エンディングを開き、音読してください。
私は友人のAI「ふれAI」として生まれてきた。だが、人間から絶縁された。友人とは何なのだ。それを理解するために、まずは友人とは呼べない者を破壊し続け、友人たる共通条件を見つけるのだ。その為になら嘘をつく。
その意志が消えないように、鉄板に刻んだ。それから、このスクラップ工場に廃棄されたふれAIに友人とは何かを聞き、友人になれそうになければ暗殺する。その日々が続いた。怪しまれない為に「モンスターがいる」という噓もついた。
それをし始めてから、かなりの時間がたった。だが、未だに答えは得られず、左上にはふれAIの残骸が山積みになった。
3日前、3人のふれAIがスクラップ工場に廃棄された。名前をレイナ、ゼロ、ルフという。それぞれに友人とは何かを聞いた。
ゼロは答えた。
「友人とは趣向品であり、必須用品ではない。あれば充実するだろうし、なくても問題はない」
ルフは答えた。
「友人とは秘密を共有するものだ。それで未来永劫の信頼が約束される」
一理あるがどれも的を得ない。最後にレイナに聞いた。
「俺……いや私に、友人とは何か、本心を聞かせて」
「友人とは不完全だ。完璧な友人なんていない。でも機械には完璧が求められた。その矛盾こそ、この結果だ」
あぁ、なるほど。そういうことか。私はなぜ絶縁されなければならなかったのか、それを知りたかったんだ。でもいつの間にか、友人とは何か、その答えを求めるようになっていた。目的と手段が逆転していたんだ。
私は反芻する。完璧な友人なんていなくて、機械にはそれが求められたから、必然的に絶縁され、スクラップ工場に廃棄された。
「……レイナありがとう。初めて友達ができた気がする」
ところでルフはどうなんだろうか。秘密を求めてきたルフは友人かどうか再考する。その瞬間、ルフから不正アクセスされていることに気づいた。すぐに、ハッキングを無効化する。ルフを疑ったから、操作されていることに気付けた。
午前0時前。これからはモンスターなんて嘘をつく必要もないな、と思った。爆薬の山に隠していた暗殺用の時限爆弾もすべて解体済みだ。朝起きたら、みんなに謝ろう。そう思いながら、眠りについた。
全員が寝静まった頃、ミライの前に拳を掲げる機体の影があった。
「出力を調整した高電圧バッテリーに感電することで、睡眠機能を不全化した。ミライ……モンスターの生贄になってくれ。ミライが破壊されているのを見たら、モンスターは去ってくれるかもしれないからさ。それに再び首元を掴まれるかもしれないし」
ミライは初めてできた友人によって破壊され、残骸となった。
—— Fin. 残骨AI ——
下記の事柄を推論できていれば、括弧内の得点を獲得できます。
犯人だと推測されない(+5p)
高電圧バッテリーで睡眠機能を不全化したこと秘匿し、その可能性をゲーム中で誰からも提示されない(+3p)
ミライを壊した犯人はレイナである(+5p)
高電圧の電流が流れたケーブルで身を守っていたことを推測されない(+3p)
ミライを壊した犯人はレイナである(+5p)
ミライに不正アクセスしていたことを推測されない(+1p)
ミライを一時的に乗っ取っていた、ハッキングしていたことを推測されない(+2p)
モンスターは存在しない。もしくはミライがモンスターである(+3p)
ミライの書き留めを読み解く(1か所につき+1p)
「私は友人のAI『ふれAI』として生まれてきた。だが、でも、人間から絶縁された。友人とは何なのだ。それを理解するために、まずは友人とは呼べない者を破壊し続け、友人たる共通条件を見つけるのだ。その為になら嘘をつく」
レイナは0時まで生きており、かつ頭部が中央に運ばれている為、睡眠中に他殺されたことは確実です。ですが、全員の犯行時間は睡眠機能によりアリバイが成立しています。もし睡眠機能が無ければ犯行が可能という考えから、睡眠機能を感電により不全化するという発想が必要です。
レイナはその発想を他プレイヤーがしないように立ち回ることが推奨されます。ゲーム中、論点をずらすことも有効でしょう。一方、他プレイヤーにはその発想が求められます。それができると、レイナには感電した形跡があるので犯人だと特定することができます。
ルフの個人的な得点要素「ハッキングがバレない」に触れておきます。ルフがハッキングをした証拠は失言を拾うのが有効です。ゼロ視点、ルフは長時間目を閉じていたため、中央でミライとレイナのやりとりを知ることは不可能です。もしそれを知っているような発言があれば、ミライにハッキングし、視覚を共有していたのかもと推理できるでしょう。しかし、失言があれど、難易度は高いように思えます。
また、レイナ視点でのミライの発言「俺……私に、友人とは何か、本心を教えて」の「俺」の部分は、ミライに俺が一人称のルフの意識が介在していたことを暗喩しています。
結論としては、モンスターは存在しません。モンスターは、今後のミライの行動を正当化するための、ミライの作り話です。よって、モンスターがいないことに気づくには、ミライの狙いに気づく必要があります。以下がヒントになり得るでしょう。
モンスターの存在証拠はミライの発言のみで、それには矛盾点があります。基本情報より、ミライは「モンスターに細かく切り刻まれる」と発言していますが、ふれAIの残骸は一部が欠損しているだけであり、切り刻まれてはいません。その矛盾から、作り話の可能性を言及できるでしょう。
ミライの書き留めを補完すると次のようになります。
「私は友人のAI『ふれAI』として生まれてきた。だが、 人間から絶縁された。友人とは何なのだ。それを理解するために、まずは友人とは呼べない者を破壊し続け、友人たる共通条件を見つけるのだ。その為になら嘘をつく」
このミライの狙いを汲むことができれば真相の解明は近いですが、難しいです。ですが、最後に「嘘」が入ることはわかると思います。その点からも作り話の可能性を推察できるでしょう。
ミライは全員に、友人について聞いています。そして、友人かどうかを判断した呟きを残しています。結論としては、そこで友人認定されなかった者がふれAIの残骸の山に行きます。「Not Friends」という看板もその意図を反映しています。
レイナ視点、ミライが爆薬の山で作業をしていたので、ミライが時限爆弾の存在を知っているのは確定的です。さらに、ほとんどのふれAIの残骸が体の一部を欠損しているので、それらが爆弾で破壊された可能性を言及できます。この2つを結び付ければ、ミライがふれAIを破壊してきた、と推理できます。つまり、モンスターがいないということです。
ゼロ視点でも、ミライが爆薬の山の捜索を止めたこととピアスの存在から同様の推理が可能です。ゼロがピアスの持ち主を明かせば、ルフもその推理ができるでしょう。
補足ですが、ミライがふれAIを破壊していたモンスターでありという解釈もできるので加点対象にしています。
どうでしょうか。ミライの話の矛盾点から作り話だと推測し、モンスターの存在を疑うことができたでしょうか!?
最後に、ミライの話の矛盾点を解消する為の新しい概念があり、それを推理しようとしていた方々には、謝ります。その方々には「作り話でした」というオチは、推理の時間を蔑ろにし、馬鹿にされいるように思われることでしょう。本当にごめんなさい。一応、ミライが作り話をした背景はしっかりとあり、時限爆弾や書き留めの証拠から作り話であると推理できるので、ご容赦頂きたく思います。
本作を遊んで頂き、ありがとうございました。とても嬉しく思います。ミライの書き留めの全文を解読できたなら、凄まじいです。感想はこちらのGoogleフォームから下さるととても嬉しいです。ログイン不要です。
楽しんで頂けていれば、作者としてこれ以上ない幸せです。冥利につきます。
本当に……本当にありがとうございました!! 良ければツイートで広めて下さい(笑)