第8回
大規模電磁界数値解析手法に関する研究シンポジウム
(LSCEM2025)
目的:
回転機やMRIなど電気機器・電子デバイスの開発設計,携帯電話や医療機器における生体電磁環境問題など,電磁場解析の需要が高まっています.特に,有限要素法やFDTD法を用いた数値シミュレーションが学術研究や設計現場において活用されています.本シンポジウムは,計算電磁気学の学術研究や産業応用を推進することを目的とし,高性能計算,電気機器解析,計算科学など様々な分野の研究者が集まり,将来に向けて計算電磁気学に関連する解決すべき諸問題について討論するものです.
本シンポジウムは,科研費研究「電磁場・固体連成解析のハイケーパビリティ計算を実現する数値計算法」(研究代表者:荻野正雄),科研費研究「超音波スピーカの音場設計に向けた波動音響―流体並列連成計算に基づく非線形音響解析」(研究代表者:武居周),および科研費研究「大規模並列のための電磁界解析向け階層型領域分割法の収束性改善」(研究代表者:杉本振一郎)の研究成果報告を兼ねています.
日時:
2025年2月23日(日・天皇誕生日)-24日(月・振替休日)
会場:
大濱信泉記念館 2階 多目的ホール(沖縄県石垣市登野城2-70)
(オンライン参加も可能,事前に実行委員会へご連絡ください)
参加費:
無料
プログラム:
2月23日(日・天皇誕生日)
セッション1 座長:桝井晃基(大阪大学)
10:00-10:30 「人体モデルを用いた「電気」-「熱」双方向連成解析の基礎検討」
野村政宗(秋田工業高等専門学校)
前回の発表では、人体モデルを用いた高電圧の感電解析のための「電気」-「熱」の片方向連成解析をADVENTURE-Thermalを用いて開発した。本発表では、更に導電率の温度依存性を考慮した双方向連成解析手法について述べ、実際にADVENTURE-Thermalを双方向連成解析用に開発し、簡単なモデルを用いた解析結果の比較を行う。
10:30-11:00 「電磁界解析の高速化・安定化に関する検討」
杉本振一郎(八戸工業大学)
反復法や前処理など,電磁界解析における高速化・安定化に関する取り組みを紹介する.
11:00-11:30 「AIによるモーションピクトグラム生成とUXへの影響に関する研究」
岡谷夏実(東洋大学)
ピクトグラムは、安全や危険防止において重要な役割を持った視覚表現であり、効果的な情報伝達と正確性が求められる。本研究は、AIと画像認識を用いて、静的なピクトグラムから動的なモーションピクトグラムの自動生成を行うことで、情報伝達の強化とモーションピクトグラムの実用性向上を目的とする。モーションピクトグラムは動的な視覚表現により、より直感的で理解しやすい情報伝達の促進が可能であるが、作成コストなどが普及の妨げとなっている。これに対し、本研究ではAIを活用した自動生成により、モーションピクトグラムの普及促進に貢献する。加えて、モーションピクトグラムの有効性について、静止画ピクトグラム、映像ソフトを用いた手動作成時、AI生成時の3種類に対する主観的評価検証を行った。その結果、表現内容の認識および視覚表現における正確性、動きの自然さなどがAI生成時の課題である一方、特に動的な概念の伝達において理解度を向上させる効果や、情報伝達の強化に求められる要件が明らかになった。
昼休み
セッション2 座長:荻野正雄(大同大学)
13:30-14:00 「悪条件問題向けのIC(p)前処理におけるフィルイン選択手法の検討」
桝井晃基(大阪大学)
高周波電磁場問題などの悪条件問題に対する反復法においては,フィルインを考慮したIC(p)前処理が有効であることが知られている.一方で,フィルインのレベルを上げると,前処理行列を確保するためのメモリ使用量も増大するため,問題が大規模になるとメモリ不足の問題が発生する.
そこで,フィルインのレベルを細かく調整する手法を提案し,数値実験の結果を報告する.
14:00-14:30 「大規模言語モデルを強化するためのRAGの最適化開発」
劉思涵(東洋大学)
大規模言語モデル(LLMs)は、テキスト生成や質問応答など高度な自然言語処理を提供する一方、静的なデータセットへの依存により動的・リアルタイムなクエリ対応が難しいという制約があります。
RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、LLMsに検索機構を組み合わせることで外部知識を取り込み、これらの課題を解決する革新的な手法です。
本研究では、LLMsの幻覚を抑え、文脈の正確性と適応性を高めるための最適なRAGの可能性を探ります。
14:30-15:00 「油入変圧器の異常予測」
鄭宏杰(東洋大学)
油中ガス分析データを用いて,油入変圧器の異常時期について予測した.
休憩
セッション3 座長:田上大助(九州大学)
15:30-16:00 「媒質間境界条件を考慮した導体・不導体領域分割PINN」
荻野正雄(大同大学)
静磁場解析では,導体・不導体の境界において磁束密度の法線成分と磁場強度の接線成分が連続であるという条件を満たす考慮する必要があり,辺要素を用いた有限要素法では自然と満たされる工夫がされている.ここで,近年PDEソルバとしても注目されているPhysics-Informed Neural Network (PINN)を静磁場解析に適用した場合,節点間の接続情報を考慮しないことから,導体表面の境界条件を考慮することができない.これに対し本研究では,反復型領域分割法に基づく導体・不導体領域分割PINNを提案する.
16:00-16:30 「張研究室の紹介」
曽我部知広(名古屋大学)
張研究室(数理工学研究グループ)での学生の研究課題の紹介と本会議での共同研究に向けた接点を模索する。
特別講演 座長:武居周(宮崎大学)
16:30-17:30 「半解析的均質化法を用いた電気機器の縮約モデルについて」
五十嵐一(北海道大学)
半解析的均質化法を用い,多重巻きコイルやリッツ線の複素透磁率を導くことで,周波数領域の電気機器の縮約モデルを構成する.また複素透磁率を連分数展開することにより,時間領域解析のための等価回路モデルを導く.
技術交流会:
日時:2月23日(日) 18:30-20:30
場所:(TBD)
参加費:(TBD)
2月24日(月・振替休日)
セッション4 座長:野村政宗(秋田工業高等専門学校)
10:00-10:30 「周波数応答音響解析におけるRobin型伝搬条件を考慮したFETI-DP法の適用」
巽 洲太(株式会社村田製作所)
近年、音響解析や電磁波解析の周波数応答解析において境界に2つのラグランジュ乗数を設定するRobin型伝搬条件を考慮したFETI法やFETI-DP法の研究がされている。本研究ではRobin型伝搬条件を考慮したFETI-DP法を周波数応答音響解析に適用し、伝搬条件の設定や前処理の有無による収束性について議論する。また、電磁波解析への適用の展望についても述べる。
10:30-11:00 「GPUを活用した疎行列直接法ライブラリcuDSSの基礎検討と階層型領域分割法への適用可能性の評価」
後藤聡太(東京大学)
本研究では、電磁界解析における階層型領域分割法の部分領域直接法に、GPUを活用した疎行列直接法ライブラリであるNVIDIAが提供するcuDSSを適用する可能性について基礎的な検討を行った。cuDSSは、GPUの計算性能を活用することで大規模疎行列の直接解法を高速に実行できるライブラリであり、計算効率の向上が期待される。一方で、階層型領域分割法における部分領域直接法として適用する場合、その性能や導入価値について事前評価が必要である。本発表では、cuDSSの性能を評価するために実施したベンチマーク結果を示し、同ライブラリの階層型領域分割法への適用可能性を検証する。また、導入時に考慮すべき課題や将来の展望についても議論する。
11:00-11:30 「大規模電磁場解析におけるIC(1)分解を前処理とした並列化COCG法の検討」
上木脩生(大阪大学)
大規模電磁場解析向け反復法における前処理として,IC(1)分解は収束性改善に有効である.また,並列化手法の代表例としてはABMC法があり,さまざまな問題で計算時間を短縮できる.しかし,フィルインが並列化を阻害するためABMC法などで単純に並列化できない問題がある.この問題に対して二つの並列化手法を提案する.
昼休み
セッション5 座長:杉本振一郎(八戸工業大学)
13:30-14:00 「高周波パワエレ回路用磁気部品設計のための電磁界解析」
佐藤佑樹(青山学院大学)
近年、数百Hz帯からMHz帯の高周波で駆動するパワーエレクトロニクス回路が開発されている。これに伴い、回路内で使用される磁気部品にも高周波での駆動が求められ、その設計方法の最適化が重要となっている。本発表では、高周波駆動を目的とした磁気部品の設計において、電磁界解析手法や等価回路生成法に関するアプローチについて講演を行う。
14:00-14:30 「二つの二領域問題の静磁場解析」
金山寛(日本女子大学)
最初の問題で、シュアコンプリメト行列が正定値になることを保証する一つの定理の十分条件をみたさないこと、二つ目の問題でその定理の十分条件をみたすことを示す。
14:30-15:00 「アドバンシングフロント法による四面体メッシュ生成」
河合浩志(東洋大学)
アドバンシングフロント法に基づく3次元四面体メッシュ生成のアルゴリズムおよび実装詳細について説明する。
休憩
セッション6 座長:河合浩志(東洋大学)
15:30-16:00 「直交格子を用いた領域分割法の収束性向上の検討」
村山敏夫(東京大学)
直交格子によるモデル化で領域分割法を用いた場合の周波数特性に基づき、その収束性を向上させる取り組みについて説明する。
16:00-16:30 「多面体要素を用いた不完全BDD法と静磁場問題への適用」
田上大助(九州大学)
静磁場問題にBDD法を適用する際, 定義通りに疎空間を構成するとその次元が大きくなり計算効率の向上に繋がらない. そこで部分領域を1つの要素と見做した多角形要素を用いて疎空間を近似したマルチグリッド型の手法を導入することで, その次元を低減する試みを紹介する.
16:30-17:00 「Full-wave電磁界解析に適用する反復法の悪収束性改善に向けた戦略」
武居周(宮崎大学)
Full-wave電磁界解析は,解くべき方程式そのものに不定性はないものの,行列の固有値がゼロ近傍に集中し,悪条件になることが知られている.この悪条件行列の,共役勾配法等の反復法による求解に向けたいくつかの戦略について展望を含め述べる.
17:00- 「自由討論」
実行委員会:
武居周(宮崎大学) ※ 実行委員長
田上大助(九州大学)
杉本振一郎(八戸工業大学)
荻野正雄(大同大学)