第43回KG CAPS研究会 1/23 春原桃佳 先生(Concordia大学)

講演者:春原桃 先生


日時:2021年1月23日(土)10:00-12:00

場所:Zoom開催


タイトル:うつ病の説明モデルの文化的共通知識の検討:混合研究法を用いた日加国際比較 

発表概要:人々が心の病をどう捉え、解釈しているかは各自が抱く価値観、経験、立場によって大きく異なる。患者は個人的な経験や内的世界を元にした自らの 「病い(illness)」の解釈である“説明モデル”を持っており、治療者側の生物医学的な「疾患(disease)」の説明モデルとは根本的に異なっている。臨床現場では「病い」も「疾患」も対等にそれぞれのリアリティである。また、説明モデルが文化によって異なり、必ずしも欧米発祥の理論的枠組みが日本文化に当てはまらないことを問題として定義し、日本文化固有の説明モデルを検討することが必要である。本発表では、うつ病の説明モデルとして、話題提供者が計画している日加間比較文化研究を紹介する。この研究では、近年認知人類学で知識や文化、心理面への混合研究法の一手法として着目されてきている、カルチュラルコンセンサス・アナリシス(CCA)の理論・方法論を用いる。CCAを用いた研究は心理学ではほとんど周知されておらず、文化比較研究も数少ない。また、心理学において混合研究法の研究蓄積が少ないこと、CCAの手法を紹介する和文文献が限られていることなどから、CCAを用いた研究は日本の心理学においてもほぼ皆無である。心理現象やプロセスをボトムアップのアプローチで検討することができ、また心理学と文化研究の融合を可能にするCCAの有用性についてディスカッションしたい。