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発表④ VR実験における視聴覚刺激呈示の正確性と精度: 方法論研究からの再現性向上

発表者:立花良 (東北大学大学院 情報科学研究科)

発表要旨

目的  本研究目的は、VRヘッドマウントディスプレイ (VR HMD) による視聴覚刺激呈示の正確性と精度の体系的実証である。従来の実験室実験よりも高い実験制御と生態学的妥当性を両立できるため、VR HMDを用いた知覚認知研究は世界的に増加している。近年では心理学実験で主流のPythonによる安定した制御も可能であり、研究手法に大きな展開が見られる。しかし、刺激呈示におけるミリ秒単位の正確性と精度 (正確な呈示時間や安定した呈示遅延) が必須の心理学実験において、こうしたVR環境がどこまで高い正確性と精度を持つかは未解明であり、具体的な指標値の実証が期待されている。 方法  近年主流のVR HMDおよびPythonによる最先端のVR実験環境を用い、視覚・聴覚・視聴覚刺激呈示する際の正確性と精度をミリ秒単位で測定する呈示評価テストによって検討した。 結果  視覚では一貫して18ms (誤差1ms) の遅延がある一方、聴覚の遅延はVR HMDによって異なり38または57ms (誤差4ms) であった。視−聴覚間のズレもHMDによって異なるが19または39ms (誤差3ms) と安定しており、視聴覚同時呈示によって精度は低下しなかった。呈示時間は視覚・聴覚・視聴覚で正確 (誤差1ms以下) であった。また、呈示時間の調整により遅延を4ms以下に修正可能なことも解明した。 結論  本研究からVR実験における視聴覚刺激呈示の正確性と精度が解明され、心理学実験への指標値を提供できた。