「お慕い申し上げております」
判で押したように似たような言葉が並んだそれを、男は鼻で哂う。
そして、無造作に文箱に仕舞い込もうとしたが、文箱にはすでに大量の恋文が仕舞い込まれ入りきらなかった。
男は肩をすくめると文箱を持ち庭へ降り、文箱を逆さにする。
バラバラと地に落ちた恋文たち。
その重なる大量の恋文に向けて、男は炎を落とすと、赤い舌が紙を舐める。
チリチリと燃え行く恋文は身を燻らせ、徐々に黒く染まっていった。
恋文が吐き出したどす黒い煙は、焚火に背を向けた男に纏わりつく。
自身に纏わりつく煙のただならぬ気配を感じて男は……
恋文が燃え尽きた頃、庭には一匹の狸が鎮座していた。
あたりを眺めて小首をかしげる狸の足元を風が走り抜け、黒い塵を巻き上げ消えていくのだった。