高校1年生、ピエールアレシンスキーの「夜」をみました。
大学4年生、ピエールアレシンスキーの「夜」を模写しました。
高校1年生、ピエールアレシンスキーの「夜」をみました。
大学4年生、ピエールアレシンスキーの「夜」を模写しました。
<原文>
私にはあなたが、
飛行機の窓から見える夜景
に見えます。
知らない文字の集積に見えます。
あなたの頭の中に見えます。
ただの絵に見えます。
私の手があなたを模写します。
ただの絵として描いているのに、
綺麗な星空の光たちだと思った、だけど、気持-
ち悪い家庭の集合だった、
あの夜景と同じように扱いました。
あなたでなくては駄目なのに、
あなたのことはどうでもいいのです。
私であることはどうでもいいのに、
私でなくては駄目なのです。
隣の人が息をしていました。
私はそれが嫌だと思いました。
なので、私は息をするのをやめました。
人間とは、呼吸をする生き物ですか。
私は息をしていない間も生きていました。
だから、あなたを模写している時間を、
あなたにやるつもりはないのです。
あなたの生まれは知らないし、
あなたの親のことはもっとどうでもよくて、
だって、
子は親のまえでは生きていなくて、
親は、生み出したことを謝ることはありませんから。
息をしていない時間も、している時間も、
どこか、別の世界にいるのだと思っている時間も、
私の時間軸では生きられずに、ただずっと外側の時間
によって生かされている。
あなたが私でなくとも
私はあなたと向き合う時間、
ずっと生かされています。
私は私を描かなくとも、ずっと私であり続けます。
ピスタチオの色が好きなので、
存在が好きなので、
ピスタチオクリームがかかった大きなパン-
ケーキを注文しました。
食べてみると、私はピスタチオの味はあまり好
きでなかったことを思い出しました。
それでも
私はこれからも
ピスタチオであろうものを手に取り、食べます。
私が何においても
王様ではないという証のために
口に含むのです。
あなたと私が交わることがないという
ことを
教えてくれる気がするからです
私は
擬人化という言葉が嫌いです。
この言葉は
私が存在していることを
否定しているようです。
私はもうすぐ、
22歳になります。
20歳になった時、
私の記憶は、音も匂いも見ることも思-
うことも、
何もかも、
ばらばらになりました。
今まで映像として存在していたものが無くな-
って、
私はどうやら大人になりました。
人は、
老いることによって
しか大人になれないのだと
気付きました。 (そうか、あな-
た越しに、
かつての私を見ていたのかもしれ-
ません)
今日は、ずいぶん寒い季節になってしまった
けれど
まだ太陽は暖かいです。
私たちが共有出来るのはたったそれだけで
悲しみや苦しさを諦めたら、
切なさになるでしょう。
大人は
何か不思議なお湯につかって-
いるかのようです。
そのお湯は、
私のことを平気で捨てるんです
ゴミ箱を持っていないのが大人ですから
あなたも
いつか消えてしまうかもしれない
私はもう、
いろんな人の中から消えてしまった
これもゴミ箱がないせいで、
いったいどこにいって-
しまうんでしょうね
後ろには本が並び、
時には寒い風が貫き通る
足元だけは暖かく包み込まれているはずなのに
私の足はちっとも報われない
心と私は一致せず、
たくさん口を動かすことができた日は泣いて帰り、
君の話をたくさん聞けた時、
人を嫌いになる。
君と話したいこと、愛されたいこと、
それだけが浮遊して、
その間の自然を頭の中で殺し、
私は私になっていく
この文字は私のものではなく
あなたも私のものではない
でもね、私
ニキビが治らないんです。
親指にはずっとさかむけがあります。
寝ると夢を見ます。
ボロボロの服を好んで着ます。
ある人たちの前だと声が震えます。
涙をながすと化粧がどろどろになって落ちます。
歩くと蕁麻疹ができる時があります。
私がお風呂に入るとお風呂が汚れます。
毎月、股の間から血がでるんです。
犬みたいに毛むくじゃらにはなれないのに、
人形みたいにツルツルにもなれない。
鏡をみると、
誰だか分からない醜い人間がうつります。
ずっと一緒に生きてきたのに、
ずっと一緒になれなかった。
記憶と一緒で、
ばらばらになってしまう
私を燃やしたら、全部燃えきるんでしょうか。
何がはじめに燃えるんでしょうか。
どうして私は、何にもできないのに、
何でもできてしまうんでしょう。
あなたをばらばらにしたのは、あなたが私じゃない
からです。
ばらばらにしても燃えないからです。
描き方が崩壊しているのではなく
言葉が崩壊しているのです。
それが、
私達のできる
生み出すということだと思うから。
ごめんなさい、私もこの作品を生み出したことを謝-
れない。
それに、
あなたに謝罪を述べることはできません。
世界中で君にだけ、暴力的だと思われたい。
そして、
閉塞的で、開放的なこの時間だけが、存在すること
を願います。
どうか、私の感謝がどこにも届くことのありません
ように。
2022/01
武蔵野美術大学 卒業・修了制作展