佐伯 高志 (兵庫県)
柔道大会中に発生した右肘関節側方脱臼(内側)の症例を報告する。
受傷直後に徒手整復を行い、翌日から自動運動・電療を開始し、早期回復を目指した。
9日目の画像診断で内側側副靭帯断裂と尺骨鈎状突起の剥離骨折が判明したが、
適切な固定と段階的な運動療法により 8週で柔道復帰 が可能となった。
柔道では上肢外傷が多く、肘関節脱臼は比較的まれだが重症化しやすい。
過去にも同部位を負傷した経験があり、今回は 早期機能回復 を目的として経過を記録。
整復後の固定・電療・運動療法の組み合わせが回復にどう影響したかを検討する。
44歳 男性
柔道試合中、内股で投げられた際に手を突き受傷
右肘関節側方脱臼(内側)
内側部の膨隆・圧痛
屈伸制限
手指の運動制限・痺れなし
受傷直後に徒手整復(図1・図2)
翌日:疼痛の出ない範囲で自動運動開始
2日目:電療開始
4日目:摘まみ動作が可能、外観差あり(図3)
6日目:回内・回外の痛み軽減、業務再開
8日目:夜間痛出現→翌日には軽減
9日目:X-P・エコーにて
内側側副靭帯断裂
尺骨鈎状突起の剥離骨折(図4)
13日目:皮下出血消失、キャスト包帯を副子化し三角巾固定
4〜6週目:屈伸痛・手を突いた際の痛みが段階的に軽減
8週目:柔道練習再開
受傷4日目 → 13日目
皮下出血は広範囲 → 消失
最大伸展位・最大屈曲位の変化(図5・図6)
超音波画像
9日目:出血により不鮮明
116日目:回復し鮮明化、一部に残存出血(図7)
腫脹
自発痛(+)
屈伸時運動痛(+++)
内側圧痛(++)
外側圧痛(+)
外反ストレステスト陽性
自動運動:手指(翌日〜)、前腕(7日目〜)
手技・他動運動:17日目〜
電療
2日目〜:微弱電流
16日目〜:微弱電流+超音波骨折治療器
17日目〜:干渉電流+超音波骨折治療器
固定
13日目:キャスト包帯を副子化し三角巾固定
肘関節脱臼は後方脱臼が多く、側方脱臼はまれ。
受傷状況から、手を突いた後に相手の体重が加わり、
過伸展 → 内側転位 が生じたと推察される。
本来は3週間のギプス固定が望ましいが、外観観察を優先し三角巾固定のみとした。
関節拘縮を避けるため早期運動を行ったが、結果的に良好な予後が得られた。
ただし、自己判断による早期復帰はリスクがあり、反省点として今後に活かす必要がある。
初期固定の遅れや早期復帰にもかかわらず、合併症なく治癒した。
適切な整復・段階的運動療法・電療の組み合わせが回復に寄与したと考えられる。
今後は、標準的な固定期間を遵守しつつ、柔道救護の現場経験を施術に活かしていく。