12月20日10:00ー12月22日17:00

超伝導研究の発展と広がり

基礎物理学研究所 湯川記念館 パナソニック国際交流ホール

概要

超伝導体は純粋に量子力学的な自由度が自発的に破れたマクロな世界を生み出し,その認識は物理学の自然観を塗り替えるに至っている。そして,超伝導研究の歴史において,数々の発見が物性科学を深化させるとともに,様々な分野に波及してきた。例えば,銅酸化物高温超伝導体の発見は,室温超伝導実現への期待を強く後押しするとともに,その発現機構をめぐって強相関量子多体系の研究を強く推進する原動力ともなった。これまでに,鉄系超伝導体,重い電子系超伝導体,分子性固体等々,多彩な強相関超伝導体が開拓され,電子相関由来の非従来型超伝導の研究は着実に積み重ねられてきた。最近では,超高圧下の水素化合物で室温付近での超伝導が実現されており,高温超伝導に向けて強相関超伝導体とは別のルートも見出されている。また,従来から物質相の分類に用いられてきた対称性の情報に加えて量子力学的トポロジーにより量子凝縮相を特徴づける近年の試みが成功を収め,トポロジカル物質という概念が確立した。なかでも超伝導体は,対称性,トポロジー,超伝導発現機構,非自明な電子状態,など量子多体系の基礎概念が絡み合う舞台となっている。さらにその応用面に目を向けると,トポロジカル量子計算の実現に向けてトポロジカル超伝導体の研究は激しい国際競争の対象となっている。 

 

このように多様な観点から超伝導体の研究が進められており,さらには超伝導との縁が薄かった分野をも巻き込みつつ進展している。例えば,近年のナノテクノロジーの発展により純良な二次元電子系が作成され,超伝導研究の重要な舞台となっている。また,高強度の光技術が低エネルギーの物性研究にも適用可能となったことにより,光と物質の結合系における超伝導現象も重要な研究対象になった。我々が生きる3次元世界の制約から解き放たれたこれらの超伝導体では,超伝導ダイオード効果,超伝導ヒッグスモード,光誘起超伝導など,いくつもの新奇な超伝導現象が観測されている。これらの発展を振り返ってみると,圧力,磁場,元素置換など従来からある物理パラメーターに加えて,電流や光といった新しい物理パラメーターが超伝導現象を豊かにしていることがわかる。前者は静的な物理パラメーターであるのに対し,後者は動的な物理パラメーターである。したがって,非平衡状態を用いた超伝導相制御への道が拓かれつつあり,超伝導研究と非平衡物理学の接点が生まれている。 

 

数々の新超伝導体が発見されたことはさらにこの数年の超伝導研究を後押ししている。例えば2層グラフェン、カゴメ超伝導体、重い電子系超伝導体UTe2 は様々な自発的対称性の破れが起こる強相関超伝導体である。これらに加えて,上で述べた人工的な超伝導体も非従来型超伝導体やトポロジカル超伝導体の新しい舞台として注目を集めている。以上のような背景のもと,クーパー対凝縮,対称性,トポロジー,非自明な電子構造,電子相関効果,非平衡現象、といった超伝導体を舞台とした基礎概念の進展とそれが相互作用する様々な学問分野を俯瞰し,互いに交流する機会を持つことは,超伝導研究が今後進むべき道を探る上で重要である。そこで,各分野で世界最先端の研究成果を挙げている研究者を集め,最新の研究成果について討論することは,超伝導研究の第一線で活躍する研究者はもとより,若い大学院生にとっても大いに刺激になるものと期待される。研究会は,招待講演者による口頭発表に加え,一般申し込みによる口頭発表とポスター発表を行う。原則として対面形式で行う予定である。 


日程・会場

日程:2023年12月20日 10:00-12月22日 17:00

会場:基礎物理学研究所 湯川記念館 パナソニック国際交流ホール

交通案内

北部構内地図(地図上では11で記載されています。)


Invited Speaker

浅場智也

石田憲二

岡本佳比古

小野輝男

河村光晶

酒井宏典

榊原寛史

芝内孝禎

大同暁人

高野義彦

田財里奈

橋本顕一郎

藤本聡

森本高裕

吉田賢市


世話人

栁瀬 陽一 (京都大学)

池田 浩章 (立命館大学)

有田 亮太郎 (東京大学)

大野 義章 (新潟大学)

紺谷 浩 (名古屋大学)

佐藤 昌利 (基礎物理学研究所)

遠山 貴巳 (東京理科大)

松田 祐司 (京都大学)

黒木 和彦 (大阪大学)