第6回
大規模電磁界数値解析手法に関する研究シンポジウム
(LSCEM2023)
目的:
回転機やMRIなど電気機器・電子デバイスの開発設計,携帯電話や医療機器における生体電磁環境問題など,電磁場解析の需要が高まっています.特に,有限要素法やFDTD法を用いた数値シミュレーションが学術研究や設計現場において活用されています.本シンポジウムは,計算電磁気学の学術研究や産業応用を推進することを目的とし,高性能計算,電気機器解析,計算科学など様々な分野の研究者が集まり,将来に向けて計算電磁気学に関連する解決すべき諸問題について討論するものです.
本シンポジウムは,科研費研究「電磁場・固体連成解析のハイケーパビリティ計算を実現する数値計算法」(研究代表者:荻野正雄),科研費研究「超音波スピーカの音場設計に向けた波動音響―流体並列連成計算に基づく非線形音響解析」(研究代表者:武居周),および科研費研究「発見的数値解析利用を実現する並列分離型連成フレームワークの創成」(研究代表者:吉村忍)の研究成果報告を兼ねています.
日時:
2023年2月22日(水)-23日(木)
会場:
八戸ポータルミュージアム はっち 2階 シアター2
(青森県八戸市三日町11-1) (対面とオンラインのハイブリッド)
※ コロナ禍の状況によっては,完全オンラインに切り替えます
参加費:
無料
プログラム:
2月22日(水)
セッション1 座長:武居周(宮崎大学)
13:30-14:00 「辺要素高周波電磁界解析における問題と解決のための考察」
村山敏夫(東京大学工学系研究科)
辺要素を用いた電磁界解析では、行列の条件数が悪化するため、反復解法における収束性が課題となっている。その解決策として、発表者は節点パッチ前処理を提案しているが、さらに領域分割法を応用することでより効率的な近似解を求めることができる可能性を検討する。
14:00-14:30 「高精度と高速性を両立する人体内静電界解析のための研究」
野村政宗(秋田工業高等専門学校)
数値人体モデルを用いた静電界解析では、階段状の異材境界付近で電界強度が過大に評価される階段近似誤差がある。この誤差を軽減するため、本研究ではマーチングキューブ法とラプラシアスムージングを取り入れるメッシュスムージングの開発を行う。また、本メッシュスムージングによる計算時間の増大に対応するため、混合要素メッシュに対する幾何マルチグリッド(GMG)法を適用する。本モデルの一部を対象として、静電界解析を実行したところ、階段近似誤差が軽減されていることを確認し、GMG法は前処理付きCG法の最大で1/15の計算時間を実現することができた。また、スムージングによる高精度化は、GMG法の収束性改善につながることが分かった。
14:30-15:00 「ミリ波伝送線路のFDTD解析とミリ波バンドパスフィルタの設計」
伊藤桂一(秋田工業高等専門学校)
ミリ波伝送線路の代表格は導波管であるが,一般に重く,形状の自由度は少ない。小型軽量化が実現でき,分岐や曲がりなどの試作も容易な伝送線路として,誘電体線路に着目した。本研究では誘電体を利用した伝送線路の可能性について明らかにすることを目的として,FDTD法を用いた解析を行った。また,ミリ波部品の一つである導波管バンドパスフィルタを3Dプリンタとメッキを用いて試作するためにFDTD法と遺伝的アルゴリズムを用いた設計を行った。
休憩
セッション2 座長:塩谷隆二(東洋大学)
15:15-15:45 「大規模電磁場解析向け反復法における前処理の並列化手法に関する検討」
桝井晃基(大阪大学)
電磁場問題向けの反復法における前処理としては,収束性改善の観点からIC前処理が広く使われているが,データ依存が存在するため基本的には逐次計算となる.
これに対し,行列の要素の並べ替えやブロック化により並列化を実現している研究例があるが,これらは実数問題に対する例しかなく,複素数問題,特に大規模電磁問題に適用したときの並列化効率や収束性の評価は不明である.
そこで,今回は並列化に関する先行研究を示しつつ,電磁場問題に対する新たな手法についても説明する.
15:45-16:15 「領域分割法に基づく大規模構造解析の性能ベンチマーク」
河合浩志(東洋大学)
領域分割法(DDM)を用いた大規模な構造解析について、その性能ベンチマークを行った。ワークステーションやPCクラスタ、スパコンなどで計測した結果について報告する。
16:15-16:45 「Flow-driven piezoelectric energy harvesterの連成解析
」
金子栄樹(東京大学)
休憩
セッション3 座長:金子栄樹(東京大学)
17:00-17:20 「AIと画像認識を用いたARコンテンツ生成」
岡谷夏実(東洋大学 大学院)
AR(拡張現実)により情報の拡張的な表示・更新が可能である。AIによる形状判断と画像認識による特徴点抽出結果を用いることで、表示内容を自動生成しARとして表示するシステムの開発を行った。これを数学の空間図形学習に活用し、紙面に描かれた空間図形をスマートフォン等のカメラで撮影することで、認識した内容に基づいた3Dモデルを生成し、ARとして表示する。またこれを標識ピクトグラムのARモーショングラフィックス化へと活用する。
17:20-17:40 「Predicting human body structure of anime characters using GANs」
劉思涵(東洋大学)
17:40-18:00 「Cultural Analyzation of Myanmar Ethnic group by the Artificial Intelligence technologies」
KO KO AUNG (Toyo University)
Myanmar cultures have been analyzed with Convolutional Neural Network and Self-Organizing Maps.CNN preforms recognization and SOM performs clustering. A result map shows Burmese homogeneous cultures.
技術交流会:
日時:2月22日(水) 19:00-21:00
場所:割烹 萬鱗(031-0081 青森県八戸市柏崎1-1-41)
参加費:\2,500 (税・サービス料込)
2月23日(木)
セッション4 座長:田上大助(九州大学)
09:15-09:45 「SOMを用いた油入変圧器の内部故障予測」
鄭宏杰(東洋大学)
近年AIの技術は急速な発展に伴い各分野に応用され,AI技術を受変電設備診断システムにも活用されている.そこで本研究では自己組織化マップ(Self-Organizing Map(SOM))を用いて実機の変圧器の内部異常診断を適用する.
09:45-10:15 「2次元静磁場問題に対するPhysics-Informed Neural Networksの適用」
荻野正雄(大同大学)
近年,機械学習分野においてPhysics-Informed Neural Networks (PINNs)と呼ばれる物理法則を考慮した学習手法が注目されている.ここで,Maxwellの方程式から導出される静磁場問題は,定式化として磁気ベクトルポテンシャルを未知数とするA法,空間離散化として辺要素を用いた有限要素法が広く利用されている.また,古典的定式化として磁場Hを未知数とするH法も存在する.本研究は,A法とH法それぞれの定式化による偏微分方程式の境界値問題に対してPINNsを適用した結果について報告する.
10:15-10:45 「サブボクセルを用いたローカル予測器の高精度機械学習手法」
和田義孝(近畿大学)
大規模計算の結果を用いて機械学習を成立するためには、内在していると期待される偏微分方程式の関係を陰に構築されればよい。このアプローチの正しさは、過去に溶接シミュレーションにおいても実施した。一方で、高精度予測のために熱流体を対象に本アプローチの体系化を目指す。本アプローチの利点は、大規模ないくつかの計算結果があれば予測器を生成できることである。
休憩
特別講演 座長:杉本振一郎(八戸工業大学)
11:00-12:00 「非侵襲/分離型解法と大規模並列計算力学シミュレーション」
吉村忍(東京大学)
現実世界の様々な複合力学現象を、並列計算機上で効率的に解析するためには、個別力学現象用大規模シミュレーションと他の解法をうまく連携して活用することが必要である.本講演では、ADVENTUREの各ソルバー等と非侵襲/分離型解法に基づく、流体構造連成(FSI)解析、流体構造制御連成(FSCI)解析、不確実性定量化(UQ)解析について紹介する。
昼休み(拡大実行委員会)
話題 「大規模並列電磁界解析の新実装」
杉本振一郎(八戸工業大学)
セッション5 座長:荻野正雄(大同大学)
13:15-13:45 「クリロフ部分空間法の数理」
曽我部知広(名古屋大学)
クリロフ部分空間は線形方程式や固有値問題の数値解法に役立つ。本講演ではクリロフ部分空間法の基礎を説明し、講演者とその共同研究者がこれまで開発してきた数値解法(線形方程式用・固有値問題用)を簡単に紹介する。
13:45-14:15 「離散de Rham系列を満たす多角形要素で疎空間を近似した不完全BDD法」
田上大助(九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所)
静磁場問題にBDD法を適用する際, 定義通りに疎空間を構成するとその次元が大きくなり計算効率の向上に繋がらない. そこで部分領域を1つの要素と見做した離散de Rham系列を満たす多角形要素を用いて疎空間を近似することで, その次元を低減する試みを紹介する.
14:15-14:45 「Yao’s Preconditioner of the Interface Problem for Viscous Flow Domain Decomposition Analysis」
金山寛(日本女子大学)
講演概要ADVENTURE_sFlowで用いられているYaoのアプローチに対し定常Stokes問題に限定して1つの正当化を与える。
実行委員会:
杉本振一郎(八戸工業大学) ※ 実行委員長
武居周(宮崎大学)
荻野正雄(大同大学)
田上大助(九州大学)
問い合わせ先:
LSCEM2023実行委員会 杉本振一郎