論文を書くだけなら英語で十分な時代になりました。しかし、いまだにペーパーワークの多くは日本語の文章で、しかも印刷して提出しないといけません。以前e-ptexを作成した開発者と計算数学を同じくすることができましたが、「このままいくと、日本語環境は海外に飲み込まれてしまうんだろうな」という危機的な状況を報告してくれました。実際、その当時のiBusからfcitxにLinuxの標準的な日本語環境は移行しています。
このサイトでは、「wime」のインストールをMathLibre/Debianなどで実行する際の具体的な手順を報告することで、日本語環境構築の一助になればと思います。
1.基本的に必要になるコマンド
MathLibre 2018/Debianの場合ですので、Debian系列では基本同じですが、微調整が必要になる場合があります。
sudo apt-get install libc6-dev-i386
sudo dpkg --add-architecture i386
sudo apt-get update
sudo apt-get install wine32:i386
これで、必要最小限の環境はそろいました。
sudo apt-get install libwine*
sudo apt-get install libcanna1g-dev
sudo apt-get install libx11-dev
sudo apt-get install libgtk-3-dev
これから、wimeのコンパイルに必要な環境を整えます。
sudo apt-get install wine32-tools*:i386
sudo apt-get install libgtk2.0-dev
なお、libgtkは、32ビット環境が必要になる場合があります。これは、wimeをインストールした後でも入れ替えが可能です。wimeのインストールは、
WINEDIR=/usr make
sudo WINEDIR=/usr make install
regeditコマンドで、at2015.regの内容をバージョンごとに修正してレジストリを書き換える。(regedit at2017.reg)
ですが、imm32.dll.soの32ビット版と64ビット版が必要になるので、これがないばあいは、2の手順を踏んでimm32.dll.soをコンパイルで作る必要があります。なお、ディストリビューションのwineは推奨されないので、いずれにせよwine high qualityを使う必要が出てきます。
2.Wine HQ
winehqのページから、開発版か安定版のWineを導入する。
sudo apt-get install libx11-dev:i386
sudo apt install libfreetype6-dev:i386
sudo apt-get install libjpeg-dev:i386
cd
cp wime-4.0.0/patch/* ~/
patch -p0 < imm-magic-1.7.3
patch -p0 < transmsg-3.8
cd wine-5.10
./configure
make
sudo make install
(WINEのインストールは時間がかかるようで、マルチスレッドmake -j8には対応していないようである。必要に応じて、winetricksでfake-japaneseフォントなどを導入する。)
WINEDIR=/usr/local make
sudo WIINEDIR=/usr/local make install
sudo apt-get install scim-canna
sudo im-config (SCIMを設定する)
sudo apt-get remove *uim*
ATOKのインストールはmsiexec /iで32ビット版のmsiを指定して、実行するとよいようです。必要に応じて、rm -r ~/.wineで再インストールして、winecfgでWindows 7を指定するとよいようです。
3. WSL2 (Windows Subsystem in Linux)
WSLではできなかったELF32(32bit版のWindowsバイナリファイル)の利用がWSL2ではできるようになりました。この結果、wineをソースファイルからビルドができるようになりました。wineのコンパイルは、上記2に加えて、「sudo apt-get install libkrb5-dev openssl flex bison pkg-config」などが必要になります。なお、X410やTightVNCなどでX環境を呼び出すだけでは足りずに、/etc/resolv.confのネームサーバーを参考に、export DISPLAY=○○:0.0(X410)またはexport DISPLAY=:1.0(TightVNC)を設定して、X環境のファイアーウォールを解放してあげる必要があります。lxsessionなどを使って、X環境にメニューバーなどを導入しないと、LXTerminalなどの実行はbashからだと厳しいと思います。この環境ではscim-setupがエラーなく実行できます。wime -e atokの実行には、「sudo apt-get install libgtk2.0-dev:i386」と関連パッケージが必要になります。