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発表② 空間更新課題における視聴覚作業記憶の共通性

発表者:前澤知輝 (北海道大学)

発表要旨

視聴覚の空間情報は,入力段階では分離した知覚システムで処理されるが,保持の段階においては同じ作業記憶システムを共有しているというモデルが考えられてきた。本研究では,空間更新課題を用いて,表象更新の遂行に関わる視聴覚プロセスの機能的な類似性を検討した。この課題において,参加者は逐次呈示される視聴覚方向手がかりに従って標的位置を心的に更新し,移動地点を特定した。心的操作の最中に,方向手がかりのモダリティが無作為に切り替わる条件と,切り替わらない条件が無作為に操作された。更新遂行の基盤がモダリティに特異的である場合,入力情報に対して注意の切り替えを要するため,更新の遅延や失敗が生じると考えられる(切り替えコスト)。逆に,切り替えコストが生じない場合は,共通プロセスを支持すると考えられる。 実験の結果,モダリティ混合条件と単一条件の課題成績が等しくなり,モダリティ切り替えによるコストが観察されなかった。また,方向手がかりに関わらず時空間的なエラーパターンの分析が類似していた。これらの結果は,共通プロセスを支持し,逐次入力される視聴覚情報はコストなく切り替えられ,更新に利用できるという作業記憶の性質を明らかにした。