中尾 了 (和歌山県)
橈骨遠位端骨折は高齢者に多い骨折であり、整復操作だけでなく 整復位を保持する固定法 が重要となる。本報告では、スダレ副子と枕子を用いた圧迫固定により、再転位を防ぎつつ良好な治癒経過を得た2症例を提示する。
症例1(76歳女性)と症例2(13歳女性)に対し、整復後にスダレ副子+枕子で圧迫固定を行い、いずれも可動域制限が少なく、日常生活・スポーツ活動への復帰が良好であった。
橈骨遠位端骨折は高齢者に多く、整復後の 再転位防止 が治療成績を左右する。
ギプスやキャストは固定力が強いが、圧迫管理や循環障害のリスクもある。
本研究では、スダレ副子+枕子による圧迫固定 の有用性を症例を通して検討する。
76歳 女性
左橈骨遠位端骨折
階段で転倒し左手を突いて受傷
フォーク背状変形、腫脹・圧痛著明、把握力低下
●整復
背臥位、肘90°、前腕回内位
助手が前腕近位部を把持
術者が対牽引 → 母指で末梢骨片を背屈
手関節掌屈・尺屈位で整復完了
●固定
スダレ副子を前腕近位〜MP関節まで
掌屈尺屈位を少し緩めて固定
中枢骨片掌側・末梢骨片背側に綿花を厚く配置し圧迫
三角巾で提肘
13歳 女性
右橈骨遠位端若木骨折+尺骨茎状突起裂離骨折
柔道練習中に右手を突いて受傷
腫脹・圧痛著明、把握力低下
●整復
症例1と同様の肢位
対牽引しながら両母指で直圧し整復
●固定
症例1と同様にスダレ副子+枕子で圧迫
三角巾で提肘
固定期間:5週間
固定除去後:自動運動 → 他動運動
掌屈に軽度制限残存
回内外は正常
ADL・IADLに支障なし
固定期間:4週間
固定除去後:自動運動 → 他動運動
可動域制限なし
柔道復帰も問題なし
スダレ副子はギプスより固定力は劣るが、枕子の位置と圧迫管理 により再転位を防止できる。
症例1では背屈転位がわずかに残存したが、枕子圧迫により再転位は防げた。
症例2では若木骨折のため再転位しにくいが、枕子圧迫で末梢骨片の背側転位が改善した。
高齢者では包帯の締めすぎによる循環障害(ズディック骨萎縮)に注意が必要。
スダレ副子は軽量で扱いやすく、圧迫調整が容易であり、症例に応じた柔軟な固定が可能。
スダレ副子+枕子による圧迫固定は、橈骨遠位端骨折の再転位防止に有用であった。
固定範囲・圧迫位置を適切に設定することで、ギプスに頼らず良好な治療成績が得られる。
今後も骨折型を見極め、整復・固定法を慎重に選択することが重要である。