宮あさか
ひとつ
またひとつ
私は大切なものを
誰の目にも見えない何かに
奪い取られていた
もう私には
ほとんど何も残されていない
動かない肉体はあるらしい
排泄のコントロールを
知らないうちに失ったらしい
感覚がないから
よくわからない
私を見た誰もが
元気そうでよかったと
きまってそう言った
五感が損なわれた今も
そう言われているような気がしている
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