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発表⑤ 注意の瞬きは生後1歳未満の乳児でも生じる

発表者:鶴見周摩 (中央大学大学院)

発表要旨

低次の視覚機能(方位弁別など)に加えて高次認知機能(注意など)も生後1年の間で劇的に発達する。例えば,空間的な作業記憶の容量は生後8ヶ月頃で成人に匹敵する(Oakes et al., 2011)。しかし,作業記憶の時間的側面が空間的側面と同等に発達するかは不明であり,どのくらいの速度で視覚情報が作業記憶内に書き込まれているかは謎である。本研究では生後7-8ヶ月の乳児を対象に注意の瞬きが生じるかを調べることで,視覚処理の時間的限界の発達を明らかにすることを目的とした。注意の瞬き(attentional blink)とは,2つの情報を処理する際にその間の時間間隔が短い(500ms以内)と2つ目の情報を見落とす現象であり(Raymond et al., 1992),作業記憶の時間的限界を表す指標となる。実験では,2名の女性顔(標的)を含む刺激系列を繰り返し乳児に提示し学習させた。2つの標的の時間間隔として,成人で注意の瞬きが生じる200msと生じない800msの2条件を用い,各条件において乳児が2名の顔を同定できるかを調べた。実験の結果,800ms条件では2名の個人同定ができたが,200ms条件では2つ目の顔を同定できず注意の瞬きが生じた。この結果から,作業記憶への書き込みが成人に劣らず800ms以内には完了することが示唆された。