第2回大規模電磁界数値解析手法に関する研究シンポジウム(LSCEM2019)
目的:
回転機やMRIなど電気機器・電⼦デバイスの開発設計,携帯電話や医療機器における⽣体電磁環境問題など,電磁場解析の需要が⾼まっています.特に,有限要素法やFDTD法を⽤いた数値シミュレーションが学術研究や設計現場において活⽤されています.本シンポジウムは,計算電磁気学の学術研究や産業応⽤を推進することを⽬的とし,⾼性能計算,電気機器解析,計算科学など様々な分野の研究者が集まり,将来に向けて計算電磁気学に関連する解決すべき諸問題について討論するものです.
本シンポジウムは,科研費研究「並列連成解析⼿法による⾼精度な温熱療法シミュレーションの実現」(研究代表者:武居周)並びに科研費研究「電磁場解析のエクストリームスケール・コンピューティングを実現する⾼速数値解法開発」(研究代表者:荻野正雄)の研究成果報告を兼ね,また,⽇本機械学会計算⼒学部⾨研究会「A-TS01-19電磁流体解析関連技術研究会」の共催,電気学会九州⽀部の協賛により開催します.
日時:
2019年3月9日(土)〜10日(日)
会場:
3月 9日(土) 宮崎観光ホテル「ブリリアントホール」 (宮崎県宮崎市松山1丁目1−1)
3月10日(日) 宮崎大学まちなかキャンパス「セミナースペース」 (宮崎市橘通東3丁目4−36 村武ビル)
参加費:
無料
プログラム:
3月9日(土)
13:00~13:05 「開会の挨拶」 武居周(宮崎大学)
セッション1 座長: 杉本振一郎(八戸工業大学)
13:05~14:05 基調講演1「電磁界解析におけるモデル縮約と均質化」五十嵐一(北海道大学)
電磁界解析の高速化手法である,モデル縮約法と均質化法について最近の進展について報告する.モデル縮約法については,固有直交分解法,Padé via Lanczos法の原理と電磁界解析への適用について述べ,つぎにLanczos過程を基礎として電磁界のCauer等価回路を導くCauer via Lanczos法について述べる.均質化法については,複素透磁率とOllendorffの式を用いた半解析的法による多重巻き線の解析について述べる.さらに,モデル縮約法と均質化法を結合した方法について紹介する.
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14:05~14:15 休憩
14:45~11:20 「シフト複素対称線形方程式の数値解法について」曽我部知広(名古屋大学)
右辺ベクトルが固定であり,係数行列のみが異なる複数の線形方程式の中で次の形 (A+ c_i I)x_i = b (i=1,2,...) はシフト線形方程式(Shifted Linear Systems)とよばれる.このシフト線形方程式に対してはクリロフ部分空間法が極めて効果的となる可能性のある問題クラスとして知られている.本発表では,シフト線形方程式の係数行列が複素対称行列の場合に,これまで行ってきた研究を簡単に紹介する.
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14:45~15:15 「ある静磁場問題に対するBDD前処理に関する検討」田上大介(九州大学)
Mandelによって提案されたBDD法が, 荻野らによる構造問題への適用を端緒に, 階層型領域分割法の前処理として有効であることが示されているのは周知の事実である.また近年では金山や講演者らによって, 電磁場問題への拡張が試みられている. 本講演では, 摂動項が付加された静磁場問題へのBDD法の適用や, より一般の形状に分割された部分領域の場合にも適用可能な仮想要素を用いた不完全BDD法などについて最近の検討を紹介する.
15:15~15:30 休憩
セッション2 座長: 荻野正雄(名古屋大学)
15:30~16:00 「アンテナ用誘電体レンズのトポロジー最適化と機械学習の援用に関する検討」伊藤圭一(秋田高専)
水位の高精度計測にミリ波ホーンアンテナが利用されており,レンズを装荷して高利得化できれば測定距離の改善が期待される。トポロジー最適化を用いたレンズ設計と,機械学習を援用する方法について報告する。
16:00~16:30 「階層型領域分割法による⼤規模並列電磁界解析」杉本振一郎(八戸工業大学)
階層型領域分割法を⽤いた⼤規模な並列電磁界解析について現状を概説するとともに,今後の展望について述べる.
16:30~17:30 (記念講演)「静磁場領域分割解析の⾮線形処理」金山寛(日本女子大学)
これまで10年近く調べてきた静磁場の領域分割解析について,ようやく⾮線形処理を語れる段階になってきた.これまでの経緯も踏まえて,⾮線形処理のアプローチ⽅法を紹介したい.
3月10日(日)
セッション3 座長: 武居周(宮崎大学)
10:00~11:10 基調講演2 「磁界解析の電磁機器への応用技術」村松和弘(佐賀大学)
磁界解析を各種電磁機器に応用する際,その成功例として,十分な解析精度が得られた場合の性能向上のための最適設計,解析と実測結果が異なった場合の新事実の発見,及び新しい手法を開発した場合の新現象の発見の3つのケースがある.本講演では,これら3ケースの具体例として,それぞれ,開口型磁気シールドルーム,磁気軸受,及び低損失・低騒音リアクトルの開発事例を示す.
11:00~11:10 休憩
11:10~12:00 討論会「電磁界解析技術のいまとこれから」モデレータ:武居周(宮崎⼤学),荻野正雄(名古屋⼤学)
電磁界解析の⼤規模・並列数値計算⼿法開発や,電気機器やアンテナ設計への適⽤技術は発展し続けており,さらにADVENTURE,UG4,ElmerやFreeFEM++など電磁界解析に対応したオープンソースソフトウェアも増えつつある.そのような⽇進⽉歩の中,電磁界解析技術のさらなる発展に向けて,活発で⾃由な討論を⾏いたい.
12:00〜13:20 ランチミーティング(科研費研究に関する研究打合せ)
セッション4 座長: 荻野正雄(名古屋大学)
13:20〜13:40 「並列幾何マルチグリッド法を⽤いた⼈体内電流密度解析」野村政宗(宮崎大学大学院修士課程2年)
数値⼈体モデルを⽤いた⼈体内電流解析の⾼速化の研究が⾏われており,ブロックICCG(BICCG)法が有効だとされているが,解析規模に対する拡張性が低いという問題点もある.そこで本研究では,新ソルバーとしてマルチカラーオーダリング(MC)付き幾何マルチグリッド(GMG)法に注⽬している.実際に本解析に対し,MC付きGMG法の実装を⾏ったところ,BICCG法よりも,計算時間を約7割近く削減することができ,本解析に有効であることが分かった.
13:40~14:00 「部分領域問題に直接法を用いた渦電流解析の性能評価」水間健仁(宮崎大学大学院 博⼠課程2年)
A-φ法に基づく渦電流問題に領域分割法を適用した際の,部分領域問題で解くべき連立一次方程式には特異性が含まれる.一般には共役直交共役勾配法などの反復法がソルバとして用いられるが,丸め誤差の蓄積により高精度化が困難である.本研究では,Moore-Penroseの一般逆行列を用いた直接法を部分領域ソルバとして適用することによる高性能化を検討している.発表では,いくつかの数値実験により提案手法の効果を述べる.
14:00~14:20 「複素対称線形⽅程式に対する反復法の前処理⼿法に関する検討」桝井晃基(名古屋大学大学院 博⼠課程2年)
辺要素有限要素法による時間調和渦電流解析や⾼周波電磁場解析などで得られる複素対称線形⽅程式の解法として前処理付きの反復法がよく⽤いられている.前処理⼿法として不完全コレスキー分解(IC)前処理がよく知られているが,⼤規模問題に対してIC前処理のフィルインを考慮して性能評価を⾏っている研究例は多くはない.そこで今回は中規模から⼤規模な問題に対して性能評価を⾏い,フィルインの有効性について検討する.
14:20~14:40 「LSTMによるヒステリシスループの挙動予測」和田義孝(近畿大学)
応力ひずみ関係を表す構成式は多くの種類が提案されており実用上にも利用されている.一方で,その精度や適用できる範囲が限られており,より高精度かつ簡便にパラメータが決められる方法が望まれている.本研究では,時系列ニューラルネットワークであるLSTMを用いて荷重ヒステリシスループの表現が可能かどうかを調査した.
14:40~15:00 「電磁場解析とHPC(4倍精度,線形代数ソルバーなど)」河合浩志(東洋大学)
電磁場解析をはじめ近年の⼤規模数値シミュレーションにはHPC環境の利⽤が不可⽋となっているが,ハードウェアアーキテクチャの複雑化に伴いその効率的な実装はますます困難になりつつある.本発表ではシミュレーションコード内で多⽤される各種線形代数ソルバーの最先端HPC環境における性能評価,特に4倍精度演算を導⼊した場合の実装を中⼼に説明する.
15:00~15:05 「閉会の挨拶」 荻野正雄(名古屋大学)
15:10 閉会・解散
技術交流会:
日時: 3月9日(土) 18:00〜20:00
場所: 宮崎観光ホテル「汐彩」
実行委員会:
荻野正雄(名古屋大学)
武居周(宮崎大学)※実行委員長
杉本振一郎(八戸工業大学)
問い合わせ先:
LSCEM2019実行委員会 武居周