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発表③ 恐怖条件づけのデータを用いた連合学習モデルの定量的評価

発表者:二瓶正登 (専修大学)

発表要旨

古典的条件づけに関する多くの現象は連合学習理論の観点から説明が行われており,呈示された刺激が持つ特性および個体・個人内で生じていると仮定される心理学的概念と,経験により生じた時系列的な学習過程や観察された条件反応の間にある関数関係を数理的に表現した連合学習モデルが多く提案されてきた。しかしながら,従来の基礎研究においてそうしたモデルの評価は「群間に有意な差があるか」という定性的な判断に落とし込まれた知見に基づき検討されることが多かった。こうした手法は手続きの効果を検証するためには有益であるものの,モデルが仮定する数理的表現を定量的な観点から評価することが困難であるという欠点を持つ。そこで本発表においては恐怖条件づけ事態における恐怖の獲得,消去手続きによる恐怖反応の消失,そしてその後の文脈刺激の変化に伴う恐怖の再出現に関するヒトおよびラットを対象とした3つのデータセットを用いて,既存の2つの主要な連合学習モデル,そして発表者が新たに構築したモデルが与える計3つの数理的表現がデータの傾向と一致するかを統計モデル上で検討した分析結果を示す。この結果に基づき,連合学習モデルが個体・個人のデータの傾向を適切に表現できているかの議論を行う。