Googleブックス

歴史的資料の検索


国立国会図書館デジタルコレクションにおける検索において,「道君首名」等で検索した場合,ヒットするのは「道君首名」,「道首名」を取り扱った後世の単行本などである.古文書は画像のため,語句検索はできない.ところが,Googleブックスでは,古文書(正確には後世の印刷版の画像データ)からも,検索可能であり,記載されている書籍,記載箇所を探すことができるようになっていることが判った.以下紹介したい.

まずはキーワードで検索してみる

Google検索で,すべて,ニュース,動画,・・・・の中の書籍を選択して「道首名」で検索すると「道首名」の語句を含む書籍一覧が表示される

「道首名」の語句を含む書籍の検索結果から,「続日本紀」に焦点を絞り,国史大系:続日本紀(菅野真道等撰)第2巻を選択.

クリック結果

ページ内にキーワード(道首名)は含まれているが,肥後国司に関する記述ではなく,律令制定に関与した記述である.

文武天皇の世, 律令国家の基本法典である大宝律令の制定に刑部(おさかべ)親王, 藤原不比等(ふひと)等と共に学者の一人として参加した.

この書籍内に27個の記載があるので,次々に表示させて該当箇所を検索.

11番目の結果

多くの書籍に引用されている「肥後国司」に関する記載個所は3−8行目

〇酉辰 筑後守正五位下道君首名卒.・・・・及卒百姓祀之.

○酉辰.筑後守正五位下道君首名卒。首名少治律令。暁習吏職。和銅末。出為筑後守。兼治肥後国。勧人生業。為制修教耕営。頃畝樹菓菜。下及鶏肫。皆有章程。典盡事宜。既而時案行。如有不遵教者。随加勘當。始者老少竊怨罵之。及収其實。莫不悦服。一両年間。国中化之。又興築陂池。以広漑灌。肥後味生池。及筑後往々陂池皆是也。由是。人蒙其利。于今温給。皆首名之力焉。故言吏事者。咸以為称首。及卒百姓祠之。

六国史も検索してみた.

4-9行目にメインの部分が記載されている.上部および左側に小さく書かれているのは脚注である.他の記録との相違点,修正点などである.

○酉辰→乙亥,筑後守正五位下道君首名卒,首名少治律令,暁習吏職,和銅末,出為筑後守,兼治肥後国,勧人生業,為制修教耕営,頃畝樹菓菜,下及鶏肫。皆有章程,典→曲盡事宜,既而時案行,如當,如有不遵教者,随加勘當,始者老少竊怨罵之,及収其實,莫不悦服,一両年間,国中化之,又興築陂池,以広漑灌,肥後味生池,及筑後往々陂池皆是也,由是人蒙其利,于今温給,皆首名之力焉,故言吏事者,咸以為称首,及卒百姓祠之

その他の資料

大日本史をクリックすると,「道首名」が記載されている位置へ飛ぶ.

4行目に「道首名至自新羅」の記載がある.8月10日辛丑?

道君首名について,各種史料を基に纏めた資料

続日本紀を含む資料 その1

Googleブックス 大日本史

書籍名 Dai-Nihon-shi, 第 51~60 巻

発行 1810

書籍の提供元 バイエルン州立図書館

デジタル化された日 2013年3月18日

大宝律令,尼僧令等の選集に関与し,新羅の大使を務めたことが記載されている.


為制修教耕営.頃畝樹菓菜→教督耕種至植菜果

既而時案行→時躬案行

書き下し文

徳川光圀の大日本史の現代語訳(書き下し文)も提供されている.

訳文大日本史: 3巻 - Google Books (全788頁)

Title, 訳文大日本史: 3巻. Contributors, 光圀·徳川, 愛山·山路. Publisher, 後楽書院, 1913. Original from, Keio University. Digitized, Jul 9, 2009. Length, 710 pages. 内部検索可能

続日本紀の記述に他の史料(三代実録懐風藻)に記述されている道首名の情報を加えている.


その他の記述

新羅大使に関する記述

元明天皇の世,「8月10日辛丑,道君首名,新羅より至る」と記載されている.

本資料のダウンロードファイル(49.2MB)を,プレビューで開き,キーワード検索しても検索可能である.範囲を選択して,コーピーペーストしてみたが,不完全な部分もあるが実行可能であった.

日本農業小史(全199頁)

この書籍をダウンロードして,macのpreviewで表示させ,検索したところ該当するページの一覧が左側に表示され,選択,表示させることができた.

筑紫国史にもそれなりの記述がある.

Googleブックスでは,著作権の保護期間が満了した書籍は検索可能である.Googleは図書館をまるごと電子化するプロジェクトGoogle Printを立ち上げたが, 出版業界等との係争が生じ,Google Book Searchへの名称変更を経てGoogleブックスとなった.現在は検索項目に関連した書籍の存在やその在り処を知るためのツールのひとつと思っていたが,当初のプロジェクトは実行されているようである.日本では慶応義塾図書館はその考えに沿って協力している.明治初期までに日本で発行された和装本および明治・大正期・昭和前期の日本語図書,12万冊を貸し出し,Googleがそれをスキャンしてデジタル化し、データベースに付け加えている.

Googleブックスは独自のスキャン技術を駆使してテキスト検索を可能にしているのは特筆に値する.

参考資料

水戸藩主徳川光圀が着手した歴史書。本紀 73巻,列伝 170巻,その他合せて 397巻。明暦3 (1657) 年に編纂を開始,1906年完成。

自宅でここまでできる→日本史史料の探し方/集め方(増補 ...

(2021.12.5)