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発表⑦ スクランブル身体による全身所有感から身体部位所有感の分離

発表者:近藤亮太(慶應義塾大学)

発表要旨

【目的】 全身所有感は,人の身体性自己意識を調べるために重要な現象だと考えられている。しかし,身体部位への所有感と身体全体への所有感の違いについて完全には明らかとなっていない。それは,この2つの所有感を分離する良い方法が見つかっていないからである。本研究では,全身所有感から身体部位所有感を分離する方法を開発することを目的とした。 【方法】 バーチャルな手足のみによる透明身体刺激をもとに,手と足の位置をランダマイズしたスクランブル身体刺激を作成し,通常の身体と同じ配置の刺激と比較した。手足はモーションキャプチャで取得した被験者の運動に同期(または非同期)して動き,ヘッドマウントディスプレイを通して提示した。実験では,それぞれの身体刺激における全身所有感と身体部位所有感の強さを計測した。 【結果】 その結果,視覚と身体運動が同期しているとき,スクランブル身体刺激では身体部位所有感のみ生じるが(バーチャルな手足のみが自分の身体の一部であると感じる),通常配置身体刺激では身体部位所有感と全身所有感(手足の間の空間に透明な全身を感じる)の両方が生じた。 【結論】 これらの結果は,身体部位の空間的配置が適切であることが全身所有感に必要であり,身体部位所有感には必ずしも必要ではないことを示唆する。