生殖時補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律の成立に対する声明
生殖時補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律の成立に対する声明
2021年2月8日
精子・卵子の提供により生まれた人のためのライフストーリーワーク研究会
私達は、自身の出生の経緯について悩んでおられる、精子・卵子の提供により生まれた人をライフストーリーワークの手法を用いてサポートする方法について検討しているグループです。
2020年12月4日に「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」が成立しました。この法律では、提供精子・卵子を用いた場合の法的親子関係について規定され、子を生んだ人が母、その夫が父と定められました。しかし、精子提供や卵子提供の実施条件については何も定められておらず、生まれた子どもの出自を知る権利(提供者を知る権利)の規定もありません。付則に検討事項として、「他人の精子又は卵子を用いた生殖補助医療の提供を受けた者、当該生殖補助医療に用いられた精子又は卵子の提供者及び当該生殖補助医療により生まれた子に関する情報の管理、開示等に関する制度の在り方」について、「おおむね2年を目途として、検討が加えられ、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置が講ぜられるものとすること」と記されるにとどまっています。
私たちはこの法律で、子どもの出自を知る権利を擁護する視点が明記されず検討課題とされたことについて、大変憤りを感じています。これまで、医療者や親になった人たちが、子どもがこの医療で生まれたことを秘密にしてきました。出生について、秘密にされ、また、提供者を知りたいと思っても知ることのできない状況は生まれた子どもを生きづらい状態にさせています。人工的に生命を誕生させるならば、子どもが幸せに生きる権利を確保した医療をスタートさせることが必要ではないでしょうか?
人間の根源的なルーツを知る権利は生命誕生の土台であり、生まれた子どもたちの提供者を知りたいという気持ちに寄り添ってこそ、家族も幸せになれるのではないでしょうか?
私たちはこの「2年を目処とした」議論を通し、「子どもの出自を知る権利」が実現されるよう訴えていきたいと思います。
代表 才村眞理(連絡先;saimura@tezukayama-u.ac.jp)