5部
・ソナタ第3番 Sonate Nr.3 f-moll Op.5 [J. Brahms]
Ⅰ. Allegro maestoso
Ⅱ. Andante espressivo
Ⅲ. Scherzo. Allegro energico - Trio
Ⅳ. Intermezzo. Andante molto
Ⅴ. Finale. Allegro moderato ma rubato
◆曲紹介・思い
ブラームスはバッハ、ベートーヴェンと並び、「ドイツの三大B」に数えられる作曲家です。ブラームス自身も大作曲家であるベートーヴェンを特に尊敬しており、満を持して出版した交響曲第1番 Op.68は「ベートーヴェンの第10交響曲」と称されたほどです(保守的という揶揄でもあったかもしれませんが)。
ピアノソナタ第3番 ヘ短調 Op.5
I. Allegro maestoso
II. Andante espressivo
III. Scherzo;Allegro energico - Trio
IV. Intermezzo;Andante molto
V. Finale;Allegro moderato ma rubato
ブラームスのピアノソナタは全3曲あり、全て20歳までの初期に集中しています。特に第3番は全5楽章からなる大作で、内容や響きも充実しており、20歳の作品とは思えないほど規模の大きい秀作です。その分弾き手への要求も多く、非常に難易度の高い作品に仕上がっています。
この作品を初めて聴いたのがいつだったかもう覚えていませんが、ずっと前から「上手になったらいつか弾きたいな」と漠然と意識していました。ただ、今までこういった曲は上手な人が弾くものだと思っていて、自分が弾かなければならないとは全く感じず、本当に「いつか」弾くのだろう程度に思っていました。気負うような曲や要求の多い曲は自分に合っていないと常々感じていました。
今でもそういった気負いがなくなった訳ではありませんが、より差し迫って自覚するようになった問題があります。それは「自分の演奏はいつがピークなのか?」という疑問です。仕事やプライベートの変化で練習時間が減り、気持ちの上でも余裕が少なくなったことで、以前のように音楽に没入できないと感じるようになりました。また衰えと言うと大げさですが、暗譜や難しい箇所を弾けるようになることに時間を要するようになってきました。「いつか」弾ければいいと言っているようではいつまでもチャンスは訪れないと思い、この大曲に挑戦することを決心しました。
ピアノソナタ第3番は壮大で色とりどりの魅力にあふれ、まるで果てしなく高い山に登っているような気持ちになります。弾く側になったからこそ感じる試練があり、ただそれは逆に特権でもあるのかもしれません。時に躓き、時に雨に打たれて、その先でどんな景色が見えるのでしょうか。みなさんと少しでもその景色を共有できるよう、気を引き締めて本番に臨みます。