DH国際シンポジウム

接続する人文学

開催日時:2024年3月13日(水)13:00 – 16:00

会場九州大学 日本ジョナサン・KS・チョイ文化館 中山ホール(福岡市西区)[地図]

参加申込みフォーム(ハイブリッド開催・同時通訳付き・参加費無料・要申込み)

【申込〆切】2024年3月10日(日)

 懇親会〆切】2024年225日(日)

共催:九州大学大学院人文科学研究院/一般財団法人人文情報学研究所

協力ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター/国立情報学研究所/

九州大学大学院統合新領域学府ライブラリーサイエンス専攻


関連イベントDH国際シンポジウム「ビッグデータ時代の文学研究と研究基盤」

2024年3月15日(金) 一橋講堂(東京都千代田区一ツ橋)

概要

 様々な社会課題を解決するために、人文学は連携する必要がある。そのためには人文情報学の手法は有効である。本シンポジウムでは、両講演者の専門である大規模テキストデータの構築と分析に関する事例を皮切りに、討論者を交えて最新の人文情報学の動向と、新設予定の人文情報連係学府(仮)の教育に関して討論する

講演者

J. Stephen Downie

「オープンコミュニティ開発のためのオープンアクセスデータ:TORCHLITEプロジェクト」

【講演概要】

 HathiTrust研究センター(HTRC)は、HathiTrustデジタルライブラリ(HTDL)に所蔵されている1,800万冊への分析的アクセスを提供している。コレクションのうちおよそ1,000万冊は著作権の制限下にあり、研究者への自由な公開は禁じられている。HathiTrustの資料へのアクセスをよりオープンにするため、HTRCはExtracted Features 2.0 Datasetを公開した。このデータセットには、コーパスに含まれる60億ページの中に発見された2兆9000億以上のユニグラムトークンが含まれている。本講演では、HTRCが現在進行中の「Tools for Open Research and Computation with HathiTrust: Leveraging Intelligent Text Extraction(TORCHLITE)」についての概略を紹介する。全米人文科学基金(NEH)から資金提供を受けたTORCHLITEは、使いやすいテキスト分析ツール、ダッシュボード、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を作成し、HTDLという他に類を見ない貴重なデータをオープンなコミュニティでの研究・開発利用に役立てることを目指している。本講演ではTORCHLITEの動機、課題、これまでの成果を、今後のステップとともに紹介する。 

【講演者略歴】

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校情報学部研究担当副学部長・教授。HathiTrust研究センター(HTRC)のイリノイ共同所長。ハティトラスト+ブックワーム(HT+BW)テキスト分析プロジェクトの研究代表者を務め、全米人文科学基金(NEH)の資金援助を受けて、用語の経年変化を可視化するツールを作成している。Downie教授は、メロン財団が資金を提供したScholar-Curated Worksets for Analysis, Reuse & Dissemination(SCWAReD)プロジェクトの共同研究代表者でもある。現在は、HathiTrustとのTools for Open Research and Computationの共同研究代表者: Leveraging Intelligent Text ExtractionTORCHLITEプロジェクトの共同研究代表者。以上のプロジェクトのすべては、著作権で制限された文化データへの大規模な分析的アクセスを提供しようと努力しているという点で共通するものである。 

Ted Underwood

「生成AIはデジタル・ヒューマニティーズをどう変えるか?」

【講演概要】

 DHは、コンピュータの分析が持つ力強さと死角に関する信念によって深く形作られてきた。例えば「精読(Close Reading)」と「遠読(Distant Reading)」の分水嶺は、コンピュータは―動機や口調についての局所的なニュアンスには疎いが―何千冊もの本の語を数えることは得意であるという洞察から生じている。

 生成AIにより、私たちはこの役割分担を再考することを強いられるかもしれない。生成AIは遠読に役立つ道具以上のものとして取り組むことができるはずだ。本講演では、その例として大規模なコーパスに注釈をつけたり、探偵小説についての新しい疑問を投げかけたりといった、プロジェクトをお示しする。しかしながら、生成AIが人文学の伝統的な学知や学識を変容させるというより広範な影響を及ぼしうることも示唆したい。ここでもまた、DH研究者は重要な役割を果たすことができる。その役割は私たちを居心地のよい場所から追い出すものかもしれないが。

【講演者略歴】

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校情報学部及び教養学部英文学科教授。18~19世紀の文学について、馴染みのある批評的手法で解説した2冊の本を執筆した後、大規模なデジタル・ライブラリーがもたらす新たな可能性に着目。それ以来、彼の研究は、何百冊、何千冊という本を一度に検討する際に、長い時間軸の中で見えてくる文学のパターンを探求してきた。例えば最近では、機械学習を利用して、探偵小説とSFが別個のジャンルとして統合された過程を追跡したり、1780年から現在に至るまで、文学の人物描写の中で明らかになったジェンダーに関する思い込みの移り変わりを説明したりしている。

文学史に関する著書に『遠い地平線 Distant Horizons』(シカゴ大学出版局、2019年)、『なぜ文学の時代区分は重要だったのか:歴史的対比と英語研究の威信』(スタンフォード大学出版局、2013年)、『太陽の仕事:文学、科学、政治経済 1760-1860』(New York: Palgrave, 2005)がある。 

プログラム


総合司会 夏目宗幸九州大学大学院人文科学研究院

13:00 – 13:05 開会あいさつ 上山あゆみ(九州大学大学院人文科学研究院長) 

13:05 – 13:20 趣旨説明 中川奈津子(九州大学大学院人文科学研究院)

13:20 – 14:00 講演① 「オープンコミュニティ開発のためのオープンアクセスデータ:TORCHLITEプロジェクト

J. Stephen Downie(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校) 

14:00 – 14:40 講演② 「生成AIはデジタル・ヒューマニティーズをどう変えるか?

Ted Underwood(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校) 

14:40 – 14:55 休憩

14:55 – 15:55 パネルディスカッション(同時通訳あり

ファシリテーター 中川奈津子(九州大学大学院人文科学研究院)

登壇者  J. Stephen Downie(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)

 Ted Underwood(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)

 北本朝展(ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター/国立情報学研究所)

 永崎研宣一般財団法人人文情報学研究所

15:55 – 16:00 閉会あいさつ 上山あゆみ(九州大学大学院人文科学研究院長)