あいちトリエンナーレへの文化庁補助金不交付に関する声明

2019年10月18日 京都市立芸術大学教職員有志

あいちトリエンナーレへの文化庁補助金不交付に関する声明

文部科学大臣 萩生田光一殿

文化庁長官 宮田亮平殿


私たち京都市立芸術大学教職員有志は,2019年9月26日に発表された,文化庁による「あいちトリエンナーレ」への文化資源活用事業費補助金を全額不交付にするという決定に反対し,その撤回を要望します。


その理由は次の通りです。


第一に,テロの予告とも取れる脅迫や暴力的な抗議の殺到を受けて,8月3日以後一部が中止となったあいちトリエンナーレの展示は、関係者の努力によって10月8日から全面的に再開され、10月14日には無事会期を終えています。今回の不交付決定は,愛知県が事前に認識していたとされる「展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かす重大な事実」を申告せず,それによって事業の実現可能性と事業の継続性について審査できないことを理由としていましたが,多くの展示が期間中無事に行われていたこと,また一部中止された展示も全面的に再開したことを考えれば,これらの理由をもって補助金全額を不交付とするのは,適正だとは考えられません。


第二に,今回の補助金不交付決定に際しては,外部審査員の意見聴取を行わなかったことが明らかになっており,また不交付を決定した審査の議事録についても,文化庁は作成していないと発表しています。これらの事実は今回の決定の公正性を疑わせ,不交付決定のプロセスが適正でなかったことを示すものです。


第三に,あいちトリエンナーレをめぐる今回の問題には,1)脅迫や暴力的・差別的な言動をともなう抗議によって文化芸術活動が中止に追い込まれたこと,2)こうした脅迫や暴力を黙認したり,表現の自由を脅かす言動が一部の公職者に見られたこと,3)こうした公職者の言動がさらに差別や暴力を容認する社会的状況がつくりかねないこと,4)このような危機を是正するための土壌が社会から失われつつあることなど,さまざまな問題が重なりあっています。文化庁の決定は,こうした問題を実質的に追認する効果を持つものであり,上記のような行政上の瑕疵にとどまらない問題を含んでいます。


最後に,私たちは今回の不交付決定が,創造活動にたずさわる学生や若いアーティストたちを萎縮させかねないのではないかと,強く懸念しています。私たちは芸術大学で働く者として,また文化芸術を享受する市民として,この社会が多様な価値に開かれ,それらを追求することのできる場所であることを望みます。


以上の理由により私たちは、文化庁に対して,あいちトリエンナーレへの補助金不交付決定の撤回を要望します。


2019年10月18日 京都市立芸術大学教職員有志

賛同者(最終更新 2019年11月13日17時)

青木加苗、青木陵子、石原友明、磯部洋明、伊藤存、伊藤学美、井上明彦、井上舞、今西啓介、今村遼佑、岩永大気、上田順平、上村絵梨子、小笠美華、小川久美子、魚住洋一、遠藤裕美子、呉夏枝、大谷史乃、大西伸明、加治屋健司、加須屋明子、金田勝一、河野愛、岸本光大、桐月沙樹、喜多順子、栗本夏樹、黒宮菜菜、児嶋サコ、小林信之、小山田徹、佐藤知久、島村敏明、新道牧人、関口正浩、高橋成子、滝口洋子、田島達也、辰巳明久、田中栄子、田中千世子、谷川嘉浩、谷澤紗和子、寺島みどり、唐仁原希、長谷川直人、中井悠、中岡真珠美、中野裕介、中原浩大、中村 翠、中山玲佳、永守伸年、西尾咲子、野原健司、橋爪皓佐、林伸光、原口みなみ、平光文乃、ひろいのぶこ、深谷訓子、藤井良子、藤田瑞穂、藤原隆男、北城貴子、増田佳江、三橋遵、南寛、向山佳絵子、むらたちひろ、山本理恵子、吉岡俊直、吉田幸代、龍門藍、渡辺信一郎、渡辺信明、渡里久美子、匿名3名

賛同される方へ

・本声明については,雇用の形態や期間(常勤・非常勤など)を問わず,京都市立芸術大学に現在および過去に在職された方たちすべてに向けて,賛同を呼びかけています。

・声明に賛同する京都市立芸術大学教職員の方は,下記のメールアドレスまでご連絡ください。その際,お名前(ふりがなも)と,京都市立芸術大学での所属先(過去に在職された方は当時のもの)をお知らせください。

・賛同するが,匿名でありたいという場合は,その旨お知らせください。匿名の賛同者として,人数のみを記載します。

・本声明は,文部科学省および文化庁に届ける予定です。


問い合わせ

・本件についての問い合わせは,下記までご連絡ください。

・取材を希望される報道機関の方も,下記までご連絡ください。


連絡先メールアドレス:kcuastatement-aich2019@googlegroups.com