この記事は旧KUWV-BLOGから移植したものです。

2016年09月05日

鈴木です。屋久島から帰ってきてようやく暇になったので今更ですが記録上げます。遅くなってごめんなさい。もはや記憶が薄れつつあるのでもういろいろダメですが許して下さい。


さて、今回の山行は船形の鬼口沢下降、笹木沢遡行でした。ともに過去当部では行かれたことのなかった場所です。そもそも船形がどこにあるかというと宮城県と山形県の県境の真ん中あたり、JR仙山線の北側に位置しています。鈴木自身今回の山行を組んだ時に初めて名前を知りました。まあそんな感じのマイナーな山域ですが反面沢はなかなかいい場所でした。というわけで詳細は追記をどうぞ。一連の合宿という都合上part1の前川大滝沢が終わったところから話が続きますがご容赦ください。

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8/2 天気 快晴

米沢駅近くの最上川河川敷で自然起床。僕は橋の下に銀マを敷いて、他のみんなはテントで寝た。天気予報を確認したところ問題なさそうだったので17時に車を借りてアプローチすることにしてそれまでは自由行動とした。みんなが何をしていたかは知らないが僕は上杉神社に行ったり(これは単なる余談だが鈴木の母方の名字は上杉である)最近出来たばかりの米沢図書館に行ったり数少ない上場しているローカルスーパーチェーンであるヤマザワに行ったりしていた。山形は果物の品揃えが豊富でとてもうらやましいですね。あと芋煮コーナーの充実度に驚きました。山でも出来るはずなので誰か食当の方はチャレンジしてみては。

 そんなこんなで17時にまた集合して駅前のトヨタレンタカーで車を借りて現地に出発。part3以降のことも見据えて車は新庄で乗り捨てすることにした。車はシエンタだったのだがなぜかクラスがW1だった。京都ではP2なのでなんかすごい損した気分である。途中業務スーパーで買い出しして謎の中華料理屋で夕食を食べて22時頃0付地点の柳沢小屋に到着。小屋の中に囲炉裏があると聞いていて田舎の農家的なものを想像していた僕はかなりわくわくしていたのだが実際にあったのは薪ストーブのようなもので少しがっかりした。それで謎のマレーシア産のナンのような何かを焼いて食べたりしてから就寝。


8/3 天気 くもりのちはれ

4:30 起床

5:20 出発

5:48 入山

6:15 粟畑

7:00~15 仙交小屋跡で下降準備

8:10 鬼口沢に到着、下降開始

8:30~9:22 15m滝で懸垂下降

10:45 金吹沢出合

10:55~11:05 大倉川本流出合でレスト

12:47~57 笹木沢に到着、レスト

13:40 CS1


4時30分に起床。準備したり朝食を食べたりしたのち車に乗って登山口まで移動する。道は至ってきれいで有名でない山であっても良く手入れされている。登山口で車を転回して端っこの方に駐車して入山した。

 下降地点の仙交小屋跡まではしっかりした踏み跡のある登山道をのんびり歩く。ところどころぬかるみはあるが基本的には歩きやすい。途中粟畑という地名が出てくるが特に何もない。ブナの森に霧がかかってなかなか幻想的な風景であった。まあ晴れている方がもっときれいなんだけど。ブナの森に一番似合うのは木漏れ日だと思う。霧は次点。

 仙交小屋跡に着いたのち、10分ほど休んでから沢装備を身に着けて鬼口沢に向けて下降開始。最初は廃道の踏み跡を辿っていつもりだったが、気付くといつのまにかルンゼに入っていた。このままルンゼを下ると最後は崖になるのでそこからはコンパスを合わせて移動した。結局上手くいって懸垂下降無しで鬼口沢に降り立つことが出来た。下降の際、廃道はすぐによく分からなくなるので尾根を下るのが安定かもしれない。また、周りの風景を見た感じではもし崖に出て懸垂下降することになっても1ピッチで済むと思う。

 鬼口沢に降りてからは特に問題なく下降し、8時30分に懸垂下降予定となっていた15m滝に到着。見た感じ懸垂一択という感じの場所だった。右岸の立ち木に捨て縄がいくつかかけてあったので一番新しそうなものを使って懸垂下降した。支点の木は結構細かったので少し不安だった。ただ、辺りには他に懸垂下降に適した支点はなかったのでこの木を使うしかないだろう。下の方で一部空中懸垂になる本格的な懸垂だったが1回生も落ち着いてこなしてくれた。最後に僕が下り、ATCを解除してみんなのところに歩いていくと、下にカエルがいると言われた。見てみると木に擬態した真っ赤なカエルがいた。その後ATCが付いていたカラビナを見てみるとなんとATCがない…。わずか10mほどの間にATCがどこかに行ってしまった。辺りを探してみるが

見つからない。流されたとは思えないのだが…。結局見当たらなかったのでATCはカエルに食われたということにして仕方なく先に進んだ。

 その後は特に大きな難所もなく順調に下降を続けた。側壁は結構なゴルジュが形成されているのに中は何の変哲もない河原で面白かった。側壁のへつりを多用したが、時に柏元などは面倒だからと泳いでいて楽しそうだった。個人的には懸垂下降以外にイベントがほとんど無かったので少しつまらなさを感じることもあったけど。

 10時55分に本流との合流地点に到着。ここから最後のゴルジュまではただの河原になる。本流の水はかなり濁っていた。台風の影響で大きな斜面流出でもあったのだろうか。あったのだとしたらそれが我々の行動する沢でなくて助かったということだろう。本流と合流してからは川幅が広がり水量もかなり多く、徒渉にも少し苦労した。といってもスクラム徒渉などは必要なかったしそんなに徒渉する必要もなかったけど。

 歩道の跡とかを見ながら適当に下降を続けていくと突然側壁が立ってきて激しいゴルジュになった。個のゴルジュを抜けた先が笹木沢との出合であり、当初の予定では抜け口の滝を左岸から懸垂下降で下りるつもりでいた。ところが見た感じゴルジュ内はかなり流れが強く、流されたらそのままなすすべもなく滝から放り出されそうな感じで側壁の上からでないと懸垂下降は不可能に見えた。実際とりあえず進んでみた村瀬からゴルジュの抜け口にはたどり着けないと報告を受けた。ネットの記録を見る感じ普段なら落ち口まで行けるようなので今回行けなかったのは多分水量のせいであろう。さて、そうなると左岸の側壁を登って懸垂するか右岸を高巻いて一気に笹木沢に入ってしまうかの2択だったが、側壁を登るのも面倒なのと右岸に登りやすそうないいかんじの尾根があったのとでさっさと高巻いて笹木沢に入ってしまうことに決定。記録を書いている間に他のみんなが自分が思っていた場所と違う斜面を登って行ったが、少し大変なようであった。もう少し戻ったら緩い尾根あるのに…。伝えておくべきだった。

 斜面をを登り切ると植林された平坦な場所になるので、適当に進みつつある程度下流側のルンゼから笹木沢に向かって下降した。ルンゼは結構急だったが懸垂下降することなく笹木沢に降り立つことが出来た。笹木沢に入ると沢の方角のおかげで太陽が差し込んできて明るくきれいだった。本来は自分たちのいる場所が本当に笹木沢である保証もないので出合まで戻ってRFするべきだったのだろうが、合っている自信があったのと面倒なので進みながらRFしたり遡行図と照らし合わせたりして確認することにした。

 笹木沢は鬼口沢とは打って変わって岩盤のナメと滝で構成された典型的なきれいな沢で、魚もいっぱいいた。のんびり遡行しつつ、13時40分に予定のCS1に到着。右岸の台地状の場所で探しながら進んでいればまず見つけられるだろう。そんなに広くないので6テン一張りが限界と思われる。時間には余裕があったが翌日も行動時間がそんなに長くないのと釣りの時間を確保したいのとで予定通り行動を終了することに決定。こんなに早く行動終了できるなんてなんと文化的であろう。

 その後は夕飯まで各自思い思いに過ごした。僕と大柳は釣りに行き、釣果は大柳の1匹。魚影の濃さを考えればもっと釣れても良かったがまあ釣れたので何も言うまい。夕飯は杉原お得意のスープカレーの予定だったが買い出しの過程でいつの間にかスープカレー焼きそばとかいうカオスなものになっていた。しかし味は普通であった。よほど変な事をしなければカレーは最低限おいしく出来上がるものである。あとはたき火でイワナを焼いて食べた。去年のクワウンナイではたき火に失敗したので、沢で釣った魚をまともに焼いて食べるのは今回が初めてである。当然とても美味しかったのでこれからも沢での釣りには期待したいところだ。その日は結局各自適当な時間に寝た。


8/4 天気 くもり

5:00 起床

6:20 出発

6:55~7:25 8m滝、右岸巻き

7:40~8:30 8mランビレ

8:55~10:00 鎧滝ランビレ

10:45~55 レスト

12:28 遡行終了

12:58 下山


 行動時間が短い上に朝食もパンだったので起床は遅めの5時。その割に出発が6時20分なのはやはり少しかかり過ぎか…。後期は頑張ってほしい。

 遡行中は途中8m滝の巻きが少し難しかっただけで後は大した苦労もなくランビレ予定の地点へ。完成相当には2回ランビレが必要なので、核心の鎧滝とその少し手前の8mでランビレ。まず7mは左から登る予定だったがあまり濡れたくない村瀬が右から行きたいといったので右から行くことに。左よりもホールドスタンスともにやや細かいがまあ登れる。中間支点は取っていなかった。セカンドの支点はハーケンとカムで取った気がする。よく覚えていない。レジュメにはカムは使いどころがないと書いていたが普通に使うことができた。

 そこから鎧滝の方に進んでいくと、上から懸垂下降で下りてくるパーティーがいた。銀座山の会という山岳会らしい。我々と同じく鬼口沢下降、笹木沢遡行の予定だったがなんやかんやで笹木沢を鎧滝まで下降して折り返すことにしたらしい。昨日は魚を6匹捕まえて夕食はイワナ三昧だったそうだ。うらやましい。お互い集合写真を撮ってもらったりして少し話してから先方は登り返していった。それを待ってから我々も登り始める。高度感はそこそこあるがそんなに難しくない。ただランビレに少し問題があった。何があったかというと、上下で連絡が取れなくなったのだ。笛で合図を取ることにして村瀬が登って行ったが、滝を登り切って姿が見えなくなり、ザイルの動きが止まったにもかかわらずいつまでたっても笛が鳴って来ない。よくわからないので杉原にフリーで見てきてもらうことにした。杉原が登り切ると少しして滝上に現れて登ってよいという仕草をしたので、その後は特に問題なく手順通りランビレを行った。どうも村瀬の笛があまりにザコ過ぎて下まで音が聞こえなかったらしい。僕の笛(100均)は下まで届いたので普通の笛なら音は下まで届くはずである。そんなことがあったので少し時間がかかってしまった。

 鎧滝より上はそこまで大きな滝もなく12時28分に遡行終了。源頭部ではRFが難しかったが遡行図も見つつ水量の多い方に進んでいくと予定通りの場所に詰め上がることができた。最後は5分ほどの藪漕ぎになる。そこからは30分ほどでさくっと下山した。

 下山後は作並温泉に行く予定だったが掃除で閉まっていたので秋保温泉のすぐ近くにあるかんかね温泉というところに行った。その後秋保大滝を見て大した事ねえなとか言いつつ仙台に向かってで完成祝いに焼肉で打ち上げした。その夜は村瀬と小山がネカフェに行き、それ以外は車中泊した。


8/5

車はこの日の17時に返却なので松島とその奥にある宮戸島を見てから返却した。思った以上に時間ギリギリで昼食を食べる時間すらなかった。村瀬の運転が相当やばかった記憶がある。新庄に着いてから天気予報を見てみると何とも微妙な感じだったので天候判断は翌朝まで待つことにした。夕食は新庄名物の鳥もつラーメンを食べて公園で寝た。鳥もつは生協の鳥もつ煮の15倍くらいおいしかった。


8/6

5時頃に起きて天気予報を確認したところ、9日くらいまでは悪そうであった。さすがにそこまで待っていられないということでここで解散ということにした。帰るなら始発に乗りたい組が急いでいたので全員で顔を合わせる間もなく解散となった。杉原は一直線に京都へ、1回生陣は東京へ、大柳は適当に観光してからそれぞれ帰ったらしい。村瀬はどうしたのか知らない。僕は米子沢のPWまで帰る気はなかったので、利尻に行く散策の会の友人を追いかけつつ北海道に向かう家田partyを電撃訪問してやろうと北に向かうのであった。そんな感じで最後は意外とあっけなく2016年度前期の合宿は終了したのでした。めでたしめでたし。 


さて。

 笹木沢ですが、元々完成編が潰れた時の予防線として用意していただけあって当初の期待値は結構低かったのですが、行ってみるとなかなかいいところでした。計画時はまさか完成編が潰れるとは夢にも思っていなかったのですが、結果的に用意しておいて本当によかったです。まあ予防線なんか張るからこんなことになるんだという説もありますが。鬼口沢と笹木沢は同じ川の支流にあるにもかかわらず渓相が全く違っていて面白かったです。巨大なV字谷が特徴的な鬼口沢の豪快な印象に対して、ナメと原生林の競演が魅力の笹木沢の繊細な印象を受けました。鬼口沢は個人的にはやや大味な印象を受けましたが、笹木沢にアプローチするための下降の沢と考えればまあ充分すぎるほどでしょう。笹木沢は大滝が思ったより簡単で手ごたえがなかったのですが、適度に滝とナメが配置されており沢自体がなかなか楽しめました。ゆったりした森林浴遡行がしたい人向けの沢だと思います。ザイルを出した場所以外は全く難所がない沢ですが、2本のランビレ箇所のお蔭で難易度的には完成編相当になるかと。参考にした本ではピッチグレードがⅣ級になっていましたが、Ⅲ+位だと思います。

 今回あった問題としては、やはり鎧滝のランビレだと思います。いくら大丈夫そうだからとはいえ、杉原にはフリーで登ってもらわずに補助ザイルで確保した方がよかったように思います。また、笛の合図が届かない場合の対処も考えていた方が良いですね。今回は笛がザコかっただけですが、将来的には笛の合図が届かない場合もあるかもしれません。


そんなわけで、前期の山行はすべて終了、僕のCLもこれでたぶんおしまいということになりました。なんやかんや問題はありましたが、無事大きな怪我もなく終えられてよかったです。合宿相当までは持っていけませんでしたが、その辺は後期の村瀬partyにお願いするということで。