Speaker: 中野裕義氏(慶應大学)

Date: Oct. 11th 17:00-

Style: zoom

Title:「自発的連続対称性の破れを示す二次元非平衡定常系の具体例」的連続対称性の破れを示す二次元非平衡定常系の具体例」

Abstract:

マーミン・ワグナーの定理は「熱平衡状態にある二次元短距離相互作用系では、有限温度で連続対称性が自発的に破れることが禁止されており、長距離秩序を持つ相が存在しない」ということを主張する良く知られた定理である。この定理は連続スピン系や固体結晶のような幅広い平衡系に対して適用できることが知られている。一方で、Vicsekモデルのようなアクティブマターを記述するモデルがマーミン・ワグナーの定理の適用範囲外にあることは90年代から知られており、最近、詳細釣り合い条件の破れ、すなわち系が熱平衡状態にないことがマーミン・ワグナーの定理を破る重要な要素であることが指摘された[1]。


このような状況の中で、二次元非平衡定常系がマーミン・ワグナーの定理のような強力な普遍性を持つか否かは興味深い問題である。この問題と関連して、発表者は最近、一様せん断流下でのO(2)モデルがマーミン・ワグナーの定理の範疇になく、自発的に長距離秩序が発生することを理論的・数値的に示した[2]。

本講演では、この解析結果を中心に、マーミン・ワグナーの定理が成り立たない非平衡定常系としてどのようなものが知られているかを具体的なモデルを挙げながらレビューする。


[1] H. Tasaki, Phys. Rev. Lett. 125, 220601 (2020)

[2] H. Nakano, Y. Minami, and S.-i. Sasa, Phys. Rev. Lett. 126, 160604 (2021)