熊本地震で出現した地表断層

始端から終端までの写真(地震調査委員会資料)

9月14日夕刻のNHK熊本の地域番組「くまもとの風」で「熊本地震痕跡を 未来へ」が放映されていた.放置すれば風化で消えていく活断層を今のうちに高精細 8Kカメラで撮影し保存しようという意図で構成されていた.地デジ放送では,その映像をハイビジョン版にしたものであった.未だ人が近づくことができない 阿蘇大橋周辺の渓谷をドローン撮影した映像の中から,両側の崖に活断層が発見され,それが東海大学の敷地へ,さらには校舎を横切る活断層に繋がっていることなどを紹介していた.

NHK熊本ホームページの画像 放送によると,横ずれした田畑(益城町)はそのままの姿で残されているとのことである.

その番組を見ながら,気象庁のホームページに「平成28年熊本地震の評価」が公表されていることを思い出した.

「平成28年(2016年)熊本地震の評価」 地震調査研究推進本部 地震調査委員会(平成28年5月13日)

2年間にわたって多角的に詳細に調査した中間報告である.その中に,産業技術総合研究所資料として熊本地震に伴って地表に出現した断層の全貌が写真入りで掲載されていた.資料の日付が2016年5月13日となっているので,地震直後のホットな記録であることがわかる.日奈久断層帯約 6km,布田川断層帯約 28km にわたる記録である.以下に,説明,図をそのまま引用して紹介させてもらった.


2016 年熊本地震に伴って出現した地表地震断層

・日奈久断層帯および布田川断層帯に沿って、地表地震断層の出現状況を広域的に調査した。

・その結果、日奈久断層帯では高野̶白旗区間の北部約 6 km にわたって、布田川断層帯で布田川区間をやや超える約 28km にわたって、地表地震断層の出現を確認し た。

・二つの断層に沿った複数の地点で、4 月 14 日の地震で生じた道路の亀裂や段差が 16 日の地震で拡大したという証言が得られた。

・日奈久断層帯の地震断層は、今までに報告されていた活断層にほぼ一致する場所に出現した。

・変位量は、高木地区で最大約 75cm に達し、そこから北側と南側に向かって減少する。

・緑川の南側では活断層沿いの変位は確認できなかったが、主断層の西側で SAR 干渉図とほぼ一致するわずかなずれが認められることがある。

・日奈久断層帯の高木トレンチで確認された活断層が、今回の地震で活動した。

・布田川断層帯の地表変位は、日奈久断層帯との接合点より約 3 km 西側を西端とし、東端は従来認定されていた活断層の端点より約 4 km 東側の阿蘇カルデラ内まで、 約 28kmにわたって認められた。

・布田川断層帯の地表変位も、ほぼ従来指摘されていた活断層に沿って出現したが、 それ以外にも複数の平行な断層や幅広い変形帯を伴うことが多い。特に、断層の南 側では正断層成分を含む変位が広く認められた。

・布田川断層帯の右ずれ変位量は堂園付近で最大 2.2mに達するが、多くの場所では断層が分散・分岐するため、正確な変位量の測定が困難な場所が多い。分散する変 形や断層の変位の状況から、堂園付近から大切畑ダム付近に至る約 10 km の範囲では、全体として 2 m 前後の右横ずれ変位量を持つと推定される。

・布田川断層帯沿いの田中トレンチで確認された活断層が、今回の地震で活動した。

2016年5月13日 (原文引用)

平成28年熊本地震 震度7の地点(次図●) 気象庁資料

代表的な地表地震断層の写真

次図の活断層に沿って赤英文字で示された H1 ~ H3, Fu1 ~ Fu8 の各地点の写真が掲載されているので,クリッカブルマップの作成を試みたが,新Googleサイトでは対応していないので,地図と写真の照合を容易にするために.Googleドキュメントを利用して写真をスクロールして見ることができるようにした.地図で示された地点の写真を見て地表に現れた断層の姿を実感してほしい.なお,熊本市との位置関係を明確にするために立田山の文字を追加し.白川,江津湖と加勢川を分かりやすくした.河川は北から,白川,加勢川,緑川である.2016/04/16 震度7(本震)の震央は江津湖の南東 1.5 Km ,Fu1(嘉島町井寺付近)の西1.5 Km に位置する.

断層のずれ

熊本地震調査報告 - 土木学会

上記とは異なる断層写真を紹介しているサイトとしては,土木学会原子力土木委員会地盤安定解析高度化小委員会断層変位評価WGのサイトがある.PDFファイルに掲載されている写真を見てほしい.産総研の資料と重複するところもあるが,次図のように地図上の四角枠1,2,3,5,6の各地域について,写真入りで紹介している.

地表に現れた地震断層を始点から終端まで,写真で見せてもらったが,益城町堂園の田圃が2.2メートル横ずれしている姿を見て改めて地震エネルギーの大きさにびっくりした.断層直上の家屋破壊の物凄さを理解するには,断層の実態を知る必要があることを実感した.

追記 以下はキロクマの画像およびWeb版新聞掲載画像である.

上,中 阿蘇,下 大切畑ダム. キロクマのフリー画像より

東海大学 西日本新聞Web版掲載の写真

追記 地図の任意の点をクリックしたら,その地点の画像が表示されるようにしようと試みたが,新Google サイトにはその機能は備わっていないようである.現状ではクリッカブルマップが利用できるHTML言語に対応した別サイトを立ち上げないと実現できないものと思われる.

資料

・地震調査研究推進本部 地震調査委員会の見解(地震調査研究推進本部ホームページへのリンク)

2016年7月の地震活動の評価(平成28年8月9日公表)(PDF 13.5MB)

2016年6月の地震活動の評価(平成28年7月11日公表)(PDF 34.0MB)

2016年5月の地震活動の評価(平成28年6月9日公表)(PDF 10.8MB)

平成28年(2016年)熊本地震の評価(平成28年5月13日公表)(PDF 26.0MB)

平成28年(2016年)熊本地震の評価(地震調査委員長見解)(PDF 0.1MB)

・【災害時地震報告】平成28年(2016年)熊本地震

【災害時地震報告】平成28年(2016年)熊本地震(本文) [pdf形式:64.9MB]

熊本地震調査報告 - 土木学会 委員会サイト土木学会 原子力土木委員会 地盤安定解析高度化小委員会 断層変位評価WG 2016年6月7,8日調査実施 2016年11月29日掲載

・地震断層について

地震によって地表に出現した断層。 ... 地下での岩石のずれが地表にまで及んだ場合が多いが,ときには地震動によって二次的に発生することもある。 地表地震断層ともいい,地下に存在すると考えられる地震の原因となった震源断層と区別する。ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

・大切畑ダム付近,阿蘇市の地割れの様子はキロクマにも掲載されている.