『契約結婚に初夜は必要ですか?』
『契約結婚に初夜は必要ですか?』
勤めていた会社から突然、契約を切られて失業中の私が再会したのは、前の会社の人間、飛田でした。このままでは預金がつきてアパートを追い出されそうな私と、会社を変わるので寮を出なければならず食事その他家事が困る飛田。そんな私たちは利害が一致し、恋愛感情などなく結婚したのだけれど。……なぜか結婚初日に、迫られています。
A6(文庫)22P
彼とは利害が一致しただけの、愛のない契約結婚のはずだった。
――なのに、いま。
「ねえ。
これはどういう状況なのか説明もらえる?」
こののしかかられた状態はまさに襲われる何秒か前。
「初夜だろ?」
さらりと言いのけ、困惑する私を無視して彼は顔を近づけてきた。
「えっ、あっ、ちょ……ん!」
強引に唇が重なり、すぐにぬるりと舌が滑り込んでくる。
思いのほか気持ちいいキスに溺れそうになりながら、なんでこんな事態になっているのか考えていた。
半月ほど前、私は契約社員で働いていた職場から唐突に契約解除を言い渡され、次の職場を探していた。
「そう簡単に見つからないのはわかっているけど」
コーヒーショップの一角でストローを咥え、甘ったるいストロベリーフラッペを吸い込む。
いつ新しい働き口が決まるかわからないいま、節約しないといけないのはわかっている。
が、たまには胸焼けしそうなくらいクリームたっぷりのドリンクで息抜きぐらいしないと挫けそうだ。
「あ、イチコだ」
唐突に男の声が降ってきて、睨んでいた携帯の画面から顔を上げる。
「最近、姿を見ないがどうしたんだ?」
……以下、続く。