最近,ウエブ上で固体電池という言葉にお目にかかるようになった,固体電池と入力し,Googleで検索すると1ページ目に次の記事が表示される(平成31年4月下旬).
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
全固体電池(ぜんこたいでんち)とは陽極と陰極間のイオンの伝導を固体の電解質が担う電池で、一次電池と二次電池の双方にある。
概要[編集]
従来の電池は一次電池と二次電池を問わず、電解質が液体であったため、電解質の蒸発、分解、液漏れといった問題が付きまとって来た。電解質を固体にすることは開発者達にとって積年の課題で幾多の技術者、研究者が挑んできたものの、実用化に至ったものは一部に限られた。課題となるのは電解質のイオン伝導性で実用のためにはハードルが高かった。近年、電気自動車の普及とともに各国で開発が活発化しており[1][2]、実用化のため自動車メーカーや電機メーカーが研究に投資している[3]。
種類[編集]
固体電解質には、酸化物系や硫化物系のような無機系固体電解質や高分子系等、有機系固体電解質、さらに水分を含むウェット系電解質と水分を含まないドライ系電解質に分類され、それぞれ一長一短がある。
特徴[編集]
数分で充電が可能、液漏れの心配が無い。
課題[編集]
電解質と電極の界面抵抗が高いため高速充放電が難しい[4]。
ドライ系に限らず低温ではイオン伝導性が下がる場合が多い。
復習 一次電池と二次電池(Wikipedia)
一次電池(いちじでんち)とは、直流電力の放電のみができる電池(化学電池)であり、二次電池に対するそれ以外の電池のことである。二次電池が登場した際にレトロニムとして区分された呼称である。
二次電池(にじでんち)は蓄電池(ちくでんち)、充電式電池ともいい、一回限りではなく充電を行うことにより電気を蓄えて電池として使用できる様になり、繰り返し使用することが出来る電池(化学電池)のことである。
二次電池 Wikipediaの図を引用
鉛蓄電池.Ni-Cd電池,Ni-H電池等の電池は,電解液と電極の間での化学反応(酸化還元反応)を伴うため,電解液が必須である.酸化還元反応は電極と電解液の間で怒り,電極間を行き来するのは電解液由来のイオンである.
Liイオン電池の場合は,電極間でLi+イオンを直接やりとりするので,電解液はLiイオンの単なる通り道に過ぎない.Liイオンが正極と負極間をシャトル便ののように行き来する.電解液と電極の間での化学反応(酸化還元反応)を伴わないため,原理上は電解液は不要である.
Liイオン2次電池に代表される電池は「ロッキングチェアー型あるいはシャトルコック型電池」と呼ばれている..
左図は日経XTECKの記事から引用
全固体電池といっても,リチウムイオン電池だけではない.ごく最近,全固体型のアルミニウム空気二次電池を作成することに成功したと報道された(平成31年4月24日,冨士色素).とはいっても,研究の主流は液体電解液方式のリチウムイオン電池であるので,まずリチウムイオン電池について調べてみた.
リチウムイオン電池は,電解液の中に負極と正極を浸した構造を有している.リチウムイオン電池の多くは,正極がリチウムを含む化合物,負極は炭素でできている.
リチウムイオン電池の充電・放電の原理を単純化すると以下のように説明できる.
充電のプロセスでは,正極側から負極側にリチウムのイオンが電解液中を移動して負極に取り込まれ,放電のプロセスでは,負極にたまったリチウムイオンが電解液中を正極側に移動する.
電解液というのはリチウムイオンが移動できる性質を有する液体であり,現在のリチウムイオン電池の多くは電解液として有機化合物を使っている.
しかし,電解液に有機化合物の液体を使っているため,高温や低温に弱いらしい.高温域では揮発性が高くなるため70℃が上限であり,また低温ではイオン伝導性が低下するため,下限は-30℃程度とされている.
これに対して,全固体電池は,有機系電解液をイオンが伝導可能な「固体電解質」に置き換えたものである.現在開発が進められているのは,硫化物や酸化物といった無機材料であるが,樹脂系の材料を検討している企業もある.ちなみに日立造船は硫化物系、FDK(古河グループ)は酸化物系であると紹介している記事がある.硫化物や酸化物は製造過程で500~1000℃に加熱するので,耐熱性に優れ100℃程度でも問題はないらしい.一方,低温側の性能低下は有機系電解液と同じ傾向ではあるが,性能低下の度合いが少なく,-30℃でも問題はないらしい.さらに,リチウムイオン電池のような液漏れが発生しないので真空環境でも使えるため,宇宙環境でも問題なく使えるという.
電池を画期的に小型化することが可能で,急速充電が実現できる点が注目されている.
電解質が液体から固体に変わっても電池のエネルギー密度は大幅には変わらないらしい.それでも小型化が可能なのは熱に強いことだそうである.
現在のリチウムイオン電池は熱に弱いため,急速充電時や(大電流を放電する)高速走行時に発生する熱を逃がすために,電池の周囲に隙間を置いて配置したり,冷却装置を設置することも多いとのことである.
全固体電池は熱に強いので,隙間を小さくしたり,冷却装置を省くことが可能になる.また,構造的に熱の発生を抑えることが可能という.
現在のリチウムイオン電池では,モーターの駆動に必要な電圧を得るために,複数の電池セルを直列につないでいる.全固体電池は,電池セルを多数積み重ねた構造にすることができる.すなわち, 正極と負極を裏表に張り合わせたような形でセルを多層化できるので,セル間を流れる電流は断面積の大きい経路を通ることになり,セル間を配線で結ぶ従来型の電池に比べて電気抵抗を大幅に低くできるため,大電流が流れたときに発生する熱を少なくすることができる.
Web情報をまとめると,リチウムイオン固体電池とは以下のようなものと考えることができるようである.
従来型の鉛蓄電池,Ni-Cd電池, Ni-水素電池などでは,電極間を行き来するのは電解液由来のイオンであるため,電解液が必要であったが,固体電池では.電極ー電解液間の化学反応なしで,Liイオンを電極間で受け渡すことが可能であるため,セパレーターに固体電解質を用いればよいというわけである.そのために必要な固体電解質の開発がゴールに近づいたということのようである.
従来型のLiイオン蓄電池
Liイオン固体電池
実用化されると,
「全固体電池」は従来のリチウムイオン電池やニッケル水素電池に比べ,充電時間が短く,また,電池容量も大きくなり,電気自動車 (EV) にとっては航続距離が長くなると予想されている.
(2019/6/6)