 氏
講演の中では、東洋大学の創立者・井上円了と大分県との深いご縁が語られました。戸次村、鶴崎町、日岡村といった土地の名が挙がると、会場からは「聞いたことがある」といった親しみの声が漏れました。大学が「講師派遣事業」を通じて地域に恩返しを続けていることも紹介され、円了が全国を巡って講演を行い、地域の人々の支えによって大学の基盤を築いた歴史に触れながら「大学が地域に恩返しをすることの大切さ」が紹介されました。
地域の祭りや青年会の役割についても触れられました。地域を支えるには、主催する人、参加する人、応援する人、そして先人の思いという四つの層があり、祭りはそれらを結びつける「紐帯」(ちゅうたい)であると説明されました。特に「子どもがそのままで安心して育つ「ゆりかご」のような地域が必要だ」という言葉は、会場に集まった皆さんの心に深く響いていました。
震災や社会的な出来事を通じて若者が果たしてきた役割にも言及があり、阪神淡路大震災や東日本大震災の際、多くの青年が「誰かの役に立ちたい」と行動したこと、大分の青年たちが福島の子どもたちに砂場を届けたエピソードは、聞く人の胸を温かくしました。矢口先生は「若者は子どもと高齢者をつなぐ結節点であり、伝統を守るためにこそ新しい工夫を取り入れる存在」と語り、未来を担う世代への期待を込められました。
景観を守ることの意味についても触れられ「懐かしさは人と人との思い出だけでなく、その背景にある景色と結びついて記憶されるものです」と説明されました。例えばドイツでは街並みを徹底的に守ることで、人々の帰属意識を育んでいること、オランダでは川沿いに安全柵を設けず、子どもたちに泳ぐ教育を施すことで景観を保ちながら暮らしを支えていることが紹介されました。「人の手が加わらない竹林は荒れて危険で、美しいとは感じにくい。誰かが手を入れることで初めて懐かしい、心地よい景観になる」と語り、景観を守ることは単なる美観の維持ではなく、人々の暮らしや心の豊かさにつながる営みであると強調されました。会場では「なるほど」という頷きが見られ、地域の風景を大切にすることの意味を改めて考える時間となりました。
幅広い年齢層の方が参加
当日は町内外から多くの方が集まり、質疑応答では、参加者からさまざまな質問がありました。ある方から「自分探しをしているうちに自分を嫌いになってしまった人へのアドバイスはないか」との質問があり、矢口先生は「自分が嫌いだという人は少なくありません。けれども、人から感謝される経験を重ねることで気持ちは変わっていきます」と語られました。また「若者が活動にあまり興味を持たず、参加してもらうためのコツは」という問いには「大人の見方を変えることが必要」との答えがありました。大学ではきっかけづくりとしてスポーツの応援を企画し、学生たちが一緒に応援に出かける取り組みを行ったそうです。一緒に過ごす時間そのものが教育にもつながり、若者も「きっかけを求めている」という先生の言葉が印象的でした。
質問のようす…若者が参加するコツとは?
最後に「青年会という肩書きは、全国どこでも通じる大切なパスポートのようなものです。この仕組みを持つ地域は、世界的にも稀で誇らしい存在だといえます。大分の青年たちには、失敗を笑いに変える包容力や仲間の手柄を素直に称える知恵、困っている人の声に耳を傾ける優しさがあります。そうした土壌が新しい物語を生み出し、若者が生き生きと活動できる環境を育むでしょう。」と語られ、今回の講演会は、舞鶴町の新たな一歩を象徴する催しとなりました。
舞鶴町青年会発足10周年を記念し、特別曳行が行われました。山車は朝8時から組み立てが始まり、講演会をはさんで13時より巡行へ。舞鶴町公民館を出発し、長濵神社で神事を行った後、町内を練り歩きました。
山車を組み立てるようす
長濵神社で記念撮影
町内に入ると、太鼓をたたく子どもや綱を引く子どもたちの姿があり、笑顔いっぱいで巡行を楽しんでいました。舞鶴公園で遊んでいた子どもたちも山車に引き寄せられ、列に加わる場面も見られました。公民館へ戻ると、山車の屋根から餅まきが行われ、公園にいた子どもたちも加わって珍しい風習を楽しみました。
巡行を終えた山車は、その後解体され、次の出番を待ちます。次回は7月の長濵神社夏季大祭で再び組み立てられる予定です。今回は製作者である三佐大工の橋本氏が世話人として組立の指導にあたり、丁寧に教えてくださいました。冬に組み上げるのは初めての試みでしたが、夏よりも木の膨張が少ないためか、比較的楽に組み上げることができました。季節によって異なる表情を見せる山車は、地域の伝統の奥深さを感じさせてくれます。
特別曳行のようす 綱をにぎる子どもたち
山車から餅まきをするようす
曳行後には、舞鶴杯卓球大会が開催され、白熱した試合が繰り広げられました。続く祝賀会では、地域の皆さまや子ども会の方々も多数参加され、総勢70名を超える盛会となりました。八鹿酒造の麻生益寛社長からは 新酒「しぼりたて」が届けられ、さらに神社や町内関係者の皆さまからも多くのご寄贈をいただきました。また、つるさき食品の三角チーズパン(サンチー)もふるまわれ、参加者は地元ならではの味を楽しみながら 10周年を祝い合いました。
麻生益寛社長からいただいた「しぼりたて」
大分のソウルフード「三角チーズパン」
舞鶴町青年会は、次の10年へ向けて、これからも地域に根ざした活動と世代を超えた交流に取り組んでまいります。
活動拠点・舞鶴町公民館