2025/8/31 日本外来小児科学会
第34回年次集会こどもどこセミナー
「多様な視点からVPDについて考えてみよう!」
2025/8/31 日本外来小児科学会
第34回年次集会こどもどこセミナー
「多様な視点からVPDについて考えてみよう!」
2025年8月30日、31日に日本外来小児学会の年次集会が香川県の高松で開催されました。
本学会では、31日にこどもどこが主催となりセミナーを実施しました。
VPD(Vaccine Preventable Diseases)とは「ワクチンで防ぐことのできる病気」を指します。
本セミナーでは、VPDについてさまざまな視点から考えようというテーマのもと、ご講演を拝聴したのちグループでのディスカッションを行いました。
講師には、日本外来小児学会理事・NPO法人VPDを知って子どもを守ろうの会理事の時田章史先生、風疹をなくそうの会「hand in hand」共同代表の可児佳代様のお二人をお招きしました。
【時田章史先生 ご講演】※スライドは全て時田先生発表資料より抜粋
① NPO法人VPDを知って子どもを守ろうの会の紹介
NPO法人VPDを知って子どもを守ろうの会は、VPDに関する正しい情報を広めることを目的とし、保護者、医療・保育・教育関係者、一般市民に対して啓発活動を行っています。また、日本で初めてVSN(Vaccine Safety Net)メンバーとして認定されています。
②小児科開業医目線からの予防接種
ワクチン接種に伴う医療過誤や副反応といった問題に対する議論がある中で、小児科開業医としては「接種時の間違いをいかに所ぐか」という視点が重要です。
具体的な対策としては、間違いやすい項目を把握した上で、
・母子手帳の記録と確認の徹底
・ワクチンカラーのトレイを使用
・接種順に沿った待機
・保護者から子どもの名前と接種内容を口頭で確認する
・スタッフ全員が接種業務に集中し、相互に確認する といった方法が紹介されました。
また、医師としてワクチンに関する正しい知識を持つことの大切さについてもお話がありました。接種部位や方法の正しい理解、法定接種と任意接種の違い、ワクチンの作用機序などをしっかり理解しておくことは、診療における安心と信頼だけでなく、医師が自分自身を守ることにも繋がります。
「Vaccine Hesitancy」の要因を説明する5Csモデルや、認知バイアスが人々の判断に影響を与えることについても触れられました。こうした背景を理解した上で、ワクチンの意義をどのように社会に伝えていくか、参加者一同、改めて考えるきっかけとなりました。
➂未来の小児科医の皆さんへ
最後に、時田先生が院長を務める「クリニックばんびぃに」の取り組みに関してご紹介いただきました。「ばんびぃに」では、産後のデイケアや病児保育室の運営を行っており、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援の重要性についてお話しいただきました。
【可児佳代様 ご講演】※スライドは全て可児様発表資料より抜粋
①当事者としての経験
可児さんの長女・妙子さんは、先天性風しん症候群(CRS)として生まれ、目・耳・心臓に障害を抱えながら18年を生き抜きました。最後に残した「お父さんとお母さんと私はがんばりました」という言葉は、今も活動の原点となっておられます。
②「hand in hand」の活動
可児さんはその後、同じくCRSの娘をもつ西村麻衣子さんと出会います。麻衣子さんは娘と同い年であったことから、可児さんは娘と同じ世代に同じ思いをさせてしまったと悔やみ、長女から「何してるの、お母さん」と叱られた気分になったそうです。西村さんとともに立ち上げられた、風疹をなくそうの会「hand in hand」は発足から今年で12年が経ちます。SNSでの発信や国への働きかけ、学会や学校での啓発活動などを続けておられます。
➂社会に伝えたいこと
「風しんの流行は過去に繰り返されてきた。二度と同じことを繰り返さないために、ワクチン接種の重要性を社会全体で理解し、未来の子どもたちを守っていく必要がある。」など、当事者の生の声から多くの学びを得ました。
【ディスカッション】
お二人のご講演の後には、医学生・研修医・医師・「hand in hand」で活動されている当事者の方など、様々な立場の参加者でグループディスカッションを行いました。
ディスカッションでは、
・じぶんごととして捉えることがワクチン接種につながると思う
・生の声を聞いて意識が変わった
・先天性風疹症候群やVPDについて知らない人が多いので、私達が知り、伝えていく事が大事
など、様々な意見・感想が上がりました。
【まとめ】
本セミナーでは、時田先生からは「小児科医として」の立場から、可児様からは「当事者として」の立場からお話をしていただきました。そして最後には、様々な立場の参加者全員でのディスカッションを実施し、演題名の通り、VPDについて様々な視点から考えることのできる、貴重な機会となりました。
最後になりましたが、講師の時田先生ならびに可児様、本セミナーの開催にご尽力くださった皆様、そしてご参加いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。