藤本 広樹 (奈良県)
本症例は、ラグビー競技中に発生した 鎖骨骨折新鮮例 に対し、胸郭を張らせる整復肢位を用いた整復と、包帯・綿花を棒状にした枕子による圧迫固定を行い、良好な骨癒合を得た症例報告である。
整復後の再転位防止には、胸郭を広げた状態を維持する固定が有効であり、若年者では仮骨形成が旺盛で治癒経過も良好であった。
鎖骨骨折はスポーツ外傷として頻度が高く、整復と整復位保持が治療成績を左右する。
特に斜骨折では整復位保持が困難で、再転位を起こしやすい。
本症例では、胸郭を張らせる整復肢位と枕子による圧迫固定の有用性を検討する。
17歳 男性
ラグビー試合中にタックルを受け転倒し右肩を強打
初検日:2006年2月19日
右上肢挙上不能
腫脹なし
頸部を患側に傾ける姿勢
中枢骨片の明らかな突出(図1)
患者を臥位とし、脊柱と頭部に大きめの枕を敷く
胸郭をゆっくり広げるように術者が操作
胸郭が張れた状態で近位骨片・遠位骨片を整復
整復後、胸郭を張らせた肢位を維持することが重要
包帯(綿花)を棒状に丸めた 枕子を2本 用意
骨折部の上下を挟むように配置しテーピングで固定
胸郭が張れた整復肢位を維持するように固定(図2〜4)
入浴禁止、就寝時肢位指導、包帯交換指導を徹底
受傷後16日(3月7日)
軋轢音減少
X-Pで仮骨形成確認
受傷後37日(3月28日)
骨折部の骨硬化を触知
受傷後63日(4月23日)
X-Pで骨癒合確認(図5)
固定は経過に応じて徐々に軽度化し、日常生活動作の指導も併行した。
整復は「方法・手順を事前に落ち着いて考えておくこと」が重要。
固定も整復直後に適切に施せるよう準備しておく必要がある。
若年者は仮骨形成が旺盛で治癒が早い傾向がある。
横骨折は整復・固定が比較的容易だが、斜骨折は整復位保持が難しく再転位しやすい。
鎖骨骨折の固定では、
胸郭を張らせる肢位を維持することが予後に最も重要 と考えられる。
鎖骨骨折新鮮例に対し、胸郭を張らせる整復肢位と枕子による圧迫固定で良好な結果を得た。
若年者では治癒が早いが、第3骨片を伴う症例など難易度の高いケースもあるため、
柔道整復師が扱える症例を見極めることが重要。
今後も整復操作・固定法を慎重に選択し、経験を施術に活かしていく。