第5回

大規模電磁界数値解析手法に関する研究シンポジウム

(LSCEM2022)

目的:

回転機やMRIなど電気機器・電子デバイスの開発設計,携帯電話や医療機器における生体電磁環境問題など,電磁場解析の需要が高まっています.特に,有限要素法やFDTD法を用いた数値シミュレーションが学術研究や設計現場において活用されています.本シンポジウムは,計算電磁気学の学術研究や産業応用を推進することを目的とし,高性能計算,電気機器解析,計算科学など様々な分野の研究者が集まり,将来に向けて計算電磁気学に関連する解決すべき諸問題について討論するものです.

本シンポジウムは,科研費研究「電磁場解析のエクストリームスケール・コンピューティングを実現する高速数値解法開発」(研究代表者:荻野正雄)の研究成果報告を兼ねています.

日時:

2022年3月4日(金)~5日(土)

会場:

八戸工業大学 メディアセンター 会議室(対面とオンラインのハイブリッド)

参加費:

無料

プログラム:

3月4日()

13:30-13:35 「開会の挨拶」 杉本振一郎(八戸工業大学)


セッション1 座長:荻野正雄(大同大学)

13:35-14:05 「並列有限要素マイクロ波解析

武居周(宮崎大学)

これまでFDTD法が多用されてきた1GHz超のマイクロ波帯域において,我々が開発を推進している領域分割法に基づく並列Full-wave電磁界解析の有効性について,電子レンジ内部の電磁界解析等の数値例を提示しながら述べる.


14:05-14:35 「階層型領域分割法による並列電磁界-熱伝導連成解析

杉本振一郎(八戸工業大学)

階層型領域分割法を用いた並列電磁界-熱伝導連成解析について現状を概説するとともに,今後の展望について述べる.


14:35-15:05 「離散de Rham系列を満たす多角形要素を用いた電磁場問題の数値計算の基礎

田上大助(九州大学)

電磁場問題の数値計算では,方程式が持つ数学 (微分幾何学) 的構造を考慮した離散化手法が必要となる.本講演では,例として離散de Rham系列を満たす有限要素として知られる多角形要素を取り上げ,その基礎を紹介する.


休憩


セッション2 座長:武居周(宮崎大学)

15:20-15:50 「A Revised Sufficient Condition for Positive-definiteness of the Coarse Matrix in BDD-DIAG of a Perturbed Magnetostatic Problem」

金山寛(日本女子大学)

静磁場の摂動問題に対するBDD-DIAGのコース行列の正定値性に対する十分条件を見直す。


15:50-16:20並列有限要素法のための領域分割法とBDD前処理

荻野正雄(大同大学)

領域分割法は有限要素法の並列計算に適したアルゴリズムで構成されており,さらにBDD法やFETI法など高い収束率が期待できる前処理が開発されたことで,幅広く実用されている.本講演では,古典的領域分割法からBDD法までを振り返る.


16:20-16:50 「メニーコア環境におけるスカイラインソルバーの前進消去後退代入の高速化

河合浩志(東洋大学)

スカイラインソルバーは直接法ソルバーのなかでも中小規模の問題に対しよく用いられ、またスパコン上での超大規模解析においても、前処理などの実装でキーコンポーネントとして部分的に用いられることも多い。本研究では、行列を分解した後に求解過程で行われる前進消去後退代入の実装に関して、近年普及しつつある、多数のコアを搭載したスカラープロセッサ上での性能最適化について説明する。

技術交流会:

ハイブリッド開催ですので,講演終了後の議論・雑談にて代えさせていただきます.

3月5日(土)

セッション3 座長:杉本振一郎(八戸工業大学)

09:30-10:00高速性と高精度を両立する大規模人体電磁界解析

○武居周,野村政宗(宮崎大学)

数値人体モデルの異材境界の階段近似による数値誤差を軽減するため,マーチングキューブ法に基づくメッシュスムージングを導入した.その結果,階段近似による数値誤差を緩和させることができた.また,非構造格子向け幾何マルチグリッド法ソルバによる数値例を示すことに成功した.


10:00-10:30溶接シミュレーションの温度場・変位場の学習・予測手法の提案

和田義孝(近畿大学)

溶接シミュレーションは1つの解析ケースに膨大なデータが含まれるが、ケース数を多く学習のためのデータとして準備することは非現実的である。そこで、本研究では極めて少数の解析ケースに含まれる膨大なデータから時間発展問題における溶接シミュレーションの代替モデル構築手法を提案する。ローカルルールの学習を行うことで解析領域全域の予測が可能化を示す。また、予測精度達成のための二段階予測器と物理法則に基づいたスムージング前処理について紹介する。


10:30-11:00大規模高速電磁界解析に関する技術検討 ~企業における電磁界解析の活用と期待~

村山敏夫

(ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ株式会社)

電子機器設計における電磁界解析の有効性と今後の期待について具体的な事例をもとに説明します


休憩


セッション4 座長:田上大助(九州大学)

11:15-11:45 「電磁場解析システムADVENTURE_Magneticにおける反復法の前処理について」

桝井晃基(大阪大学)

高周波電磁場問題における反復法の前処理について,フィルインを考慮しない従来のIC(0)に比べ,フィルインを考慮したIC(1)を適用した結果,収束性が改善および計算時間が短縮したという結果が数値実験により得られた.これを受けて,実際の解析システムであるADVENTURE_MagneticにIC(1)前処理を適用した時の性能評価を示し,その有用性について検討する.


11:45-12:15特殊行列(テンソル和)についての情報共有

曽我部知広(名古屋大学)

楕円型偏微分方程式を差分法で離散化するときに得られる行列は、境界条件にもよるが特殊行列(テンソル和)の構造を持つことがある。この構造は大変性質が良く、固有値や連立一次方程式の解を容易に求められることがあるので、このテンソル和に関する情報共有を行いたい。(前処理などに使えるかどうかも含めて議論できれば幸いです。)


12:15-12:20閉会の挨拶」 田上大助(九州大学)

実行委員会:

    • 杉本振一郎(八戸工業大学) ※ 実行委員長

    • 武居周(宮崎大学)

    • 荻野正雄(大同大学)

    • 田上大助(九州大学)