西尾 勝彦 (奈良県)
顎関節脱臼は高齢者に多く、ヒポクラテス法(口内法)では整復に時間を要することがある。本報告では、口腔内に指を入れずに行う 口外整復法 を用い、整復がスムーズに行えた複数症例を提示する。
口外整復法は、術者・患者双方の緊張が少なく、痛みや恐怖心を軽減できる利点があり、高齢者の反復性脱臼にも有効であった。
顎関節脱臼は欠伸・咀嚼・薬の服用など日常動作で発生しやすい。
高齢者では反復性脱臼が多く、整復に時間を要するケースもある。
ヒポクラテス法(口内法)は一般的だが、患者の恐怖心や術者の負担が大きい。
本研究では、口外整復法の有効性と安全性 を症例を通して検討する。
85歳 女性
両側顎関節脱臼
原因:欠伸
整復:ヒポクラテス法(口内法)
経過:整復に2時間要した。過去にも長時間整復の既往あり。
その後、口外整復法を導入し、以降の8回の脱臼はスムーズに整復。
88歳 女性
右顎関節脱臼
原因:薬を飲むために口を開けた際
ヒポクラテス法では整復に時間を要した
口外整復法に切り替え、短時間で整復(図1・図2)
以降、反復性脱臼に対しても口外法で対応
75歳 女性
左顎関節脱臼
原因:餅つき中の欠伸
整復:口外法
経過:脱臼30分後に来院、3回通院で改善
23歳 女性
両側顎関節脱臼
原因:早朝の欠伸
整復:口外法(片側ずつ整復)
経過:2回通院
7年前にも右側脱臼の既往あり(図3・図4)
患者は坐位
術者は患者の後方に立つ
頭部を軽く固定
母指球を下顎体部に軽く押し当てる
下方へ軽く牽引するだけで整復可能
※口腔内に指を入れないため、患者の恐怖心が軽減される。
口外整復法は、術者・患者ともにリラックスしやすく、整復がスムーズに行える。
両側脱臼でも筋収縮が少なく、整復が容易であった。
高齢者では反復性脱臼が多く、
投石帯固定(2週間)や流動食指導 が再発予防に有効。
指先の細かい動作は2週間控えることで再脱臼を防止できる。
肩の筋疲労が脱臼の誘因となるケースもあり、全身の筋緊張管理が重要。
口外法は安全性が高く、特に高齢者の反復性脱臼に適した整復法と考えられる。
口外整復法は、
・整復への不安が少ない
・痛みが少ない
・整復時間が短い
という利点があり、反復性脱臼にも有効であった。
高齢者の複数症例で良好な結果が得られた。