Speaker: Tomohiro Tanogami (Kyoto Univ.)

Date: Nov. 9th, 17:00-

Style: Webinar with ZOOM

Title:Onsagerの理想乱流理論とその量子乱流への応用

Abstract: 十分発達した乱流の核心はOnsagerの理想乱流理論によって捉えられる[1]。この理論によると十分発達した乱流はEuler方程式の散逸的弱解として記述され、運動エネルギーが大スケールから小スケールへ連続的かつ保存的に輸送されるRichardsonカスケードの存在が示される。一方、量子流体が示す乱流である量子乱流においても、平均渦間距離よりも十分大きいスケールでは古典乱流と同様にRichardsonカスケードが生じることが数値的・実験的に明らかにされている。平均渦間距離よりも小スケールではKelvin波カスケードという量子渦上に励起されたKelvin波によるエネルギー輸送が生じると考えられているが、その性質はまだ十分解明されていない。本講演ではまずOnsager理論を重点的に解説し、次にOnsager理論を援用して量子乱流を理論的に解析する試み[2]について簡単に紹介する:

はじめに十分発達した乱流に特有の現象である異常散逸およびRichardsonカスケードに関して解説したのち、Onsager理論がこれらの現象を記述し、Kolmogorovの4/5則と同等の結果を与えることを示す。次にOnsager理論を量子乱流へ応用することで、(i)量子乱流における「Kolmogorovの4/5則」および(ii)Richardsonカスケードと新奇なカスケード—量子応力カスケード—からなるダブルカスケードの存在を示すことができることを簡単に解説する。最後にKelvin波カスケードと量子応力カスケードとの関係を簡潔に議論する。

[1] G. L. Eyink, arXiv:1803.02223.

[2] T. Tanogami, arXiv:2009.11057.