この記事は旧KUWV-BLOGから移植したものです。

2016年06月21日

鈴木です。週末にpart2として不動南股に行ってきました。去年杉原が滑落撤退した因縁の沢ですが、無事リベンジできました。詳しくは追記をどうぞ。

写真



6/11 天気 晴れ

午前4時、うっすらと明るくなった空の下でCLは絶望していた。

車に積んだはずのヘルメットがないのである。そんなはずがない、絶対に持ってきた。車の中を必死に捜索した。見つからない。それでもわずかな希望を信じて探す。それでも見つからない。

全てを諦めて「撤退か…」といった瞬間大柳が「いえーーーい!!!」とかいいながら走り始めた。奴は中間試験とレポートを抱えていたのである。思えば自分も中間試験と実験レポートふたつを抱えており、他のメンバーも同じような状況であった。そんな中今週を逃せば次はいつになるかわからないとCLとしてパーティーメンバーの忙しさを承知でpart2を強行したのにそのCLが忘れ物をして撤退という酷い事態に思わず北股川に身投げしそうになったが何とか抑えた。やはりやる気がないと山行は失敗するのか…。杉原からホームセンターでメットを買って再入山しようという提案があり、それだ!!と思ったが冷静に考えると時刻はまだ4時、ホームセンターは10時にならないと開かないのである。砂粒ほどの希望が消え去った瞬間であった。実はCLには今年こそpart2をストレートで突破するという密かな野望があったのだが、儚くもその野望は入山前にもろく崩れることになった。

何もせず帰るのは車がもったいないということで大神神社に寄ったが、僕は悲しみが大きすぎて神様にすがろうという気力すら起きず、ただフラフラと神社をさまよっていただけでほとんど記憶がない。その後天理に寄って最近生協のメニューにも登場していた天理ラーメンを食べ、柏本を家に送り届けて帰った。西部講堂に車を停め、車から降りると見覚えのある黒い物体が転がっている。「ああ…こんなところにあったのか…」出発前に車から転がり落ちたのであろうヘルメットを見て、僕はpart2がやはり鬼門であることを再認識したのである。その後悲しみの中家に帰った僕は完全に無気力になっており、せっかく中間試験の勉強をする時間ができたに関わらず、日曜日のうち17時間を寝て過ごした。


6/18 天気 晴れ

木曜日、次の週末も晴の予報だったので梅雨なのにラッキーだと思いながら天候判断をしたところちょうど奈良南部で雨が降っている。上北山のアメダスの48時間降水量が50mmを越えたら中止にしようと思い天候判断を翌日に回すと金曜正午時点で48時間雨量は47mmであった。なんかこれ大路パーティと同じパターンだなと嫌な予感がしながらも昨日自分が立てた天候判断の基準に従い、行くことにした。ちなみに50mmの数字に特に根拠はない。

金曜25時にBOXに集合し。杉原がなぜかセパを着ていたが、服を忘れたらしく、直にセパを着て遡行するらしい。杉原ハウスはアプローチの途中に寄れる位置にあるので寄ってもよかったのだが当の杉原が別にいいと言っているので寄らなかった。別に気を遣わなくてもいいのに。体に直にセパを着ようとする気持ちが理解できない。


5:04 入渓

5:24 北股川本流

5:24 南股滝

6:16 巻き終わり


今回は北股川までの斜面の下降と北股川の渡渉が問題なければその後も大丈夫だろうと思って入渓すると、斜面も乾いていたし、北股川も平水だった。なんなく渡渉して、天気さえ良ければ今回は行けるなと確信した。

南股滝の巻きは去年はそこまで怖いと思わなかったが今回はそこそこ怖かった。1回生たちは怖がりながらも問題なく突破した。


7:12~7:25 不動滝下でレスト

7:25 巻き終わり


不動滝は去年ルート取りを間違えて杉原が滑落して撤退した因縁の場所。とりあえずレストをとり、集合写真を撮る。セルフタイマーをセットして滝の下に走って向かう途中に深みにハマってこけた。時間がないので気にせず走ったが、後で見てみると手のひらを打撲して、切り傷も出来ていたのでやはり焦るのは良くない。しかし去年の前期合宿でもM里CLが写真を撮ろうとしてこけてたしCLになるとよく言えばエンターテイナー力、悪く言えばポンコツ度が上がるのは宿命なのだろうか。

レストを取り終わっていよいよ不動滝を巻きにかかる。滝のすぐ左のルンゼを登り、傾斜が緩くなったところで折り返し、落ち口近くに出る。全然大したことはなかった。やはり遡行図だけで情報して思い込みで行動するのは良くない。実際の景色を見てルートを決定することが大切だと思い知らされた。

続く6m滝は両側の壁が高く、かなり手前の流れが左にカーブして滝が見えてくるあたりから左岸を巻くことになる。赤テがあった。


8:40~8:59 ゴルジュ内2m

9:24~9:39 16m滝上でレスト

そのあとすぐ~10:50 4m滝

11:11~12:17 5m滝でランビレ

12:29 二俣

12:48 840m二俣 

13:16 930m二俣 右に進む


ゴルジュ内2mは泳いで直登。村瀬、小山、柏本、大柳は右壁を、杉原は水流中心を、僕は水流右端を登った。

16m滝の下で村瀬が突然大声を上げた。何かと思ったら足にヒルが2匹付いていたらしい。とりあえずこの滝を巻いてからレストということにして止まらずに先を行かせる。巻き終わるとまた村瀬が大声を上げた。2匹だったヒルが5匹に増えていたらしい。さすがに笑いをこらえきれなかった。

4m滝は遡行上の注意にも上部が悪いと書いてあった場所だが、ここでかなり手こずった。簡単なルートは見えなかったので色々試してみる。杉原が左のルンゼにかかる3mのさらに左から行こうとしたが無理だった。大柳は3mを直登しようとしたが最後の一手が出ず失敗。赤茶の滝の真ん中のような感じらしい。次に僕が4mのすぐ左から登り、成功。立ち木からスリングを垂らしてそれを使って柏本と杉原が登ってくる。その間に村瀬がスリングを立ち木に投げて引っかけ、それを支点にしてゴボウで上がってきた。小山は僕の行ったルートで行けなかったので村瀬のルートで大柳の肩を借りて突破。最後に大柳が僕の行ったルートから登ってきた。ここで約1時間かかった。この山行で登攀的に最もしんどい部分だった。

5mは時間があったので練習のためランビレ。大して難しくはない。ヘクの時にザイルを先に上げるか後にするかで議論があったが、役員会で話し合った結果先に上げるのを基本とすることに決まったのでそれに従い、topの村瀬が登った後ザイルを上げてから中間が登った。ランビレの流れは全体的にスムーズだった。

930mの二股は本来左に行くところだが、杉原から地形図上では右の方が全体的な傾斜も緩く、距離も短いので右に行った方が良いんじゃないかという話があった。遡行終了地点までまだ距離はあったが遡行図上ではもうイベントは残っておらず、ここで右に行った方が楽だろうと思い、右に行くことにした。役員会で指摘があったが、そもそもこのような地形図上での判断は山行前にやっておくことであった。また、地形図上では問題なさそうでも実際に行ってみれば越えられない滝などがあるかもしれず、現場で確実に詰め上がれると判断できない限りは行くべきではなかった。

下に地形図の写真を添えていますが、写真の星印を付けたところが今回詰め上がった場所です。


13:19 950m二股で水汲み

14:18 遡行終了

14:36 主稜線

15:20 CS1


950mの二股は水量1:1。水が減ってきたのでここで汲み、右に進む。その後源流部特有の数メートルの滝がいくつかで出来るが全て左から簡単に巻ける。しばらくして、左に小さなルンゼが見え、そこから稜線のようなものが見えたのでそこに詰め上がることにする。登り始めるとなにか違和感があったのでコンパスを見てみるとルンゼの方向が南を向いていた。あわててRFしなおすとこのまま詰め上がれば主稜線のすぐそばの支尾根に出られることが分かったのでそのまま詰め上がる。やはりここも結構なガレであった。

少し休んでから尾根を登り、主稜線に出る。主稜線の道にはテープが貼ってあり、それに従えば迷うことはないが、道はそこまで整備されておらず、RFしながら進むべき。霧の平の手前で違う尾根に入り込んでしまったがすぐに気付き、引き返すして復帰した。

CS1の霧の平は快適なテン場。看板があった。レジュメには巨大サルノコシカケがあるという話だったが見つからなかった。いい感じのサルスベリが生えていたのでひょっとしてサルスベリとサルノコシカケを間違えたのではないだろうか。CS可までは1.5時間ほどで、進むことも出来たが翌日の天気が不透明なのでエスケープのしやすさを考慮して先には進まなかった。天気図を取り、夕食を作って各自適当に就寝。天気図を見たところ梅雨前線は本州のかなり南にあり、低気圧も接近していなかったので明日は行けるだろうと思った。夕食のビーフンは美味しかったが、ペミの油が底に溜まっていた。油を吸うことを考えれば春雨の方がいいかも?


5/19 天気 曇り時々雨のち雨


2:30 起床

4:13 出発

4:35 支尾根

4:59~5:09 レスト

5:18 下降開始


入山前に天気予報で日曜は天気が崩れる可能性が高いということで、雨が降っていればエスケープし、降っていなければリヒト山行して早めの下山を目指すことにし、2時半に起床。懸垂下降があるのでザイルを連結しておく。雨は降っておらず、雲も薄かった。とりあえず下降開始地点までリヒトをつけて動く。途中で一度支尾根に迷い込んだが、方角が違うのですぐに分かった。リヒト山行ではテープに頼るのは難しく、道もそこまでしっかりしていないのでしっかり地図を見ながら動く必要がある。途中、村瀬が足を挫いたのでレストを挟みつつ下降地点に着く。このころには空は明るくなっていた。下降地点のRFは難しくない。すこし雨が降っていたが、本降りになる予感が無かったので下降することにする。


5:48~7:05 8m滝で懸垂下降

7:35~8:23 20m滝で懸垂下降

9:13~9:22 25m滝、右岸巻き

9:40~9:52 斜15m滝下でレスト

10:31 20m滝、右岸巻き

11:04 樋状6mで滑る

11:07 北股川本流


下降開始からしばらくは急傾斜のガレが続くが、ルンゼが合流する辺りから穏やかになる。

ゴルジュの抜け口にある8m滝は左岸の立ち木を支点にゴルジュ内に向かって懸垂下降。金毘羅以来なので1回生やtopの村瀬は多少手間取った。レジュメには時間が無ければ右岸巻きと書いていたが、これはゴルジュごと左岸巻きの間違いではないかと思われる。

20mも同じく懸垂下降。レジュメには灌木の束を支点に下りるとあったが、その灌木の束と思われる場所よりも手前にある立ち木を支点にした。今回はスムーズにいった。下降する斜面はかなり落石が発生したので要注意。

その後は平凡な河原になったり突然ゴルジュが出てきたり。個人的には遡行図で言うところの丸太の滝が面白かった。

25mは右岸から巻く。遡行図にも美しいと書かれているが、まさに滝のお手本のような感じ。

斜10mは一見すごそうな地形をしているが水流はそこそこで見た目ほどの凄さはない。ここでレスト。

20m滝も右岸巻き。そもそもこの谷全体に言えるのだが、落石が多く気を使った。釜に大きな魚がいた。

不動谷との出会いにかかる樋状6mは安全だと分かっていたので僕以外はウォータースライダーのように滑り降り、最後に濡れるのが嫌だった僕は左から巻いた。

樋状6mを越えるとすぐに南股滝。ここで突然本降りの雨が降り出した。行きも怖かったが帰りは更に怖かった。別に難しくはないのだが高度感がすごく、僕はもう二度と行きたくない。

巻き終わると走るように北股川本流まで戻り、斜面を登って車に戻った。雨がかなり激しかったので下山写真すら撮らずに急いで沢装備を解除し車に逃げ込んだ。その後ホテル杉の湯で冷えた体を温め、京都に戻った。



不動南股は他にpart2でよく行かれる奥口や神童子と比べると1段難易度が高いように思います。そう考えると後期に行く方が良いのかもしれませんが、ゴルジュ内2mの泳ぎが嫌ですね。ヒルが多いのと落石が多く巻きが怖いという欠点はありますが、自然は綺麗だし滝も美しいものが多いしゴルジュとかも出てきてイベント豊富だしでなかなかいいところです。南股の下降は河原歩きが多いのが玉に瑕。

遡行自体はなかなかスムーズにいきましたが、一日目は4mで手こずったためかコースタイムを多少オーバーすることになりました。パーティ全体での登攀力はあまり高くないようなので、必要な所ではザイルやスリングを出しながら、多少の時間の遅れは気にせずに安全に進んでいけたらと思います。完成編は南アルプスのシレイ沢に行きますが、この沢は入渓者も多く、巻き道もしっかりしているのでそこまで登攀力が大きな問題になることはないと思います。詰上がりで予定とはかなり違う場所から上がったのはやはりよくなかったと思います。今回問題になる場所はありませんでしたが、登れない滝が出てきたらどうしようもないので、詰め上がる場所を変えるのは詰め上がる部分全体が見えていて大丈夫だと判断できる場合だけにするべきだと思いました。

まあ全体を通してみれば特に大きな問題もなく、ここ数年鬼門だったpart2を代替案の奥口を出すことなく終えられたのは非常に良かったと思います。この調子で完成編も夏休み前に終わればいいなあ。


今回の地形図です