Rino's Testimonial
廣瀬 梨乃
廣瀬 梨乃
Master’s testimonial
修士課程では、就職活動や進路への不安の多い日々も続きましたが、その中で自身の研究についても見つめ直す機会となり、大変濃く充実した日々を過ごすことができました。
時松研究室は、先生や先輩から研究テーマが与えられる研究室ではないため、自身で研究テーマの種を見つけ実行していく必要があります。私の場合は、自分の興味に基づき学士課程で決定した研究テーマを、修士課程でも継続しました。修士課程になってから、学士課程に比べて少しだけ知識もつき、また学外の活動でご指摘やご助言を頂く機会も有難いことに何度もあり、自分の至らないところが沢山見えるようになりました。そういった経緯もあり、過去の自分が決めたはずのテーマでも立ち止まってしまうこともありました。今となっては、自分の興味を追究するだけでなく、研究の意義がどこにあるのかを論理的に説明できるようにしておくことは、研究を続ける長期的なモチベーションに繋がるだけではなく、奨学金や研究費獲得の際などに自分の研究の必要性を分かってもらうために必須だと思っています。
時松先生には、学士課程から引き続き、月に2~4度の研究指導を賜り、また様々な機会を設けていただきました。学士課程からの研究を1つの査読論文にまとめ出版できたことは大変嬉しいことですし、国内学会や国際会議にて口頭発表を修士課程のうちに複数回経験することも叶いました。時松先生の勧めで、学会発表やその交流会、そしてインターンシップにも参加し、多忙な時期もありましたが大変学びの多い機会となりました。このように様々な場所に背伸びをして飛び込んだことは、今後の人生への財産になると感じており、研究室内外でお世話になった研究者の方々のお言葉や研究姿勢に刺激を受けることも大変多かったです。
小学校高学年から関心のあったエネルギー分野について、今も勉強し研究し続けられていることは私にとっての大きな喜びであり、とても恵まれていると思っています。今後も日々精進し、沢山の経験を積んでいく中で、学び得た知見を社会に貢献していく立場となっていきたいです。
最後に、時松先生をはじめ、ゼミでご指導いただいた高橋先生・Gonzales先生、一緒にお話しして時には励ましてくれた時松研究室・高橋研究室のメンバー、大学内での講義でお世話になった先生方、学会・インターンシップでお世話になった研究者の方々に感謝申し上げます。
Tokimatsu sensei's response(教員からのコメント)
2022年2月に学士特定課題研究を終わらせ、仕込んでおいた案件の今後のスケジュールを固めて行こう、という段階から2022年度が始まる。色々な側面から研究を経験してもらうため、研究機関でのインターンやバイトの話を進める。つねに慎重姿勢の彼女は講義が終わる7月から年内を目途でお世話になることに。夏のIAEEの採択通知を受け取り、夏のエネコン申込を一先ずしておく。手前方のスケジュールから一通り対応可能なよう、エネ資学会の研究発表会の同時査読投稿に間に合わせるべく着手してゆく。エネコン論文も参加者に限定で公開される。IAEEは3ページ物であっても著作権の主張があり、どこにどのような形で公開されるか不明。6月末申込のICAEは著作権の扱い自体不明。エネコン同時査読はいったん取り下げ、IAEEとICAEが終わって状況が分かって、ICAEのSIへの招待の有無の連絡が来てから、普通の投稿にするか、再度冬のエネコンでの同時査読にしようか、判断しよう、と。SIの招待が9月に来て大慌て。先輩が羨ましがり是非ともとプッシュ。そんなに無い機会なら頑張っても良いけど、と本人。研究者で突っ走るなら迷わずに、けどもそこまで決めきれていない段階。他を犠牲にする機会費用の損失が大きいと判断し、SIは止めて、10月にエネコン論文を普通に投稿。将来の選択肢が見通し切れない、固まっていない段階で、あらゆる可能性と選択肢を考え、全てが手探り。彼女も可能性は広く知りたい模様。1つ1つ可能性を未経験者の彼女に分かりやすく丁寧に説明し、一緒になって考え、意向を聞き、慎重な判断が必要だった。結果的にこの判断も大成功だった。
2022年7月の国際会議が彼女の就職につながった。コロナ禍から完全には戻っていない時期での対面開催。久しぶりの女性研究者との立ち話で、最近の業務対象が彼女の研究対象そのもの。是非引き合わせておきたいので、お化粧室から彼女が戻るまで、少々お待ちを、と。機会あれば是非インターンやアルバイトの機会を、と引き合わせた。オンラインでは出来ない対面ならでは。色々な組織の右も左も未だ分かっていなかった彼女に、日本酒と梅水晶で手ほどきをする。コンファレンスのバンケなどコロナ禍で出来なかったメモリアルな課外活動経験もさせてあげることができた。年明け頃開始を想定してインターンを開始可能なように、オンライン面談を仕込む。インターンやアルバイトの話は多く受けているようで、やや不安になるも、内容について幾つかご提案を頂き、お世話頂くことに。
M1後半は未だ講義も残っており、インターン、採用面接などタフな日々を過ごしていた。詳しくは書けない。鍛えられる大変貴重な経験を健気にこなす。この前、B3で入って来たばかりで学業研究に専念しているだけなのに、2年も経つとこんなに社会(に入るため)の洗礼を受ける(そのための経験値が必要な)ものなのかと。既に査読付き論文を投稿する段階まで来ているから出来ること。インターン先ではどこでも、色々な方にお話を聞かせてもらうのが上手で、まるでスパイが務まるのではないかと思うくらい、彼女は必要な情報を仕入れるのに長けていた。その様子から送り出し先がシンクタンクでも生き延びれるだろうと私は確信した。仕事振りや彼女の得意な整理分析、聡明さを感じさせる彼女の立ち居振る舞いが、高い評価を得ていたようだ。どうやったらそのように我が愛娘を育てられるのだろう、と思うあまり。判断材料は与え尽くした上で、「最後は梨乃ちゃんでないと決められない」ところまで二人三脚し、ラグビーのように最後は独りで。誰しもが通る辛い、覚悟を決める道。煮え切るまで時間をかける。最後は妥当な判断へ落ち着く。「ディシプリン型の専門が認知されにくい、幅広い融合理工学系だったが、これで認知が得られる専門が書ける、筋の通った履歴書につながる」と安堵。これ以上書けない。私の望みはリスクを排除し、キャリアを築いて活躍し、生き延びてもらうこと。父親が誰しも娘に思うことと同じ。そのトラックに載せてあげることが出来た。指導教員が出来る責任を全う。
ここまででも、相当なハードルを越えて、自分の進路を決めてきた彼女に、追いうちをかけるように、私から彼女への最大のプレゼントとなる提案を持ち込んだ。修士課程を半年短縮修了し、2024年4月勤務開始までの残り半年間の課程博士で、必要単位も全て取得し、2本目の査読付き論文を投稿し、残すは学位論文を仕上げるところまでエレベートすること。それまでの彼女のデキを熟知し、私との円満なコミュニケーションが出来ているからこその提案であるが、この文章をしたためながら今思えば、本学の普通の学生さんにはとても出来る話ではなかった。当たり前ながら「働いて時間かけてテーマ探して見つけたらその時に学位を考えます」と彼女。「それでは流されやすい貴女は永遠に学位を逃す。今なら目の前で学位をもぎ取れる。私の瞳の黒いうちに取って」と私。当たり前かも知れないが、自信がない彼女。「これと言ったディシプリンの専門を主張できなかった」採用面接が影を落としていたことに私が気づく。先延ばしのデメリットと、幅広い融合理工学系のシンクタンクへの高い適合性、短縮修了に割く少ないエフォートに対する莫大なメリットを説く。シンクタンクとアカデミックの2足のワラジの私の経験が、ここに活かされるとは。短縮修了の事務日程との時間勝負。周囲からは私が過熱してハラスメントの瀬戸際では心配される。「普通の教員と違って、私の研究推進のために博士課程に引き入れるのではない」と説明。これは事実。学部時代からお読み頂ければ分かるが、彼女に限らず彼女自身のテーマ。無事にスケジュール内に論文が受理され、早期修了の資格を得る。腹が座ったのか、自信を持てたのか、迷いも曇りもなく修論審査へ。何らの問題もなく合格へ。
彼女の目的意識と仕事の能力、お人柄の3拍子揃ってのことがあって、ここまでのアレンジが出来た。走る若いランナーと、年老いて走れないが伴走する監督のよう。
※教務課への照会での統計。2023年9月修了の前となる6月時点での(教育改革後の)修士短縮修了は80名(母数10670)。彼女の前の島田佑太朗時点では33名(母数3404)。初代Rezaさんは2016年以降入学で1年以上短縮修了博士学生は43名(母数1198)、ただしこの場合は旧課程で修士入学したケースも含むため、彼のように純粋に博士から入学したケースの数字は不明。
Bachelor’s testimonial
私は小学校高学年の頃に環境問題やエネルギー問題について学びたいと漠然と思い始め,今も変わらず再生可能エネルギーの技術自体やその効果に興味を持っています.研究室選択時には,「再生可能エネルギーが実際にどのくらい環境施策として有効なのか」や「太陽光発電や風力発電などの技術によって今後生じる問題は何であるのか」を追究できる環境を求め,複数の教授へ話を聞きに行ったのを覚えています.融合理工学系は前身の社会工学科の名残で人文科学・社会学系の研究室が少なくない中、本研究室はLCA (ライフサイクルアセスメント) など技術寄りの研究を行っている学生がいると知り,時松研究室を第一に希望しました.
コロナ禍での研究室所属となり,所属後から数か月は研究室に赴かず,在宅での論文閲読や国家公務員試験の勉強に苦心していました.国家公務員試験終了後は,学士特定課題研究の研究テーマを決めるべくさらに論文や報告書を読み進めました.私自身の問題意識に従い,研究テーマの方向性について毎週時松先生とお話しし,研究が既にかなり進んでいる分野であることが判明して困っていた時期もありました.なんとか研究テーマを決め,大学院入試を経て,データが揃ってきたところで環境情報科学ポスターセッションへの参加を目指し研究に集中しました.時松先生がポスターセッションへの参加を勧めてくださってから発表要旨・動画提出〆切まで約5週間と,研究1年目の私にとってはタイトなスケジュールではありましたが,学会への挑戦機会を得ることができ良い経験となりました.ポスターセッションのライブ質疑や2週間のインターンシップを終えた後,学士特定課題研究の報告書を執筆し,無事学士課程を修了することができました.
なお時松研究室には出身・年齢・興味のある分野が異なる様々なバックグラウンドを持つ学生が集まっています.融合理工学系の研究室の中でも特に留学生や他大出身者が多い研究室であり,今までの生活では関わることのできなかった学生と関わる機会があり,研究室メンバーとお話しするのは楽しく実りがあることだと思っています.
また自分の興味ある研究分野や自分なりの成果を伝えると、先生自身の知見から,将来の研究やキャリアに繋がるよう親身になってアドバイスをしてくださいます.先生や研究室の先輩から研究テーマを与えられるのではなく,ミーティングを通じて,私の問題意識に関連した研究テーマを自分自身で設定できたことができたのが良かったです.
Tokimatsu sensei's response(教員からのコメント)
ファーストコンタクトメールは、2年前2020年11月13日。珍しく内部学生。一週間足らずのうちにメール9往復。学部3年生のはずなのに、「かしこまりました」「お気遣いいただきありがとうございます」と丁寧なメール文面。「高いコミュニケーション能力と他者への配慮をお持ち」と、この1週間足らずで私が既に記すほど。
その時点で彼女の問題意識は既に高いことに驚かされた。「再エネ推進が世論の前提の中で、完全にクリーンなのか疑問」「先行研究が既に多く存在しそうであり、研究テーマとしてどのように設定できるか想像が付かない」「建設・廃棄などトータルで見てGHG削減や環境への悪影響は?」「再エネ推進が本当に政策や企業方針として最適なのか」と彼女。
多忙を極めていた私とは1時間程度オンライン。慌ただしく、まともにお話できなかったような記憶。その後、研究室学生/OBとのセッション。12月23日に早期配属決定で、研究室配属が確定。「この度は時松先生のもとで研究のご機会をいただけて嬉しいです」とメール。こんな感じで十分コミュニケーションもできないうちに決めてしまって、私で良いの??と。
年明けてからオンラインミーティング。先ずはコミュニケーションを深めることを目的として、とりあえず当面毎週90分オンラインミーティングで雑談しようか、と。さりながら、問題意識の高い彼女は論文を探し、通し番号を付してDropboxにアップロード。軽く目通ししメモも作成してアップロード、ご自身の関心との遠近を報告してくる。その報告を聞きながら、この内容だと◎◎大の××先生、などと色々浮かんでくる。それを伝えるだけで、彼女はその論文や関連論文まで探してくる。探した論文の通し番号は60超と記憶。整理されたメモ作成術、短く要領の良い的確な報告、メモ取り、など、およそ学部3年生には思えない。どうやって身に着けたの?
このテーマだとこれが必要、これはデータ収集が難しい、ここまで踏み込みたい?この方法だと多分こんな結果になる、これが貴女のやりたいことに近い?…などなど投げ込んで、お淑やかな彼女から赤い糸をたぐるように引き出す。時には講義のように説明しまくって90分で時間切れになることも。公務員試験の準備に入る4月頭までには、何となくの方向性の選択肢くらいまでは見えてきた。ここまで来て、貴女は私の研究室しか選択肢が無さそうだねと。公務員試験合格後の7月から少しずつミーティングを再開、A日程合格後の7月下旬から始動、盆休み明けから本格的に。研究の興味がさらに変わり、「あれ?あの話はどこへ?」と私、「そう言う話もありましたね~どこかに行っちゃいました(笑)」と彼女。今のテーマに9月に落ち着き作業開始。
膨大なエクセルを駆使したデータ収集と分析の速さに、毎回のミーティングで驚かされる。事前準備、作業を進めて、それを私に見せてくれる。弦楽四重奏でバイオリンを弾いていたという彼女は、おそらく、バイオリンのレッスンで先生にみてもらうように、私に持ってきてくれたのでは、と。最後の最後までコマゴマした修正に取組もうとする。普通は面倒がって膨大なエクセルの修正を自らやりますとは言わず、言われて渋々なのに、と。本質的に肝心なところを外さず、結果や結論に影響を与えないマイナーなところはスキップしよう、というと素直に進めてくれる。膨大なエクセルの修正は半月に1度くらい?スライドや報告書の修正もご自身で何度も行う。お淑やかな彼女は苦を感じさせず、飄々と行う。これは霞が関でもシンクタンクでも仕事が出来るけど、そこで疲弊させる人生はちょっと勿体ない。研究のオリジナリティというものも理解していて、アカデミック研究者にも向いている。けど一癖ある研究者の分野に、お淑やかな彼女は適合するか?1年後には本人が見極めて意思決定して就活に入れるよう機会を考えねば、と。
10月頭に環境情報科学のポスターセッションの案内が来たので「好タイミングだからやってみる?」。嫌がるのでは、という懸念は杞憂。前向きにポジティブに取り組む。コロナが収まった頃にお誘いして、初めての対面を10月28日に。画面越しの2D彼女に見慣れ、3D実物とのギャップに目が慣れない。彼女の分析と研究の進みがあまりにも速く、先回りして機会を作るべき指導教員が遅れを取る始末。こんなことなら1月末のエネコンを先見越して申し込んでおけば良かった、と。政策にも関心があるので研究室OB(高木さん)が居るPCKKさんにインターンのお世話になることに。12月にはポスターセッションとインターン。初陣なのにポスターセッションでは学生の部で最優秀の理事長賞を受賞!本人も指導教員も驚き。インターンでも研究テーマに近い内容で経験をさせて頂きました。
このようなコミュニケーションを積み重ね、査読付き論文を目指し、次のインターンの機会を探りながら、次の研究探索を行い続ける彼女を乞うご期待。