発表動画

発表⑥ 複数の潜在的目標が存在する状況での運動制御の柔軟性

発表者:女川 亮司 (早稲田大学)

発表要旨

[目的] 日常では、複数の動作目標がある中での運動実行がしばしば求められる。先行研究では、動作開始時に2つ以上の潜在的目標があり、最終目標が動作開始後に一度に判明する状況が検討され、潜在的目標の平均位置に向けて運動が開始されること(平均化行動)が示された。一方、スポーツなどで散見される、3つ以上の潜在的目標から最終目標が段々と絞られる場面では、残る目標の平均方向に動作を常に修正することは運動コストの点で適していない可能性がある。そこで本研究は、最終目標が段階的に判明する状況で平均化行動がとられるか検証した。 [方法] 参加者(N=14)は、最終目標の候補が動作遂行に伴って3、2、1つへと段々と減る中で、最終目標への到達が求められた。3つから2つになった後の動作修正を、平均化行動モデル(対照条件[3つから1つになる]の行動から推定)と比較した。 [結果] 最終目標の判明前までの動作修正は、平均化行動よりも有意に抑制された。 [結論] 本研究は、目標が段階的に絞られる状況では、平均化行動からの逸脱が生じることを発見した。この結果は、先行研究で示された平均化行動はそれ自体が規範なのではなく、最適化の過程を反映していることを示唆した。なお、本発表では進展中の関連研究についても紹介する。