この記事は旧KUWV-BLOGから移植したものです。
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「沢上級者もすなる単独行といふものを、沢初心者もしてみむとて、するなり。」的なノリで、まぁこのたび個人山行に行ってまいりました。Nです。
行き先は、奥高野に分類されている、十津川の小黒谷です。
詳しい内容は追記で…。
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●今回のいきさつ:
当初、OBのH澤先輩と行く予定だったが、用事で0付できなくなり、0付がしたかった僕は急遽I田先輩を召喚して沢登りに行くことにした。本当は単独よりもI田先輩と二人で行きたかったが、体力の衰えを強く主張しドライブに行きたいと仰ったので単独行と相成った。
●前日:
20日の夕方、河原町二条でI田先輩を拾い、出発。I田先輩は軽く沢装備は持ってきたものの遡行する気はなく、僕が遡行している間にドライブを悦しむつもりであるとのことだった。
奈良の天一で夕食をとって闘魂注入し、五條のサークルKで朝飯などを買い、23時前には駐車地に到着した。ほどなくして就寝。
外寝したが、蚊がヴンヴン寄って来るわ、寝る前に飲んだコーラの甘味料のせいで腹はゴロゴロ鳴り出すわで全然寝付けず。一方、I田先輩が寝ている車中からはこれ聞こえよがしの寝息が…。
●当日:
21日。4時に起き、朝食をとりつつ、吊橋への降り口を探す。なんとか見つけることができたが、これがなかなかわかりづらい。小黒谷に行く沢屋のために書いておくが、降り口はダートの最奥から徒歩50歩ぐらい戻ったところ(ダート最奥とその一つ前の待避所との間)にある。
5:35、駐車地を出発。降りて吊橋で写真を撮る。I田先輩吊橋まで見送りに来て、相互に写真を撮った。吊橋は怖くはなかったが、替えたてではないので経年劣化していた。
5:55、小黒谷に到着。十津川村製の看板がある。入渓したものの、辺りはまだ明るいとは言えない。ていうか寧ろ暗い。
最初、凛々しい5mの滝を右から巻き、直登の沢らしさを期待させたが、その後は緩い渓相が続く。
6:19、8mの滝。左がルンゼとなっている。どちらからでも巻けるが、見た目通り右岸が簡単であろう。その後は二,三の斜とかナメの小滝を右ぎみに直登。
6:31、L10mの滝。滝の下が釜となっている。ここを泳いで取り付いた。「なんで俺朝6時半から泳いでんにゃろ」とか思いつつ…。そしたらボールペンが釜に食われて消失したことに気付いた。少し行った先の12m滝の前で休むことに。余り朝早くから泳いでもしゃあないと思い、レストは長めに取った(6:41~7:00)。
その後、12mの滝を巻く。「大きく巻く」と遡行図に記述してある割には巻き道は小さめだった。しかも、踏み跡もしっかりとしており、降りやすくもある。
続いて、2段15mを右側をシャワークライムで直登。この辺りから、途中に6m滝(直登)があった以外はナメ的な平坦な所が続く。7:17、470mの二俣到着。1:4ぐらいだった。
7:33、4m滝。これは左岸巻きで、オーバーハングだがホールドはしっかりとしたものがある。
その後、4m滝を左ぎみに直登、8m滝を右ぎみに直登し、連続するナメ5mとC.S.2m、トユ状2mを通過すると、渓相は平坦となる。
7:47、左ルンゼがあるところにキリンビールのケースがささった木があった。
7:50、8m滝。先には植林小屋が見えている。これは左を直登した。
植林小屋は小さい小屋が3つ繋がったような感じである。ぼろかった。
その後、遠くから見ると堰堤に見えるような5m滝を越えると、600mの二俣に着いた。1:1ぐらいだった。ここでレストを取る(8:01~13)。ようやく太陽が姿を見せた。しかしそれも束の間で、この日はずっと曇っていた。その時、RFを無事済ませたつもりになっていたが、ここで一つ自分の遡行速度をH澤先輩と比較相対しようなどと思ってたまたま記録を取り出して見ると、自分がこれから進もうとしていた俣が違っていた。本当は右に進むべきなのに左に進む気になっていた。右俣の方が谷が暗かったから本能が拒否したのであろう。しかしこの勘違いには一瞬焦った。過去の記録を見たことにより難が回避されたのは偶然に過ぎない。なんたる僥倖…!
暗い方の俣に入ると、ナメ滝が連続していた。5m滝は左をシャワークライムで直登。ナメクジの伸びきったようなものは何かの卵だろうか、岩に張り付いていて至極気持ち悪かった。
続いて、6m滝。シャワークライムなのだが、如何せん水量が多くて難儀した。1回目は普通にアタックしたが、2回目は水を避けるためゴーグルを着けた。しかし、むしろ見にくい気がして、3回目にはまたゴーグルはやめてトライした。すると……落ちた。ホールドがなくて。大したことはなかったが、やるだけのことはやった的な清々しさを覚えたため、諦めて左岸を巻いた。
そして、L7mを越え、6m滝。ここではフリクションが効かなくて滑り落ちた(小黒谷が若干ヌメッとした沢であることも一因であろうが、いよいよ寿命を迎える沢靴の要因が一番大きいと思う。来期が始まるまでに買いに行かなくては…)。ここは左から巻いた。だが、やや危険であり、お勧めできない。他にいい巻き方があればそちらに行かれることをお勧めする。
8:51、イノシシの親子と出合う。どう対処していいかわからなかったので、静かに、摺り足で歩いた。8:53、6m滝は右を直登した。
8:55、いわゆる3段50mの滝に到着。初見では見た目は12mぐらいに見える。50mを「直登」とだけ書かれていたので戸惑ったが、まぁ出来るのだろう、おそらく幾つかの滝の集合なのであろうと思って、偵察をしてみた。シャワークライムではどう見てもきつそうであったので左側を見たら、そこそこ足場・フリクションがしっかりしてそうだったし、ザックを担いでも行けそうだったので、登り始めた。倒木の足場を踏み、9:04にいざ登攀開始。高度感は少しあったがサクッといけた。その先には、L15mぐらいの滝があった。最終的に、3段50m=12m+L15m+5m+4m+3m+2m+1mぐらいだと思う。デカい滝がないから無理にでもメインとなるものを作りたかったのだろうと思った。ここでレストを取った(9:09~18)。
レスト後の谷は、平凡で無特徴な渓相が続いた。また、倒木のオンパレードがえんえんジャブを撃ってくる。徐々に気分は萎え、遡行意欲が失われていった。途中で水を1リットル汲んだらその直後に水が消えた。
10:07、稜線の巻き道みたいなのが現れたが、一応詰めあがってみることにした。10:10、詰め上がった。沢靴を履き替えようかどうか迷ったが、記録に下山路が滑りやすいとあったので足袋ではいかんだろうと思い、摩擦係数の減じた沢靴を履き倒すことにして、下山を開始した。
5分程でC.S.適地が現れた。さらにもう少し進むとレールが現れた。これに沿って進めば下山できるというので、これに悉く従うことにした。
下山路は、三部作とみなせる。第一では、稜線の脇にレールが沿っており、左右に傾斜があるのでそこそこ滑る。第二では、稜線上にススキが生い茂っているところをレールが走っている。ススキはやたら滑り、なおかつ手が切れるので痛い。第三では、ススキは少なくなり、地膚が露出していて比較的歩きやすい。ただ、傾斜がきついのでレールをずっと手を持ち換えて歩くので手に赤茶色の錆びが付くのと、蜘蛛の巣に引っかかるのが鬱陶しい。ここでは、黄色いボディをした蜘蛛が、黄色いウェブを張っていて、しかもそれは結構強靭で粘り気のあるウェブであった。
途中、5分ぐらいレストを挟みつつ、ずっと憂鬱な気分でのろのろと下山していた。途中から見晴らしが良くなり、眼下の湖畔・半島部や最初の駐車地、湖面を行き交うボートなどが良く見えた。
11:54、吊り橋に到着。11:57、入山地に戻ることが出来た。
初めての単独沢遡行で、詰め上がりもこなし、疲れ果てていた。水をガブのみして手について金属錆を落とし、ふらふらとしていると、12:05にI田先輩がドライブから帰ってきた。今回の成果を軽く報告し、着替え、温泉へと向かうことにした。
途中、道の駅「十津川郷」できのこ弁当を買い、それを食いつつ足湯に浸かった。何度かここに来ているが足湯に浸かったのは初めてだった。こういうことは、あまり十津川方面に来たことのないI田先輩の好奇心のおかげだ。湯の温度はなかなかに熱い。
続いて、龍神温泉へと向かった。H澤先輩とのドライブ時に行ってなかなか楽しめたので行こうと思いついたのだが、その時と違って今回は疲れていたのと、前回と違う山がちのルートを取ってしまったので、やたら時間が掛かった。
龍神温泉に浸かった後は、ガソリンを入れ、高野龍神スカイラインを通って帰った。なかなかに見晴らしがいいであろう道だったが、雨が降っていたのとガスが出ていたので、対岸の景色を拝むことがそれほどできず、少し残念だった。
後は、五條でCoCo壱に寄って普通に帰った。
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今回、ただでさえ暗めの沢に、曇りの時に行ったので、沢中はあまり心晴れ晴れ愉快ではなかった。また、「直登の沢」と言われている所に、台風一過の時や雨の後に行くもんじゃあないな、と思った。シャワークライムしようにも、水が壁となって突破が困難になるところがやはりある。
さて、Sec経験のみの僕が単独行をしたわけで、賛否両論ありそうなこの山行ですが、ダーウィンの進化論ほどじゃあなくてもセンセーションをまきおこせればいいな。